最後の
「……あはは~☆ 親友って~?」
きらりさんが尋ねると、花牙爪さんは爪の力を抜いた。
「……あそこでただひとり、私を助けてくれた子……ねえ、きらり」
花牙爪さんが顔向けると、きらりさんは「ん?」と首を傾げた。
「……前に話したよね、私もいっぱい殺したって」
「あはは~……うん、言ってたね~☆」
「……さっきも言ったけど、あいつは悪魔憑きをつくってる。その方法がそれ……あそこで悪魔憑き同士に殺し合いをさせて、強い悪魔憑きを作る、それがあいつのやり方……」
「こ、殺し合い……?」
思わず漏れた私の言葉に、花牙爪さんは頷いた。
「……勝った方は相手の魔素を吸ってさらに強くなる。それを何度も、何度も繰り返して強い悪魔憑きを作る……私もそうやってできた一人……」
千晴さんもルディさんもきらりさんも悪魔憑きだ。
私の血を飲み、皆その姿を悪魔に変えるのは何度もみてきた。
だけどその中で特に異形の姿へ変貌する花牙爪さん。
彼女が恐ろしい姿に変わるのは、そんな方法で作られたからなのか。
狂った方法で、作られた、生み出されてしまった怪物。
それが花牙爪さんなのか。
そんなの、あんまりだ。
「……それを変えようとしていたのが、私の親友。悪魔憑きでも安心して暮らせる場所をって……それなのに、あの子を殺して、悪魔憑きを作り続けたのが……」
「禹夏って野郎なんだな?」
千晴さんが静かに言うと、花牙爪さんはまた頷いた。
「……禹夏は強い悪魔憑きを四体、組織したかった。その中の一人が私……でも私はあいつから逃れた、だから代わりを作った……そしてたぶん、始まった……」
お姉ちゃんが「始まった?」と花牙爪さんの言葉を繰り返す。
「……悪魔憑きが支配する世界、禹夏はそう言ってた」
「それは中々壮大な計画だな」
ハカセの言葉こそからかうようなものだったけれど、声色は真剣だった。
「お前さんレベルのが何体もいるんだろう?」
「……四人はいると思う。そのほかの悪魔憑きもたぶんたくさん」
「そうなれば、絵空事と切り捨てるわけにもいかないか……」
「ところで、おめえが今でもそいつと繋がりが無ぇって証拠は――」
牛窪が言い終わる前に、機械音が鳴り響いた。
お姉ちゃんが腕の端末を操作し、通信を受けた。
数回のやり取りの後、お姉ちゃんは息を吐いてこちらをみた。
「件の悪魔憑きの場所が特定できたらしい」
「ずいぶんいいタイミングじゃないか」
「それがどうにも怪しい、今まで上手く追えなかった筈だが……」
「……きっと、待ち構えてる」
花牙爪さんに皆の視線が集まる。
「……聖歌隊、私たち、どっちも潰す気でいる」
「それで支配権を得ようとしているのかい?」
「まとめてかかって来いってか? 舐められたもんだ」
「いや、そうとも言えん」
千晴さんの言葉に、お姉ちゃんがはっきりと返す。
「なんだボス? こいつらと俺らが協力すりゃ怖いもんねえだろ?」
「ただの悪魔憑きの拠点に攻め入るならば、な」
「お姉ちゃんどういうこと?」
「その悪魔憑きの居場所は――最後の魔屍画だ」