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聖女ゴブリン 今日も嘆く  作者: 海光蛸八
幕間~がんばれオオカミ3姉妹!~
154/208

魔犬VS狼三姉妹

 狼三姉妹は身を潜め、キッチンの様子をうかがっていた。

 

 彼女たち自身の力は本来であれば並みの悪魔よりも何倍も強い。

 だが、現在は母体ともいえるルディの調子が悪い。

 その分彼女たちの力も衰えているのだ。


 今この三人の力は外見通りのものになっている。

 油断すればキッチンいる魔犬程度の相手にも後れを取る可能性があった。

 そのため、今彼女たちは武具を身に着けていた。

 

 最も、その装備が悪魔に対抗できるかは疑問だった。


 その幼い手に握られているのは、モップに虫網、ダンベルだ。

 頭には洗濯カゴをかぶっているが防具のつもりだろうか。

 到底悪魔を相手するとは思えない恰好だが、彼女たち自身は真面目だった。


「ロロとスゥはここで待ち伏せてほしいの」

「ルル、危険よ」

「……危ない」

「大丈夫なの、あいつがこっちに逃げたら捕まえてほしいの」


 そう言うとルルは手にしたダンベルを構え、姿勢を低くした。

 足音を忍ばせながら、キッチンに入って行った。

 だが、二つ頭の犬にすぐ気が付き、すばやくルルに飛びかかった。


「わあああ!! この! この!!」


 ルルは手にしたダンベルを振り回して応戦した。

 いや、重いダンベルに振り回されているという方が正しい。

 しかし、それでも威嚇するには十分だったようだ。


「そっち言ったの!!」

「分かったよ!!」

「……むん!」


 キッチンから逃げ出そうとした犬を、狼娘たちが迎え撃つ。

 ロロはモップを、スゥは虫網を振り下ろす。

 だが、二人の攻撃はひらりとかわされてしまった。

 

 勢いよく振り下ろされた得物が、お互いの頭を直撃する。

 ロロは頭の網を取ろうとしたが、爪が引っかかりよけいに絡まる。

 脳天をモップで打ち抜かれたスゥは、頭を抑えてうずくまった。

 

「むぐぅ! 取れないよぉ!!」

「いッ! たぃい………」

「大丈夫なの!?」


 狼娘たちがわたわたしているうちに双頭犬はカウンターに飛び乗った。

 唸り声をあげて威嚇する悪魔を三姉妹は見上げた。

 そして体制を立て直さないまま、一斉に飛びかかった。


「くらえなの~!!」

「あ、そっち逃げたよ!!」 

「まてー……!」


 ドタバタと三姉妹と魔犬が暴れまわる。

 逃げ回る魔犬を、三姉妹が間の抜けた得物を振り回しながら追いかける。

 とても悪魔同士の戦いとは思えないレベルの争いだった。


「あ! 上にいっちゃだめなの!!」

「みんな疲れて寝てるのよ!!」

「……むにゃ!」


 階段を駆け上がっていく魔犬を、バタバタと追いかけていく。

 焦った三姉妹はもみくちゃになりながら階段を上り切った。

 その時、前方のドアのうちひとつが開いた。


「も~、みんなもう少し静かに……」

「危ないの!!」


 ドアを開けた真理矢の喉元に、双頭の犬が飛びかかった。



「うおお! なんじゃああ!!??」


 真理矢は驚き、ぼふんとその姿をゴブリンに変えてしまった。

 魔犬は目標を外して空を噛んで廊下に倒れ落ちた。

 数秒床でもがいた後、立ち上がって振り向いた魔犬に、


「でてけこのノラいぬ……ノラ悪魔!!??」


 ゴブリンはいつの間にか持っていた棍棒をフルスイングした。

 棍棒は二つある頭の真ん中をしっかりと捉えた。

 ぎゃいんと情けない声を残して、魔犬は窓の外へ殴り飛ばされた。


 その場に残ったのは、ぽかんと口を開ける三姉妹。

 それと、妙に良いフォームで棍棒を振りぬいたゴブリンだけだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 真理矢さんて 元ソフトボール部でしたっけ いや写真部でも 粉砕バットを手にとって あらゆる状況を打破した 鳥坂先輩という伝説の脇役が 漫画の世界にいましたね。 [一言] かわいらしい捕物…
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