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理想の学校生活を送りたい男子高校生の話  作者: 厨二びょ魚
第0章・入学と理想の学校生活
2/13

自己紹介って第一印象を決めるよね

 県でも有名な進学校、私立桜花(おうか)高校。多数の大学へのパイプを持っており、さらに信頼できる教育、高レベルの部活動実績を持っているのにもかかわらず、校則は緩めだというまさに理想の高校。

 しかしその分入学難易度は高いため、入学に相当な苦労を要するのだ。

 激しい受験戦争を勝ち抜き、見事入学する権利を手にした強きものたちがここに集まっている…

(そう、俺も強きものなんだよ…!)

 そう考えると、自然と頬が緩んできてしまう。周りの視線が痛いのは気のせいだろう。そう信じたい。

 既に入学式を終え、(友達は一人もできなかった)今日は最初の登校日。ここでバシッと決めて、理想の学校生活を送りたいものだ。


 馬鹿なことを考えているだけなのに、時間というものは光速で流れていくものだ。気づけば、学校につき靴を変え、事前に知らされていたクラスに勝手に足が向かっていた。

(いや、やっぱり理想の学校生活といえば友達でしょ、TO MO DA TI。まずは友達を作ってみることから始めてみようかな!)

 こう考えながら教室のドアを勢いよく開ける。そして友達を作る第一歩。リア充の呼吸壱の型、挨拶を放つ。


「おひゅおう!(訳:おはよう)」


 ……盛大に噛んでしまったのだが。

 しかし、不幸中の幸いというべきか。教室の中にあまり人は見当たらない。おそらく自分の痴態を見られずに済んだだろう…

「アハハハハッ!大丈夫か?ッフッ」

 …と思ったんだけど見られてないことなかった。というか、ガッツリ見られて笑われてた。割とリア充っぽい見た目してる男の人に。

「いや、大丈夫じゃない…」

 本心から出た言葉だった。

「お前面白いな。名前なんて言うのさ?」

 意外にもフレンドリーに接してくれるリア充風の彼。中学までは根暗だったので、このような機会には縁がないものの、春休みの間読み込んだトーク本を思い出しながら気合いで返す。

「お、俺は伊口陽介。気軽に陽介って呼んでよ。君は?」

 上手くいったのだろうか。笑顔で彼は軽快に返してくる。

「ああ、俺の名前は有坂雄大。よろしくな、ヨウスケ」

「よろしく、有坂くん」

「おいおい、俺だけ呼び捨てしてるとなんか悪いだろ。雄大って呼んでくれよ」

 明らかに手だれの返し。俺なら怯んで何もできないのに…

「あ、そうだね…よろしく、雄大」

「ああ、よろしく」

 そう言って歯を出して笑う顔がイケメンすぎる。絶対中学ではモテてるな。



 それからしばらく話していたけれど、やはり雄大はいいやつで、さらにイケメンだった。

「雄大はなんでこの学校にきたの?」

「ああ、俺は陸上部の推薦だよ。だから、頭はあまり良くないんだよな」

「へぇー、陸上部だったのか」

「ああ、これでも割と強いんだぜ!名前検索したら出てくる程度には有名なんだ、自慢じゃないけど」

「いや、自慢してんじゃん」

「あ、バレた?」

 などとどうでもいい会話をしているうちに、人の少なかった教室に人が入り始めてきた。

「あ、そろそろ座った方がいいかもな。結構人来たし」

「そうだね。最初は出席番号順の席だから、名前的にも席が近いかもね」

「そうだといいなぁ、高校初めての友達だし」

 そう言われると少し照れ臭い。


 黒板に貼ってある席順をみると、案の定席は縦並びで近かった。

「お、予想通りじゃん。やったな」

「ああ、よかったよ。知り合いが近いと安心だしね」

 話しつつ席に座ると、しばらくして教師が教室に入室してきた。

「はい、今年一年間お世話になります。担任の原田朋樹です。今年一年間を通して…」

 つらつらと自己紹介と目標を語る原田先生。正直言ってくどいので聞いていなかったが、いやでも耳に入る単語が耳に飛び込んできた。

「…というわけで有効を深めるためにも、自己紹介を行いたいので…」

(自己紹介!?あのラノベでよくあるイベント!?ここで一発キメるしかない…)

「…出席番号順、男女交互にお願いしますね」

 出席番号順ということは雄大が一番初めか。

「えーと、有坂雄大です。陸上やってます。好きなものはゲームと運動、嫌いなものは勉強かな。ぜひ仲良くしてください。えー、これからよろしく!」

 見事なテンプレートを用意しつつ、後続に繋げる素晴らしい自己紹介だ。それを理解した生徒たちは、惜しみなく盛大な拍手を送った。

 次は女子の一番の自己紹介だ。雄大の後とはまたハードルの高い…

「相沢瑞樹、16歳!後一日早く生まれていたら先輩でした!なので私のことは先輩って呼んでくれてもいいんですよ?これからよろしくお願いしますね!」

 またもや大きな拍手が鳴り響く。テンプレートをぶち壊しながらも、イメージがよく伝わるいい自己紹介だった。だが、それだけに…

(俺のハードルが高すぎる…)

 そうなのである。前の二人が優秀すぎるが故に、ここで普通の自己紹介をしても印象に残り辛いのだ。となると、狙うはギャグ路線。バカウケ必死のギャグで壊しに行くしかない。

 心を決めて、席を立つ。


「こんにちは。伊口陽介です。好きなことはゲームです。特に、バレーのゲームが好きなんです。バレーてましたか?」


「「…………」」


 やっちまったよ、母さん…

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