薄汚い人殺し
獣皮はごろりと仰向けになり、撃ち抜かれた胸に手を当てた。塵になった体の一部が手のひらに付いているのを見て、獣皮は喉の奥で笑った。
「あ~ぁ、ここで死ぬのかぁ……まあ適当にうまいもん食ってぇ、けっこうな数の女ぁいたぶってぇ、いい悲鳴も聞けたしなぁ、そこそこ……楽しかったぜぇ……」
血を吐きながら笑う獣皮を、ルディは無言で見降ろしていた。
鋭く冷たい、嫌悪と侮蔑を孕んだ瞳だった。
「おい、そんな目で見んじゃねえよぉ……おめえ、何人殺したぁ、えぇ? さっきだけで何人殺したよぉ? 俺とおめえのどこがちげぇ? 俺もおめえも……薄汚ねえ人殺しだぁ……」
「……お前なんかに言われなくても分かっているよ」
ルディは低く小さな囁きの様な一言を発し、瞳をほんの僅かに揺らした。それはまるで、瞳に宿っていた嫌悪と侮蔑が、そのまま彼女自身に向けられたかのような揺らぎ。だが、その揺らぎはすぐに収まり、ルディは引き金に指をかけた。
「俺は自分のイカレ具合を受け入れてんのによぉ……てめえは何なんだぁ? ……いいかぁ、クソがどれだけ着飾っても、どれだけ他人の役に立っても……結局はクソなんだぁ、きたねえ汚物、誰にも愛されやしねぇ……」
ぼろぼろと崩れていく体を気にも留めず、獣皮は狂った笑みを浮かべた。
「何度も言わせるな、お前なんかに言われなくても分かってる」
「どうだかなぁ……俺はとっくに諦めたぁ、だがおめえはまだ――」
銃声が響き渡ると、獣皮はもう口を開くことは無かった。
彼は瞬く間に塵となって消え、その場には何も残らない。
「…………」
ルディは獣皮が倒れていた場所を黙って見つめていた。あの男と、自分に違いなんてない。自分は薄汚い人殺しだ。だが、一つだけ違う。なんのために人を殺めるのか、その理由だけは違う。
そこだけは――そこだけが、彼女の拠り所だった。
やがてルディは愛する銃を掌に感じながら、顔を上げた。
そして彼女を――自分の過去から目を背ける事をやめた、強い少女を想った。




