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神様システム

作者: poiuy

 この世界では神様の存在が信じられている。

 世界を見守り、寵愛する。人々を未曾有の危機から救うこともある。天罰を与えることもあるだろう。

 それが神様の話。幼少期から絵本などで言い聞かされる神様像。


 例えば、地震や魔物の大暴走などの天災についての信託を与える。

 例えば、飢饉が起きないように、恵みの雨を降らせる。

 例えば、戦争などが起これば、人々に加護を与える。

 例えば、人々に仇なす魔王が現れれば、対となる勇者が現れ、神様の剣となる。


 そのような様々な説話が今日まで伝えられてきた。今となっては、勇者の降臨も数百年、数千年前の話になるのだろうか。


 このように信じられ、中には崇拝している人もいる神様であるが、平和に過ごすことが出来れば神様なんでどうでもいいと思う人も少なくない。

 結局、一生の間に一回でも関わることがある人のほうが少ないのだ。遠くの親戚よりも近くの他人とはよく言うものだが、神様は遠いし親戚でもない。

 私もそう思っていた時期があった。勇者になるその日までは。


 そして今、私は神様になっている。



♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢



 神様の仕事とは面倒くさいものだ。世界の限りあるエネルギーが消費し尽くされないように、文明を発達しすぎないように世界の外(・・・・)から見張り、場合によっては、地震や魔物の大暴走、戦争が起きるように誘導している。そして頃合いを見計らって、信託や加護を与えている。

 要するにただのマッチポンプ。これを神様になったときからすべて一人で行ってきた。


 ここでいうエネルギーは、世界の構築に使われる容量みたいなもの。人が増えたり、文明が発達したりすれば、そこに蓄えられ、残存エネルギーは少なくなる。人が死んだり、文明が破壊されれば、エネルギーはその場に解放される。

 私がいる世界の外にもエネルギーが存在し、これを世界に送ることもできる。世界と、世界の外にあるエネルギーの合計量は常に一定となっていた。勇者は例外であり、勇者となったものは、神様がそのきっかけを与えて以降、他のエネルギーをほとんど消費することなくエネルギーを蓄えていく。


 私には世界のすべてが見えている。

 人や魔物の動きはもちろん、各街、文明や人々に蓄えられているエネルギー量、次の勇者候補も。未来がどうなるかは分からないが、過去の世界も見ることが出来た。つまりは過去に神様が行ってきた記録も見れていた。

 最初期はそれを見よう見まねで仕事していたものだったが、すでに要領はつかんでおり、もうほとんど記録を見に行っていない。先ほどのエネルギーがどうたらといった話も、この記録からわかったこと。

 記録を見る限りでは、勇者の加護を与えたり、ここから世界に移動したり、魔王を顕現させたりも出来るらしい。当然のようにマッチポンプではあったが、これらは神様は最後の仕事のようだった。


 ここで一つ疑問が生じる。

 勇者の任を命じたのは神様だった。そして私は元勇者であり、現神様となっている。そして、現神様の私は、神様の仕事を一人で行ってきた。

 では、前の神様はどこに行ったのだろうか。

 私が最後に見たのは神様になる前、勇者時代に魔王と戦い、そして世界の外に送られる直前、神様になることを告げられたとき。それ以来、その姿を見ることはなくなったのだ。


 いや、これについては私の中でもう答えは出ている。

 ここまでの考えも、自分を納得させるためだけの、推論に過ぎない。

 世界に送ることが出来るエネルギーはまだまだあるが、そろそろ取り掛かるべきだろう。その時になって、何もできませんでした、ではここまでのこの世界を維持してきた神様にも示しがつかない。


 始まりも終わりもない、創造と破壊を行った神様たちに。


読了ありがとうございました。

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