聖魔姉妹VS青銅鷹の悪魔
屋上から見える月には、雲がかかっていた。
雲は風に流れ、月明かりが私たちを照らす。周囲の建物に明かりがついていないせいか、その淡い光に照らされた悪魔憑きの――シュナの顔がやけにはっきりと見える。建物の周りから何かが崩れるような音が、足元からは大勢の怒号や、ガラスが割れるような音、何かがぶつかり合うような音が聞こえる。
皆が戦っている、戦ってくれている。
それだけで、私は目の前の人に臆せず立ち向かえる気がした。
シュナが鷹のようなかぎ爪を音立てて振るうと、埃が舞い上がり、月明かりにきらめいた。お姉ちゃんは私を庇うように前に立ち、柄にも刃の付いた大きな武器を構えると、刃の部分が青白く光った。
「お仲間の後ろに隠れて……あんた相変わらず自分勝手ねえ」
そう、あの子の言う通りだ。立ち向かうなんて言って、結局私は誰かを頼る。そうやって皆を、お姉ちゃんを危険な場所まで連れてきてしまった。
でも、それが嬉しくてたまらなかった。
こんなところにまで皆が付いて来てくれている。
戦ってくれている。
それが嬉しくてたまらない。
本当に自分勝手だと思う。でも、今の私にはそうすることしかできない。一人であがいても何もできない。だけど、こんなどうしようもない私を助けてくれる人がこんなにも居てくれている。それは、これ以上ない幸せな事だと思う。
だからこそ、私は皆に甘えたい。今目の前に立ちふさがるこの壁を超えるために、私の脚の脚を掴んで離さない悪夢を振り払うために、皆の力を借りたい。そしていつか、皆の力になりたい。
その為に私は、こんなところで立ち止まっては居られない。
私はお姉ちゃんの背中越しに、正面からシュナの視線を受け止めた。月明かりに照らされた彼女の顔が不快そうに歪んだ。月に雲がかかり、彼女を照らす月明かりが消えたと同時に、彼女の姿も消えた。
何処に行ったのと、疑問が頭に浮かぶ前に、顔のすぐ横で金属がぶつかり合うような耳障りな音が鼓膜を揺らす。反射的に視線を向けると、シュナの爪をお姉ちゃんが双刃の武器で受け止めていた。
「あらら、惜しいわね」
「もうこの子には指一本触れさせん……!」
青白い火花を散らしながら交わる二つの刃。その二つの交点、お姉ちゃんの武器の棟の部分に向けて思い切り頭を突き出した。その衝撃で激しく刃がぶつかり、シュナの爪をはじき返した。
「……ッ!」
頭にガツンと硬いものが当たる感覚がしたけど、ほとんど痛みはなかった。いつかハカセが言っていた通り、ゴブリンの私は頭が固くなっているみたいだ。私は頭をさすりながら、一歩後ろに下がったシュナに視線を向けた。
「私にだって、できることはあるよ……!」
「なんなのよあんた……!!」




