異世界転生した競パン戦士だけど、俺強すぎてワロタ〜誰にも抜けない伝説の剣も簡単に抜ける件
ぬああっ。
競パンレッドはやられてしまった。
ダークセイバーの非道な罠によってあっけなく無力化されてしまったのである。
まず、薬品で自由を奪われた。
改造人間が体中を容赦なく殴打。
クリスタルが点滅したところを捕獲。
十字架にはりつけにされ、その姿は衆目にされた。
ボコボコにされて、そのまままま意識を失ってしまったのである。
うぅぅぅ…
ひどい虚脱感から目覚める競パンレッド。
吸い込む空気が気絶した時とは異なるのを感じていた。
ここはどこだ?
どれだけ気を失っていたんだ?
気絶した時と状況が違うことから、レッドは敵の施設に誘拐されたのだと思った。
もし、そうだとしたら、さらなる拷問が待っているはずだった。
恐る恐る目を開けると、そこには見慣れる風景が広がっていた。
革製の衣装を身にまとった人々。
その手には松明が握られている。
そのいでたちは、まるで中世の村人といった雰囲気である。
彼らは恐れと好奇の目でレッドを見つめていた。
一部の男たちは剣やこん棒などの原始的な武器を持っている。
「目覚めたぞ!」
レッドが目を開けたのに気づいたリーダーとおぼしき老人が声をあげた。
弓を持った数名がレッドに向かって矢を向けた。
一体これはどういうことだ。
予想もしなかった展開にレッドは動揺するが、ひとまず状況を確認する。
レッドは気絶をした時と変わらず、十字架にはりつけにされていた。
しかし、その仕掛けは十字に組まれた木材に、手首と足首をくくりつけた簡単なものであった。
ダークセイバーの科学力を駆使して作られたはりつけ台に比べれば全くお粗末なものである。
そして、レッドを取り囲む村人たちの武器も実に貧相なものだった。
そんなもので攻撃してもレッドには傷ひとつつけられないであろう。
ゆらめく松明の明かりを見てレッドは気づいた。
この村人たちの文明のレベルは明らかに低いのである。
これは、もしや異世界転生!
レッドの元いた世界では人間の消失事件が連続していた。
普通に生活をしていた人間が、何の前触れもなく、突然消え去るのである。
神隠しにも似た事件だが、一部の被害者がこれまた前触れもなく戻って来ることがある。
彼らは口をそろえて言った。
目覚めると中世のような場所にいたと。
この現象を巷では異世界転生と呼んでいた。
そして、この正体不明の現象がレッドの身にも起こったのである。
こ…、こんなことが起こるなんて!
驚くレッド。
そんなレッドの動揺をよそに、村人のリーダー格の老人が質問する。
彼はこの村の長老である。
「お前は一体何者だ!」
レッドは困惑していた。
しかし、礼儀正しいレッドは質問に答えた。
「私は競パン戦士レッド。
地球の平和を守るスーパーヒーローです」
レッドはヒーロー然とした口調で宣言する。
その凛とした佇まいに、村人の間にどよめきが起こる。
「ヒーローだと…」
「まさか、あの伝説の…」
そのどよめきをさえぎるように長老が叫んだ。
「えーい黙れ!
これまでヒーローだと名乗る偽物がどれほどいたことか!
お前もその一人に違いない!」
「違う!私は本物のヒーローです!
日夜地球の平和のために、ダークセイバーとの戦って…」
「戯言を言うなれば!
本物のヒーローだとしたなら、この矢を受けてみろ!」
リーダー格の村人が、弓矢部隊に命令を下した。
統制の取れた弓矢部隊は、一斉にレッドに向かって矢を放つ。
放たれた矢は、一本残らずレッドに当たった。
だが、鋼のように鍛えられたレッドの肉体はその全てを弾き返したのだった。
「なに!」
またもや村人たちの間に動揺が走った。
一方で、攻撃された当の本人であるレッドは、あまりにも弱い攻撃にきょとんとしている。
長老は動揺しつつも、何とか威厳を保ちつつ、村人たちに命令を下した。
「ええい、皆、落ち着け!
まだ、あやつがヒーローだと決めつけるのは早い!
股間を狙うんだ!
弱点を狙えば、必ず奴は傷つくはずだ」
長老の言葉に、再び矢が放たれた。
しかし、攻撃を受け、臨戦態勢に入っているレッドの股間は既に硬い。
村人たちの矢は、レッドの股間に弾かれ、彼の足元に散らばった。
「鋼のような股間!」
「やっぱりあの人が!」
ざわつく村人たち。
今度は長老も呆気に取られている。
俺、なんかやっちゃったみたいだな…。
そんなことを思いつつ、レッドはひとまず大勢を整えることにした。
木材にくくりつかられた手足をひとまず自由にすることにする。
ぶちぶちとレッドはいとも簡単に、彼を縛り付けていた縄を引きちぎった。
「あの怪力!」
「間違いない!」
「あの人がヒーローだ!
「伝説の競パン戦士だ!」
拘束から逃れ、自由になったレッドに対して、村人たちは次々とひざまずいていく。
意味不明の状況にレッドは困惑するばかりだ。
そして、ついに先ほどまでレッドに敵対的であった長老までレッドの前で膝を折ったのである。
「競パンレッド様…
先ほどまでの無礼をお許しください」
「いえ、無礼も何も全くダメージがないので…
全然大丈夫です」
さらに困惑するレッド。
中世風のいでたちの人から「競パン」という言葉が出ること自体、違和感しかない。
そんな困りごとをものともせず、長老は続けた。
「われわれの村にはこんな伝説があるのです。
村に競パンのまといし勇者が現れた時
そのものだけが、あの剣を抜くことができるだろうと」
「あの剣ですか…」
あの剣ってどの剣だよ...というツッコミはこの人たちの前で無駄だろう。
レッドは大人しく長老の説明を待つことにした。
「この村の外れには、手にしたものが世界を制するという伝説の剣があるのです。
その剣は地面に深々と刺さっていいます。
不思議なことにどんな力自慢が抜こうとしても全く抜けないのです」
「はい…」
何となく話が見えてきたレッド。
「その剣を抜くことができるのは、競パンをまとった戦士だけだというのです。
そうあなたのように!」
「そうですか…」
力説する長老をよそに、脱力するレッド。
おとぎ話のような話についていけないようだ。
しかし、話はどんどん進んでいく。
「今まで村を支配しようとする悪人が、あなたのような格好をして何度も村を襲ってきました。
今回も同じだと思い、あのような失礼なふるまいをしてしまいました。
本当に許してください」
「はい、許します。
許しますとも。
そして、私がその伝説の剣とやらを抜けばいいのですね」
「おっしゃる通りです!
さあ、その剣のある場所へご案内しましょう!
こちらへ」
「わかりました...」
レッドはひとまず、長老についていくことにした。
本来ならば、この異世界から脱出する方法を考えねばならないが、長老の勢いに流されてしまった。
長老に従って、森の中深くを進んでいく。
その後ろを村人たちがぞろぞろとついてくる。
物見遊山のつもりなのだろうか。
「やれやれ、妙なことになったぞ...」
異世界に飛ばされてからというもの、困惑しきりのレッドだったが、この茶番にひとまず付き合うことにした。
しかし、その伝説の剣とやらはレッドに抜けるのだろうか。
物理的に深く刺さった剣ならば、競パン戦士の力で抜くことができるだろう。
しかし、ここは中世。
何らかの魔術的な要素で剣が抜けなくなっているのかもしれない。
剣が抜けない場合は、村人からまた攻撃されるのだろうか。
レッドの気は重かった。
そうこうしているうちに、伝説の剣が刺さっているという場所にたどり着いた。
森が拓けており、その中心に確かに剣が刺さっていた。
その剣の持ち手には宝石で装飾が施されている。
なるほど、伝説の剣といった見た目をしている。
おあつらえ向きに月の光が、その剣を照らしている。
「あの剣を抜けばいいのですね…」
レッドの言葉に長老はうなずいた。
長老はじめ村人たちが深刻そうな顔でレッドを見つめている。
「もし、剣が抜けたら、私を開放してもらえますか?
色々とやることがあるので…」
レッドは一刻も早く元の世界に戻り、ダークセイバーと戦う必要があった。
「もちろん、剣が抜ければあなたは勇者です。
どこに行こうと自由です。
剣が、あなたを正しい道に導いてくれることでしょう」
正しい道か…。
レッドは正義の戦士らしからぬシニカルな気分になっていた。
この中世風の世界感にすっかり辟易していた。
一刻も早く、ここから離脱したかった。
レッドは剣へと歩み寄り、その持ち手をつかんだ。
なるほど、その剣は一般の人々には抜けない程の深さで刺さっている。
しかし、競パン戦士の力を使えば、簡単に抜けるはずだ。
ふんっ!
しかし、予想に反して剣はびくともしなかった。
まるで、抜ける気配がない。
ちょっとこれはヤバい自体かもしれない。
レッドの動揺が村人たちにも伝わったようだ。
村人たちがヒソヒソと何かを話し始める。
レッドに対する不信感が広がっているようだ。
弓矢を持った村人が、弓を再びレッドに向け始めた。
「ヤバい。
この剣が抜けなかったら、また一悶着起こるぞ」
仕方なくレッドは最終手段を使うことにした。
「競パンパワー!」
レッドは全力を出すことにした。
パワーを股間に集中させ、一気に引き抜くつもりだ。
競パンの下でその股間がむくむくと膨らみ始めた。
これならいける!
剣はわずかに動き始め、土に埋まっている部分が外気に触れ始めた。
レッドは腰を全身を使って、剣を引く。
その大腿部はパンパに張っており、足は地面に食い込んだ。
村人たちから、歓声が湧き上がる。
彼らがレッドを本物の競パン戦士と確信した瞬間であった。
じりじりと地面から引くぬかれる剣。
地面に埋まっていた部分が月の光を反射し輝いている。
「頑張れ!競パン戦士さま!」
村人たちから自然と声援が起こる。
それに応えようと、レッドはさらに力を込めた。
股間が限界まで膨れ上がる。
剣はもうすぐ地面から引き抜かれようとしていた。
まるで、鞘から抜かれるような自然さで、剣は地面から顔を出す。
「皮肉なものよのう」
声援の中から、ひとつ異質な声が漏れた。
邪悪さを含んだその声。
それは長老の口から出たものだった。
「競パン戦士は限界まで勃起した時に、最高の力を発揮する。
だが、その瞬間、最も股間の守りが弱まっているとはな…」
それは競パン戦士が絶対に他人に知られてはいけない秘密だった。
それが、中世の人間である長老の口から漏れ出した。
致死的なが迫っていることは明らかだった。
「やれ!」
長老は弓矢部隊に指示を出した。
弓矢部隊はその弦を限界まで引く。
狙いはもちろん、盛り上がったレッドの局部である。
シュパン!
レッドが避ける間もなく、矢はレッドの股間に突き刺さった。
ああっ!
レッドの顔が苦痛に歪む。
そして、また一本、一本とレッドの股間に矢が刺さる。
レッドの立体的に盛り上がった股間に、四方八方から矢が刺さる。
瞬く間にレッドの股間は針山のようになってしまった。
レッドはその場に膝をついた。
そして、村人たちを睨みつける。
「貴様ら、罠にはめたな!」
「ふふっ、そうだよ競パンレッド。
この村は既に悪の組織であるダークセイバーの手に落ちている。
私たちはお前を捕獲するために、ここで待ち構えていたのだよ。
お前を倒すためには、全力を出させて股間を最大まで勃起させる必要があった。
そのために、この剣の茶番を用意したというわけさ」
「くっそ、この剣は偽物だったのか」
レッドは悔しげにつぶやいた。
彼は村人たちの計略にまんまとはまってしまったわけだ。
「おっと勘違いしてもらっては困るな。
その剣自体は本物だよ。
お前に全力を出させるものは、この村にはこの剣しかなかったからな。
しかし、まさか本当にここまで抜いてしまうとは思わなかったよ」
しかし、長老は嘲笑いつつ続けた。
「しかし、『剣を抜いた者が世界を制する』というのは大嘘だったようだな。
そんなズタズタの股間では、お前は何もすることができまい」
くっ…
悔しいが長老の言うことは事実だった。
ここまで股間が傷ついてしまったレッドは手も足も出ない。
今にも気を失ってしまいそうだ。
私は、ダークセイバーを…倒さねば…
レッドが意識が飛ぶ寸前、無意識に剣の柄に手を置いた。
崩れ落ちようとする体を支えようとしたのだろう。
だが、剣はその瞬間に地面から抜けた。
レッドの体は虚しく、剣とともに地面へと倒れた。
その手は世界を制する剣が確かに握られてはいた。
しかし、それが何だと言うのだろう。
レッドの股間はズタズタにされ、完全に力を失ってしまったのだから。
以上