13. クソデカため息万年生理逆パワハラ女。
「ぐぎゃっ!」
ゴブリンが、石斧を俺めがけて振り下ろす。俺はそれを軽く避け、石斧が地面に突き刺さったところで、ナイフで軽く持ち手を切る。
スパッと軽快な音がして、石斧の持ち手が真っ二つになった。
俺のナイフの持ち手はどうだ......よし、全然大丈夫。どうやらこの短期間で、お化け物ステータスの扱いに適応してきたみたいだ。
というか、思えば、包丁をぶっ壊して以来、馬鹿げたステータスを振るってしまう、なんてミスはしていない。
不器用な俺がこんなにも早く慣れるなんて......あ、そうか。今の俺、めちゃくちゃ器用なんだった。なるほど、それでか。
「............」
武器がなくなったゴブリンは、呆然と立ち尽くしている。おかしいな、こういう時、ゴブリンはすぐに逃げ出すもんだが。
「ティ、ティント様、そ、その竿や......ゴブリンに、トドメを」
「......はい」
エステル様がそういうのなら、仕方がない。しかし、俺が直接魔物に手を下すの、いつぶりだろう......。
俺は、エステル様にショッキングな光景を見せてはいけないと言い訳し、あえて隙を作って見せる。
しかしそれでも、ゴブリンは逃げようとしない。
立ち尽くして、チラチラとエステル様の方を伺っている。その瞳には、まるで少年が憧れの女性を見るかのような輝きがある気がする。
......まさか、このゴブリン、エステル様が女神だってことに、気づいているんじゃないか......?
それなら、このゴブリンらしくない態度にも納得がいく。ゴブリンといえど、女神であるエステル様の高貴なオーラに、敬意を持っているんじゃなかろうか。
しかし、だからと言ってなぜ逃げない......まさか。
このゴブリン、自分がエステル様を怖がらせていることを理解しているのでは? そしてそんな不敬な自分を恥じ、それならば俺に狩られようとしているのではないか?
......イヤイヤ、ないな。馬鹿げた妄想だ。
俺は一歩前に出て、ナイフを構えた。
すると、ゴブリンは両手を組んで、すっと俺に首を差し出した。
その姿はまるで、女神様に祈りを捧げ死を待つ聖母のようだった。
......さすれば、俺は死神か。
「......エ、エステル様、その」
『........ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
「ん?」
その時、北西のあたりから、恐ろしげな咆哮が聞こえた、ような気がした。
......いや、この森は、Fランクの魔物の生息地。ひとまず雄叫びをあげるような魔物がいないのだ。
ゴブリンを殺したくないって気持ちが、俺に幻聴でも聞かせたのかな。
「......まさか」
すると、顔を真っ青にしたエステル様が、例の板の魔導具を取り出した。そして、先ほどと同じように話しかける。
「へいしり、【クソデカため息万年生理逆パワハラ女】に電話をかけて」
『承知しました』
【クソデカため息万生理逆パワハラ女】......? 【神敵】より酷い二つ名、初めて聞いたな。一体何者だ?
すると、ピンポンパンポンという奇妙な音が、ゴブリンの森に鳴り響く。そして、ガチャっと南京錠が開くような音がした。
「あっ、マリアさんお疲れ様。ちょっと今いいですか?」
『は? 別にいいですけど、なんで電話? ラインでよくないですか?』
すると、その板から、へいしりとは別の人の声が聞こえてきた。こちらは、へいしりと違い、やけに人間味のある声だ。
「あ、ごめんね。ちょっと今すぐ聞きたいことがあって」
『......チッ。はい、なんですか?』
「......あのね、マリアさんに任せてた下界の結界の方を任せてたと思うんだけど」
『は? 特に任されてませんけど?』
「えっ!?」
エステル様が飛び上がって驚く。
「え、えっと、言ったはず、なんだけどなぁ」
『全く聞いてません。エステルさんいっつもボケーってしてるから、忘れたんでしょう? 自分のミス、部下のせいにしないでもらっていいですか? パワハラで訴えますよ』
「あっ、ごめんねごめんね。全然そんなつもりじゃなくって......そっか、私のミスか。ごめんなさい」
『......はああああああああああああああああああああ』
確かに、クソデカと形容するにふさわしいため息が、光る板から聞こえた。
「そ、それで、今、ちょっと下界の結界が緩んでるみたいなんだ。だから、マリアさんにちょっと結界の方貼ってほしいと思ってるんだけど」
『......ま、考えときます。もういいですか?』
「あっ、うん。ごめんね」
『......チッ』
そして、光る板がプツンと音をたてた。エステル様は、ひかる板を持つ腕をだらんと垂らす。
「......クソ」
そして、片足を持ち上げると、思いっきり地面に生える雑草を踏みつけた。
「クソッ、クソッ、クソがっ!」
なんども、なんども雑草を一心不乱に踏みつけるエステル様。
なかなかに声をかけにくい状況だが、これ以上放っておくと危ない感じがするので、恐る恐る声をかける。
「え、えっと、エステル様......?」
「あっ、すみません!」
エステル様はハッと我に返り、俺に深々と頭を下げた。
「どうやら、私の部下のミスで、魔物避けの結界が緩んでしまったみたいなんです!」
「......そ、そうなん、ですね」
聞いてはいたが、それでも衝撃的な話だ。
つまり、先ほどの咆哮は幻聴でもなんでもなく、強い魔物のものだったってことなのか......?
「......そして、先ほどの咆哮を聞くに、どうやら今この森に、火龍が来ているようなんです」
「かっ、火龍!?!?!?」
そ、それは、にわかに信じがたい。
火龍が住むのは、轟々とマグマを垂れ流す活火山付近。
そこが心地よい火龍にとって、エステル様の結界がなかったとして、ゴブリンの森は決していい環境じゃない。こんなところに、いるはずがないんだ。
「その、な、何かの間違いではないでしょうか?」
「......いえ、間違いありません」
エステル様は、ゆっくりと首を振った。
「その、引かれちゃうかもしれませんが、実は私、魔物マニアだから今の会社に入ったくらいで......鳴き声だけで、魔物の種類を判別できるんです」
「えっすごい」
普通にめちゃくちゃすごいので、思わずタメ口を聞いてしまう。
すると、エステル様が、意外そうに長いまつ毛をしばしばさせた。
「ひっ、引かないんですか?」
「も、もちろんです。そんなの、S級冒険者でもできる人いないと思います。それだけ何かを好きになれるって、凄いことだと思います。俺も見習います!」
「あ、ありがとうございます......でも、見習っちゃダメ、ですよ」
エステル様は一瞬とても嬉しそうにしたが、すぐに暗い表情で肩を落とす。
「......うちの会社がブラックなのは、有名だったので知っていましたが、それでも、自由に魔物が創れるなら耐えられる、そう思ってました......それが、いまや夢も希望もなく、ロボットのように働く毎日です」
エステル様は両手を広げ、自嘲気味に笑う。
「今、私がティント様のような若者に伝えたいのは、”好きを仕事にするな、楽を仕事にしろ。結局楽が一番楽しい”......と言うことです。夢なんてものは、お家のベッドでぐっすり寝てる時に見ればいいんです」
「はっ、はい、胸に刻みます」
正直、胸に刻んだら刻んだで、ちょっと悲しい言葉な気がするけど......それどころじゃない。
結界が弱まってる状態で、本当に火龍がここにいるのなら、めちゃくちゃヤバイ。
ここからリギアまで、徒歩でも一時間かからない。火龍が人の匂いに誘われリギアに向かえば、一般市民に甚大な被害が及ぶ可能性がある。
それに、たとえリギアに行かなくたって、ここは初心者冒険者の狩場だ。初心者冒険者がいくら群がっても、火龍には敵わない。
丸焦げにされるか、パクリと食べられるか......犠牲者は両手じゃ済まないはずだ。
「その、ティント様、大変申し訳ないのですが、お願いがあります」
するとエステル様が、俺に深々と一礼をした。
「どうか火龍を、討伐してはいただけないでしょうか」
「......えっ、しかし、火龍がいるような危険地帯に、エステル様と一緒にいくわけには」
「あっ、それは大丈夫です。私は、他の部下にも電話をしなくてはいけないので、ここに残ります」
「............」
それはそれで、まずいようにも思う。エステル様の結界が弱まっているというのなら、もう安全圏はどこにもない。
つまり、あの雄叫びの主とは別の、強力な魔物がやってきて、エステル様を襲う可能性だってある。ゴブリンすら怖がるエステル様を、お一人にしていいんだろうか......。
俺が頭を悩ませていると、エステル様の顔がどんどん青くなっていった。
「どうかお願いします! 先ほども言った通り、神である私は、直接人助けをすることを禁止されています! と言うか、こっちの私は魔物相手に何もできません! つまり今、民を救えるのは、ティント様だけなんです!」
「!」
......俺が、民を救う......!
今まで足を引っ張ったことしかない俺には、自分が人を救うなど想像もしなかった。
しかし、レベル四桁になった今、俺は誰だって救うことができる。
......答えは出た。俺はエステル様にいただいた力で、エステル様の代理として人を救うため、これから生きるんだ......うん、それでいいはず、だ。
「どうか、どうか、このままじゃ私、適当に責任を負わされてクビに......あれ、別にいいかも」
「エステル様、どうかお顔をお上げくださいませ」
俺は涙目のエステル様に、微笑みかける。
「承知いたしました。必ずや、火龍を倒してみせます」
「......あっ、ありがとうございます!」
だが、そうか、魔物相手に何もできないのか、エステル様......やはりエステル様を一人にしておくのは不安だ。外からやってきた強敵どころか、ゴブリンの相手すらできないってことだもんな。
その時、肩がポンと叩かれた。振り向くと、先ほどまで俺と激闘を繰り広げたゴブリンがいた。
「ゴブッ」
ゴブリンが、親指を立てて笑う。
つまり、なんだ、ここは俺に任せて、お前は行け......そういうことか?
俺は、ゴブリンの目をじっと見た。綺麗に澄んだ瞳には、一つの邪心も感じられなかった。
俺も、ゴブリンの肩をポンと叩き返す。
「それでは、行ってきます......ゴブリン、エステル様を頼んだぞ」
「えっ!? ティント様!? なんでゴブリン!?」
「ごぎゅ!」
ゴブリンが敬礼をする。どうやら彼とは、これからも仲良くできそうだ。
俺はパチンと頬を打って、頭を切り替える。
あの咆哮、ただの暇つぶしに鳴いたとは思えない。ならば、事態は一刻を争う。
......よし、そうと決まれば走るぞ。
今のステータスに慣れたからこそ、わかる。
今の俺が全力ダッシュしてしまったら、多分この森を半壊させ、なんなら火龍以上に、多くの被害者を出してしまうに違いない。
俺はナイフをしまい、靴紐をしっかりと結んだ。
そして、持久走をするときの小走りを意識して、軽く地面を蹴った。
「うおっ!?!?」
途端、目の前が真っ暗...真っブラウンになる。目の前にあるのが大木だと理解し、くるりと身を翻す......なんとか衝突を回避できた。
どう考えても直撃のタイミングだったが、それでも避けることができた。やはり器用さが上がっているのが大きいんだろう。
これなら、もっとスピードをあげても大丈夫そうだ。
俺はさらに力強く、大地を踏みしめた。ボコっと大地が凹み、俺はビュンと加速した。
びゅうびゅうと風を切る音が耳元で聞きながら、生い茂る木々を躱す。すると、森の終着点が見えてきた。
火龍が木々をなぎ倒し歩いているのなら、その音が聞こえてるはずだ。
ならば、火龍は森の外にいる。景色が開けたら、見つけられるはずだ。
そして、俺は森を抜けた......目の前は、切り立った崖だった。
「......やばい!?」
これは躱せない!!
上に跳んで、この崖を飛び越えることも考えた。しかし、この勢いで崖を飛び上がったら、そのままリギアを飛び越えて何処か彼方に行ってしまいそうだ。
......だったら、直進するしかない。
俺は両手を前に出した。そして、モグラのイメージでブンブン腕を振り回す。
崖をモグラみたいに掘って穴を開けて進めば、最短ルートで行ける上、ブレーキにもなるはずだ。
そのまま、崖にぶつかる。すると視界が土の色に染まり、思いっきり口の中に土が入った。
「ゴホッ!?!?!?」
たとえ耐久力のステが化け物になったって、土が食えたもんではないのは変わらない。
土を吐き出して、吐き出したと同時に口の中に入って来た土に咳き込むという、地獄のような時間が続いた。
一瞬戻って崖を回り込むことも考えたが、今はその時間が勿体無い。
こればっかしはサヴァンたちに感謝だな。彼らのパワハラに三年間耐え続けてきたおかげで、耐えることには慣れている。
レベルアップしてないのに【耐えるもの】のスキルを手に入れたのも、彼らのおかげっちゃおかげだし......もちろん冗談、感謝なんてしていない。
俺はそのまま突き進む。
すると、手に当たる土の感触が変わったような気がした。そしてすぐに、うっすらと差し込んだ光が、一気に広がってあたりを包み込んだ。
俺はとりあえず全身の泥を落とすためトントン飛び、泥だらけの顔を拭って視界を確かにした。
「......ひっ」
鼻先から尾まで、40メートルはありそうな巨躯。
マグマの中から生まれ出てきたと言われても疑いの余地のない、テラテラと光る真っ赤な鱗。
大地に食い込む黒い爪は、そのまま業物になるほどの切れ味らしい。
瞳の悪い小さな瞳孔が、ぎょろりと俺を捉えた。
火龍、だ......。
生の迫力に、身が竦んでしまう。
今から俺は、この火龍を倒さないといけないんだ。しかも、他の冒険者に目撃されないように、こっそりと......。
「......おえっ!?」
周囲に誰かいないかと視線を逸らし、そこにいた二人に、素っ頓狂な声を上げてしまう。
一人は、でっかいツノを頭から生やした幼女。
年をとっても見た目が幼い種族はいるが、あのような大きなツノを持った種族がいただろうか。でも、ただの幼女とも思えない。
そして、もう一人。
S級パーティのエースにして、全男冒険者と一部の女冒険者の憧れの女。【勇者の娘たち】のアイタナが、こちらを見て、綺麗な白銀の目をまん丸にしていたのだ。
な、なんで、アイタナが、ゴブリンの森にいるんだ!?......いや、アイタナも火龍がいることに気がつき、討伐しにきたとなったら、意外でもないか。
問題は、アイタナが全身ボロボロで、幼女に跪いているということだ。見る限り、そこまで友好な関係には見えない。
しかし、アイタナがいるってことは......あそこで倒れているのはライラか! 嘘だろ、死んで......はいない。ここからでも、かすかに胸が上下しているのがわかる。
しかしまずい。アイタナは、俺がレベル0ってことを知ってるはず。
そんな人の前で火龍を倒せば、明らかに何かあるとバレてしまう......いや、崖を掘って出て来た時点で手遅れ......!?
「......ふん、たいそうな登場だな。こいつらを助けにでも来たか」
すると、幼女がいつの間にか火龍の横に立ち、俺に尊大な口調で話しかけて来た。
思わず助けに向かいそうになったが、なんなら幼女に懐いてるげな火龍の態度に、踏みとどまる。
「私は、お前のような英雄気取りが、自分の器を知り絶望する瞬間が何より好きなのだ......さて、どうする? 一手、好きにしていいぞ」
幼女が、手に持つ......勇者の剣っぽい剣を、ブラブラ振って言う。
......この幼女、只者ではないのは間違いない。それにしたって偉そうだけど。親は何してんだと、場違いな怒りを頭を振って追い払う。
アイタナは、まだ動けそうだ。それなら、ライラを連れてここから離脱してもらったほうが、色々やりやすい。
俺はアイタナに視線を戻し、叫んだ。
「アイタナさん! ライラさんを担いで逃げてください!」
「......無理だ! 姉貴が妙な魔法をかけられた! その魔族に魔法を解かせないといけないんだ!」
「......魔族!?」
魔族って、この幼女が!? 魔族って、もっと不気味な化け物って聞いてるぞ!?
しかし、目の前の幼女は、頭のツノ以外、明らかに人間だ。とてもじゃないが、信じられない......。
「......とっ、とにかく、一旦リギアに戻って、仲間を呼んで来てください! もちろん俺は火龍に勝てませんが、時間稼ぎくらいはしてみせます!」
「そういうわけにはいかねぇ!」
「もういい、もういい」
すると幼女が、心底退屈そうに言った。
「まったく、最近の若い連中は、どうも身の程を知っていて困る......火龍。あとは好きにしろ」
「ぐるぎゃあああああ!!!」
火龍が吠えると、鋭い牙が並んだ口をぱかりと開いた。すると、球状の炎が現れ、みるみる巨大になっていく。
春の心地よい陽気から、真夏の砂漠に放り込まれたように熱苦しくなる。全身の毛穴から、一斉に汗が吹き出し、くらりと目眩がした。
「おい、おいおいおい」
俺、本当にこんな化け物を倒せるのかよ......もしかして、俺のステータスでも、耐えきれないんじゃ。
不安がよぎり、身体がぎゅっと硬くなった。瞬間、目の前に火球があった。
「......あ」
熱い。
「......あがっ!?!?!??!?!??」
熱い!!!! 熱い!!!! 熱い!!!! 熱い!!!! 熱い!!!! 熱い!!!! 熱い!!!! 熱い!!!! 何かっ他の何か!!! 考えないと!!!
......そう、だッッ、耐久力が高ければ高いほど、『なぜか体が壊れなくなる』というだけの、話。痛覚自体、が消えるわけじゃないッッッ......むしろ、即死できない、から、このままずっとッッッッ。
......耐えろ!!!! ここで俺が気を失ったら、火龍がここら一帯を火の海にする!! 何があっても、耐えなきゃ......ッッッッ。
熱くない、熱くない、熱くない、熱くない、熱くな......あれ?
俺は、パチクリと目を開けた。
本当に、熱くない......?
真っ赤な世界の中、ぽかんと立ち尽くす。
......え、なんで熱くないんだ?
普通に回る頭で、考える。すると、一つ思い当たることがあった。
世界には、スキルや魔法を使わずに、自分の痛覚を自由自在に操れる人がいるらしい。
そして、今の俺は、まず間違いなく、世界一器用な人間。ならば、俺がその人と同じように、痛覚をなくすことが可能なのではないか?
......真偽は定かじゃないが、とにかく、全く熱くない。
『スキル、【耐えるもの】が発現。全てのステータスが十倍になります』
「......えっ」
その時、脳内に鳴り響く声に呆然とする。
俺のスキル【耐えるもの】の効果は、『一定の攻撃を受けた時、ステータスが上昇する』と言うもの。
効果だけ見ると相当優秀で、スキルが発現した当時の俺は、狂喜乱舞したもんだ。
ただ、このスキルさえも、レベル0のまま上がらなかった。そして、結局今まで、一度も発動すらしなかった。サヴァンに『スキルを発動させてやる』といって攻撃されるくらいの、役に立たないスキル、だった。
......ステータス、十倍って言ったか?
......え、困る。
だって、せっかく今のステータスに慣れたってのに、再び全身凶器に戻っちゃったてことだろ!? 勘弁してくれよ!!
そんなことを考えているうちに、俺を覆う火柱が消えた。
幼女は、目をまん丸にして俺を見た。そして、視線が、ゆっくりと下に落ちる。
そして、みるみるうちに顔を真っ赤にして、「きゃっ」と可愛らしい悲鳴をあげる。
「......き、貴様ぁ! なんてものを見せる!! この、ろっ露出魔が!!」
と思ったら、口汚く罵倒だ。ていうか露出魔? ありえない。水浴びで裸になった時......身体的特徴をトリッソにいじられて以来、俺は裸になるのが苦手なんだ。
なんて思いながら、俺は視線を落とし......自分の秘所が丸出しなのになっているのに気がついた。
俺は、恐る恐る、アイタナの方に視線をやる。すると、バッチリ視線があう。
「うわぁ!!!???」
火龍の火球を食らった時より、よっぽど顔が熱くなった。
......見られた。あの冒険者ギルド一の美少女と名高いアイタナに、俺の裸を......コンプレックスの股間を、見られた......。
......いや、それもそうだけど、火龍の火球を受けて、全く無傷なのを見られたのもヤバイだろ!? どうするどうする!?
「かっ、きっ、貴様っ、そうやってちょっと隠す感じでさらにいやらしく見せるとは何事か!?!?」
「......えっ!? いや、全くそんなつもりはないけど?!?!」
何言ってんだこの幼女!? 親ちゃんとしろよ!!
「火龍! その露出狂を踏み潰せ!!」
「......ええ!? 理不尽すぎないか!?」
「ぐるぎゃああああああああああ!!!!!!!」
火龍が凶悪な雄叫びをあげ、俺に向かって走ってくる。火龍はいるわ、魔族? はいるわ、なんか全裸になっちゃってるし......もう、何が何だかわからない!
俺が混乱しているうちに、火龍の足は俺の頭上にあった。全然避けれるが、今の俺が下手に動いたら何が起こるかわからない。
俺は迷って、ち○こを隠すのを捨て、両腕をクロスして頭上に掲げた。
「......ぐぎゃああああああああ!?!?!?」
結果、火龍の足はポッキリ折れた。ああ、やばいやばいやばい。再びち○こもイかれステータスも見られた。マジでどうしよう、これ。




