16話 対処してみた(訴える1)
文字通り、次は法的に訴えてみました。
でも、実際に訴えたら、決着が着くまでにはそれなりの時間がかかりそうですよね。
なので、今回やるのは『損害賠償を請求するからね!』ってことを、いじめっことその両親に伝えるところまで、です。
今回、いじめ関係に強くて実績のある弁護士を探しました。
証拠映像も観てもらった上で、どのような手順でどのように訴えて、どのくらい損害賠償を請求できるか。色々と教えてもらいました。
じゃあ、その内容を誰が伝えるのか?
勿論、いじめっこ宅にはケッチャン自ら行ってきましたよ!
……えっ? そこは弁護士に行ってもらえばいいでしょ、って?
いい年こいたおっさんがふらっと訪れても、またいじめられて終わりだろうって?
はい。いや、いい年こいたおっさんではありませんが。
今回は、相手方に請求額を伝えて、ショックを与えたら終わる予定です。
その後、実際に法廷に立ったりなんて出来ませんし。
あと、人との接触を極力減らしたい、ってのも理由の一つですね。
お願いすれば、弁護士と相手方でいろいろやってもらえるとは思うんですけど……ほら、弁護士と何度も会わなきゃいけなくなりそうですよね?
ケッチャン、引きこもりのニートボールなので……なんて。今日も朝から晩まで、外で空き缶拾いに勤しんでましたよ!
――かと言って、いじめっこにショックを与えてやりたい! という気持ちは、はち切れんばかり。
すごい勢いではち切れて、すごい切れ痔になったら嫌だな……え? どこをはち切らしてるんだって?
ですので、ここは一肌――いや、猫の被り物を脱いで、ケッチャンが直接やってやりましたよ!
はい。髪は引きこもり明け長めヘアーを清潔なスタイルにセットして。
眼鏡は黒ぶちから艶かしい紅蓮のフレームにして、知的に魅せて。
マスクは白い普通の不織布のやつを、高価なグレーの布製マスクにして。
スーツは高級感溢れる……高くて、いいやつ(語彙力皆無)。
今回装ったのが、男性か女性か――それは、想像にお任せします。いい年こいたおっさんをイメージしてもらっても構いません。
ただ――ね。目はミタ君のままなので、そこが唯一の不安材料です。アーベーツェーに気付かれないと良いのですが。
とりあえず、市販のグッズで、簡易的にまぶたとかをいじったので。あとは雰囲気で勝負するしかない!
わたしは一流弁護士……って、手のひらに十回書いて飲み込もうとしたけど……『べんごし』ってどういう漢字だっけ? 便? ってとこで、未遂のまま終わっちゃいました。
結局、大事なのは飲み込むことじゃなくて、思い込むことなのですから――
ちなみに、今回も眼鏡に小型カメラをつけようかと思ったんですけど――ほぼ全てにぼかしが必要ですよね。
アーベーツェーは既出なのでともかく、両親にはどのキャラクターを貼ってあげようか……思い浮かばなかったので、前回同様、音声だけにしました。
それに今回は、録音機を机に置いて、
『この会話は念のため録音させていただきます』
ってした方が、よりそれっぽいですし。
加えて、ちゃんと許可をとって録音するので余罪は増えません!
今回、いじめっこ三人のご両親に事前連絡した上で、三人の自宅を訪問しています。
訪問日時は十月十日。いじめられた次の週の土曜日の、午前中です。
自宅訪問の順番は、アー、ベー、ツェーの順にしました。
……キャラ名の方がわかりやすいですかね?
ガキ大将、ブタとゴリラの融合体、紅一点ペンギンの順です。
全ての会話を録音してきましたが、今回聴いてもらうのは、最後のペンギン宅だけにします。
伝えた内容は一緒ですし、後半にいくほどケッチャンの喋りもうまくなっていますし。
まぁ、ペンギン親子がなかなかのヤンチャ者だった、ってのが一番の理由ですけどね。
あと、今回も個人情報には別の音をかぶせてますからね。
それでは、聴いてください。
『訴えてみた』デス。ドーゾ!
――って、ごめんなさい。
もうっ、曲紹介っぽく格好良く決めたのにっ!
今回の会話は、『録音させてもらいますね』の直後に録音を開始しています。
もしも途中でその台詞が聞こえたら、ホラ吹きが本物の余罪になっちゃいますからね。
つまり、いきなり本題に入りますので。
では今度こそ、聴いてください。はい、ドーゾ!」