ルディVS獣皮の悪魔
大勢の怒号が建物に響き渡る。
声を挙げた者たちの頭に胴体に風穴があく。倒れる間もなく塵になって行く悪魔憑きたちの中心に、狼の耳と尾の生えたルディがいた。短かった頭髪は伸びて狼の尾のようになり、瞳にも獣性が宿っていた。だが、獣じみた牙で噛み砕いた飴玉の甘い血の味は、すでに口内から薄れつつあった。
「ほらほらぁどんどんいけぇ、そいつを弱らせたら幹部待遇にしてやるぞぉ!」
周辺にいる悪魔憑きたちを焚きつけ、ルディに襲い掛からせながら、獣皮の男は甲高い笑い声を挙げた。脅え、逃げようとする部下は自分の手で切り裂きながら。そんな獣皮に、ルディは突き刺すような視線を向ける。
「卑怯者とは君のために造られた言葉だね」
「オラぁ、無駄口叩く余裕があるみたいだぞお前らぁ」
獣皮の言葉に、ある者は恐怖心から、ある者は功名心からルディへと襲い掛かる。だが、下級の悪魔を見に宿した程度の彼らが敵うはずもなく、魔狼の銃弾で脳天を撃ち抜かれ、拳や足で頭蓋を打ち砕かれ、塵となって消えていく。数分後には、廃材で丸く囲まれた柵の中には、ルディと獣皮だけが立っていた。
「あぁ~あ。全滅、皆殺し、ひでぇことするねぇ」
「お前がけしかけたからだろう。なんとも思わないのか、仲間だろう」
「仲間っつーかぁ、なぁんだろねぇ」
獣皮は足元でうめく悪魔憑きを見下ろすと、床に見つけたゴミをすこしどけるかのように、面倒そうに首をはねた。
「あぁ、あれだわ。クソにたかるハエくれえなモンだよこいつらはぁ」
「自分がハエのたかる薄汚いものだという自覚はあるみたいだね」
「その減らねえ口から出る悲鳴を聞くのが楽しみだぁ……」
獣皮は前かがみになると、四足獣様な体制になった。頭から被ったような血まみれの獣皮が逆立ち、手足の爪がぐちぎちと不快な音を立てて伸びていく。紫陽の鋭利だがどこか美的なものを感じる爪とは違う、血と皮がこびり付いた骨が尖っただけの、薄汚く恐ろしい魔獣の爪。
「いくゼぇ……?」
狂気で震えた声に応えず、ルディは銃を構えた。




