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理想の学校生活を送りたい男子高校生の話  作者: 厨二びょ魚
第0章・入学と理想の学校生活
6/13

理想と現実と折衷案。

 テテテン、テテテン、テテテン…

 小気味よい音がスマホから流れる。朝の六時半に設定したアラームがなっているのだ。

 昨日早く寝たおかげか、今日は妙に寝覚めが良い。ガバッと跳ね起きて朝食を食べるべく食卓へ向かう。

 前日の失敗を踏まえて、買いだめしていたサラダと炊いておいたご飯で済ます。

 一人で食事をしていると、つい考えすぎてしまう。今日も、学校の予定について考えていた。

 今日は部活動紹介があって、放課後から仮入部が始まる日だ。

 ここで選ぶ部活によって、今後の高校生活にも影響が出るだろう。運動部に入って青春するのもいいし、文化部に入って青春するのもいい。

 そういえば雄大と相生さんは陸上部だと言っていた。見学してみるのもよいだろう。あと、よく話題に上がる吹奏楽部にも興味がある。何なら、ひっそりと三年生が運営しているアニ研にでも…

 想像が働く。中学の頃は帰宅部で、何も生み出していなかったので部活動というものに憧れているのだ。

 さすがに考えすぎたか、一つのことを考えるだけで食事も終わってしまった。

 一旦思考を中断して、身支度を整えるべく洗面所へ。歯磨きをしたりなんやらで時間を消費する。

 数分後、鏡の前にはごく普通の男子高校生が立っていた。

 あとはスマホゲームやら何やらで適当に時間を潰して、時間になったら家を出る。


 外へ出ると、沢山の高校生が学校へ向かって歩いていた。一緒に学校へ行く友達というのが自分にはまだいない。

「今日の目標、決まったな!」

 そう、帰る方向が同じの友達を作る。決めた。

 友達ができるまでは、一人虚しくこの道を歩くしかない。悲しい事だが。


 しばらく歩いて教室に着くと、やはり話題の中心は部活動についてだった。

 自分の席周辺では雄大が誰かと話している。ちょっと混ぜてもらおう。

「おはよう」

「ああ、陽介か、おはよう」

「お、バレーの人じゃん」

「うるせぇ、陽介だわ」

 やはり初めの何の面白みもないクソ自己紹介が尾を引いているようだ。

「ところで君は?」

 春休みの間に訓練したおかげで、今やネットの人と会話する時のように現実の人に話しかけられるようになった。

「ん?俺は仲田光だよ。ヒカルって呼んでもらってもいいぜ」

「よろしくね、エンゼルフレンチくん」

「絶対言うと思ったわ」

 どうやらよく言われているようだ。

「それよりも、陽介はどこの部活に入るんだ?何なら陸上部でも!」

「雄大は推薦だからほぼ確定みたいなものなのか」

 推薦入学しといて他の部活に入ることはできないだろう。

「いや、雄大。こいつはバレー部だよ」

「うるせぇ料理部にでも入ってドーナツ食ってろエンゼルフレンチ」

「いや、シンプルに俺はバレー部だわ」

「マジか、ごめん」

 これは悪いことをしたな、絶対いじってきただけだと思ってた。

「俺は決まってないからさ、色んな部活見学してから決めようと思って」

「へー、じゃあ初日は陸上部に一緒に行かないか?」

「二日目はバレー部で!」

「ありがとう、二人共。そうさせてもらうよ」

 こんなに誘われるのは人生において初めてで、とても嬉しい。

 丁度話がひと段落ついたところで時計を見ると時間もよいところで、流れでそのまま解散になった。


 チャイムと同時に挨拶が行われ、担任の先生の話が始まる。

「今日は一二限目に部活動紹介が行われます。各部活が作成したPRを生徒会が編纂したパンフレットが配られますので、各自それを見ながら部活紹介を見てください」

 部活動の量は生徒総数に比例する形でとても多いので、どんな部活があるのかをよくみておかなければならないだろう。


 先生の話が終わってチャイムがなると、部活動紹介の会場である第一体育館に向かう。

 今更な話だがこの学校の敷地は全国一位で、山を一つ使って立てている。様々な部活動が存在するのも、敷地が有り余っているからこそなのだ。

 今から向かう第一体育館は、集会や演劇に特化している、ステージのある体育館だ。部活動紹介を行うにはうってつけの場所だろう。

 体育館に入って並ぶと、さっそく部活動紹介が始まる。


 …「僕たち水泳部は、インターハイで成績を残すため…」

 …「陸上部では、各自が満足できるような記録を残せるよう…」

 …「サッカー部では、選手権本戦に出場できるよう…」


 さすが部活強豪校なだけあって、どの部活も輝かしい歴史と、高い目標を持っている。

 しかし残念ながら、僕は泳げないし、雄大には悪いが足も遅いし、ヒカルにも悪いがチーム競技は苦手だ。

 …うん、運動部はないな。冷静になって気づけた。青春は運動部でなくてもできる。二人には悪いけど、仮入部はお断りさせてもらおう。

 運動部の種類はとても多く、野球やサッカーなどのメジャーなものから、ホッケーや水球などの部活まであった。

 運動部の紹介が一通り終わって、十分の準備時間もとい休憩時間が挟まる。

 この時間を利用して、雄大とヒカルに断りを入れておく。

 二人からは残念そうな顔をされたが、中学時代の輝かしい()功績を話したら優しい笑顔で、

「いいって。運動苦手なら無理すんなよ、気にしてないから」

 と言われた。輝かしい功績の詳細は伏せておく。

 十分の休憩時間が終わって、文化部の紹介が始まる。


 …「クイズ部では、様々な雑学を身につけ、高校生…」

 …「科学部では、様々な研究を高校のうちから経験しておくことで…」

 …「文芸部では、作品の美しさに触れながら文芸を楽しみ、最終的には雑誌の発行…」


 余った敷地や空き教室を活かして、様々な部活が行われている。特に科学部では、その特徴が表れているだろう。研究ができる高校など限られているのだから。

 しかし、やはり自分に合う部活は見つからない。文化部の紹介が一通り終わっても見つけることはできなかった。


 そうこうしているうちに、部活動紹介が終わってしまった。この後は普通の授業が始まってしまうので、部活を選ぶ時間はあまりないだろう。

 雄大とヒカルはやはり陸上とバレー部に入るようだ。運動神経のある人は羨ましいものだ。


 教室に戻ると、少しの準備時間の後すぐに授業が始まった。

 授業はレベルが非常に高くて少し戸惑ったが、しっかり聞くとわかりやすく、自分のためになること間違いなしの授業だった。国語、数学と、中学では少し苦痛であった二つの教科をぶっ続けで受けたのだが、全く苦にならなかった。

 …前の席の雄大と相生さんは少し違うようだったが。


 昼休みの時間が訪れて、昼食を取ることができるようになった。弁当を持ってきていないクラスの男子数人で、昼の間解放される学食へ向かうことになった。

 ちなみに僕は雄大に誘われてご一緒できることになった。マジで感謝。

 学食でも、部活の話で持ちきりだった。

「なあなあ、数学研究部結構良さそうじゃなかったか?」

「いや、でも部長の様子がなんかおかしいんだよな…」

「バレー君は勿論バレーだろ?」

「もうやめてくれ…黒歴史なんだ…」

 なんだかんだいって自己紹介は成功だったかもしれない。話を切り出すきっかけにもなるし。

 やいやい騒ぎが広がる中で、人気の部活動が分かってきた。

 圧倒的な活動実績を誇る、野球部、陸上部、吹奏楽部、合唱部がやはり人気のようだ。

 加えて、クイズ部、科学部もその珍しさで目を引いているようだ。

 そして、茶道部も男子から超人気のようだ。その理由をある男子に聞いてみたところ

「は!?伊口も見ただろ!?先輩めっちゃ美人だったじゃんかよ!?」

 と、マガジンマークを多用しながら説明された。

 たくさんの情報は得られたものの、昼休みになっても仮入部する部活は決まらずにただただ時間だけが過ぎていった。


 午後の授業は今日も存在しておらず、全て部活の仮入部の時間に当てられているが、なんだか気乗りがしなくて真っ直ぐ帰路についてしまった。

 帰り道に学生は一切いなかった。今日の目標でもある一緒に帰る友達を作ることもできず、さらには仮入部でさえもしずに帰ってしまったことになんだか後ろめたさを感じるとともに悲しくなってきた。

 理想の学校生活を送りにきたのに、こんなことでいいのだろうか。


「あれ?伊口くんも仮入部しなかったの?」


 何処か既視感を感じる声のかけられかただ。振り返ると、市原さんがこちらに向かって歩いて来ていた。

「うん、あんまり自分に合いそうな部活動が見つからなくてね…市原さんも?」

「あはは…恥ずかしいことに運動も苦手で特技もないから、決められなかったの」

 俺よりかはマシだろ。絶対。

「俺さ、理想の学校生活を送りたいのに、こんなんでいいのかな…」

 つい弱音を吐いてしまう。それもくだらなくてちっぽけな、普通の人なら心に押し留めておく程度の。

 女の子に向かって情けないとは思うが、口から言葉が出てきてしまったのだ。

「理想の学校生活を送るのにさ、部活って絶対入らなきゃいけないのかな?」

「え?」

 思っても見なかったことを言われた。

「だってさ、こうやって友達と帰るのだって、学校生活の一部でしょ?」

「確かに…」

 これは部活に入っていたら起こり得ないことであって、もし部活に入っていたら友達と変えることができたか分からない。というか…

「友達と一緒に帰ってるのか、今」

 面白いことに、自然と友達と帰るという目的は達成されていた訳だ。となると、目的の完全達成のためにも動かねばなるまい。

 女の子にいうのは少し緊張するし、元コミュ症の俺には少し難しいことではあるが、勇気を振り絞って言ってみる。

「じゃ、じゃあさ、予定が合う日は一緒に帰らない?」

 市原さんは少し考える素振りを見せた後に、笑顔でこう返した。

「なんかナンパみたいな言い方だけど…いいよ、これからそうしよっか」

「ち、ちがっ、僕はそんなつもりじゃ!

「僕っていう男は舐められるよ?伊口くん?」

 どこまでも一枚上手のようだ…きっと今の僕は、とてつもなく真っ赤な顔をしているのだろう。

「フフッ、伊口くんは面白いね」

「おもちゃとしてですかさいですか…」

 市原さんはどこまでも明るく、面白い人だった。中学時代は友達がいないと言っていたが、それが嘘のようだ。


 それに、学校生活の価値観にも教わることがあった。

 俺の学校生活は、今日も確実に、理想に向かって進んでいるだろう。

やっと物語の基盤が完成したでおい…

ここら辺で、ようやく物語の本題である、「学校生活」の部分に進めます。言うなればここまでは第0章、ここからが本番なのです。

なので安心して続きをご覧ください!


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