12話 振り返ってみた(二)
みなさん、『どうやって?』と思うことでしょう。
そして、こうも思ったのではありませんか?
ミタ家にいろいろと防犯設備を付けているんだから『防犯カメラ』くらい設置しているのでは――と。
もちろん設置しています。何なら、合計で十台も設置してました!
場所はここでは言いません。でも、ちゃんと敷地内にだけ設置している、ということだけは言っておきます。
だって、これ以上余罪を増やしたくないので。
ネット上では、ケッチャンの余罪一覧が出回りましたね。
『なりすまし』『学校への不法侵入』『盗撮』『ホラ吹き』
――あれっ、意外と少ない?
でも、ホラは吹いてないつもりなんですけど……あっ、もしかして、動画の後に歓喜のホラ貝を吹いたの観られてました?
まぁ、罪は今後ちゃんと償うとして。話を戻しますよ。
火炎瓶が投げられたのは、ニュースの映像で『十月二十一日の朝に発見された』と報道されていたことから『十月二十日の夜から二十一日の朝の間』と推測できますね。
なので、二十日の午後十時からの撮影映像を観てみることにします。
ケッチャンの顔は右下に小さくして、大きい映像枠を一つ表示しますよ。
はい、映像が映りましたね。
右下に表示した日時のとおり、二十日の二十二時です。
とりあえず三十倍速くらいで観てみますか。火炎瓶の灯りで気付きそうですよね。
キュイィーン――っと倍速していきますよ。二十三時十分、二十分、三十分――って、結構速いから、気付くか不安になってきました。
はい、二十四時を過ぎました。個人的には、新聞配達のちょっと前くらいかなー、なんて予想をしてますが。
二十一日の三時になるところです。
予想だと、ここらへんで……あっ、何か光ったの見えました?
え? 見えない? おかしいな……って、茶番はやめましょうか。
もちろん、ケッチャンはこの映像を何回も観てますし、編集もしています。だから、何時にやられたのか、当然ながらわかってますので。
火炎瓶が投げられたのは、二十一日の午前三時四分のことでした。
ということで、三時三分に戻して、等倍にしますね。
――こちらの映像は、ミタ家の屋根上から家の正面方向を映したものです。
どうやら、火炎瓶は正面から居間の窓のほうに投げられたようなので、このアングルが良いでしょう。
さて、そろそろ犯行の時間ですね。みなさん、心の準備はよろしいでしょうか。
お、ブロック塀の外側、何か光りましたよ。そして、その光が一直線にミタ家の外壁――居間の窓にぶつかりましたね。
窓には超頑丈な雨戸がついています。火炎瓶はぶつかって落ちて、地面に転がったようです。
その後、燃え広がらずに鎮火しています。
火の気を検知して、シャワーが消火してくれたのでしょう。
では、光の出た瞬間を見てみますね。
こちらが、光が見えた瞬間の映像です。静止画から、コマ送りで観てみます。
うーん……ブロック塀が邪魔していて、よく見えませんね。塀から光が飛んでいるところしか見えません。
とはいえ、敷地内からだとこれしか……あっ、そういえば。
ブロック塀の道路側にもカメラを仕掛けてました。それを観てみましょうね。
光が発生した瞬間を正面から捉えていそうですね。期待大です!
家の前には防犯灯――街灯ですかね。おかげで少し明るいです。
――あっ、これは、自転車ですかね?
まだ暗いのに無灯火です。道路交通法違反、五万円以下の罰金です!
塀の前に止まって、光が見えましたね。
犯人、振りかぶって――投げました!!
犯行の瞬間を捕らえましたよ! ちょっと戻して、ズームしてみましょうか。
自転車は割とはっきり映ってますね。人の顔も……うん、はっきり映ってます。
ですが、当然ですがこの動画ではぼかしをかけています。
一応、そうしないといけない決まりなので、悪しからず。
さて。みなさんには物足りないかもしれませんが、この映像は警察に届けて、あとは警察にお任せしようと思います。
ケッチャンから言えるのは、この映像を観ればとりあえず犯人の目星はつきますぜ、ということです。
物足りないと言いつつも、今回の動画を観てもらえれば、みなさんにも察しがついちゃうかもですけど。
――と、いうことで。振り返りはこれで終了です。
全く、不届き者がいたものですね。
この証拠映像でちゃんと罰せられることを願います。
それでは――生配信のメインテーマに移りますよ!