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聖女ゴブリン 今日も嘆く  作者: 海光蛸八
花牙爪紫陽 という悪魔
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その①

「でぁあああえええいいいい!!」


 追い詰められた悪代官みたいな悲鳴をあげて、私は壁に貼りついてた。目の前で剣や爪がびゅんびゅん振り回されたらそうなるでしょう。私の鼻先で風を切る音と鋭い金属音が絶え間なく続く。


「狭い部屋でそういう戦い方はやめろおおおお!!」


 私たちが居るのはただの一軒家。それなりに広くはあるけど本気のチャンバラをやるには狭すぎる。壁や天井、床には二体の悪魔が付けた刀傷……剣傷? 爪傷? なんでもいいけどとにかくボロボロだ。いつ壁に貼りついている私が斬りつけられるのか分かったものじゃない。


 でも、私の叫びが届くはずもない。


 目の前で剣戟を繰り広げる悪魔の一方は、体の前面が丸々口になっていて造形がもうなんだかよく分からない感じになっている。もう話が通じない感じがバリバリに漂っている。

 その大口の悪魔が飛びかかった先には、中世の騎士のような西洋甲冑が立っている。こちらも甲冑が自立して動いているようで中身はなく、話なんか聞いてくれるはずもない。


「ガァアアっ!!」

「……」


 甲冑は無言のまま大きな剣で悪魔の爪を、牙を弾き、受け流す。その動きに無駄はなく、一瞬の隙をついて騎士は悪魔に肩から体をぶつけて吹き飛ばす。悪魔は床を転がり、四つん這いの姿勢で止まる。


「グルルルル……!」

「…………」


 大口の悪魔が猛獣のような唸り声をあげるが、甲冑の悪魔は何も答えない。甲冑は剣を構えて飛び上がり、大口を串刺しにしようとするが、騎士の剣は床に突き刺さっただけで獲物を捉える事は出来なかった。

 天井に飛び上がっていた大口の悪魔が、鋭く伸びた爪を振るうが、これも床に幾筋もの傷をつけるだけで甲冑の悪魔には当たらなかった。二体は再び相対し、また刃を振るい合う。


「が、がんばれええ! 早く終わらせてええええ!!」


 私は声を張り上げて大口の悪魔を――花牙爪かがづめ紫陽しようさんを応援した。


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