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聖女ゴブリン 今日も嘆く  作者: 海光蛸八
幕間~がんばれオオカミ3姉妹!~
153/208

頑張ってやっつけるの!

 私はエレベーターでバーに戻りながら、ため息をついた。 


 ハカセの考えが読めない。

 あの人ほんとに信用していいのか。

 今更だけどそんな考えが頭によぎる。

 

 でも、他にこの体を治すあてもない。

 あんなんでもハカセは悪魔研究の第一人者。

 国や聖歌隊よりもその研究は進んでいる。

 

 ここに居るのが私にとって最善なのだろう。

 ここに居る皆の役に立ちたいとも思う。

 それは私の正直な気持ちだ。


 これほど深く関われたのがお姉ちゃんと菊さん以来だ。

 まだ付き合いはそれほど長くはないけれど、密度はある。

 だから、皆の力になれたらと思う。


「うげぁあ~ムリィ~……」


 ……今は特に。


 エレベーターを降りた先に倒れていたのはきらりさん。

 昨日帰ってきてからずっとこんな調子だ。

 あれだけの激戦の後だから仕方がないだろう。


「うぐぅ~……筋肉が、動かねえ……」

「あー…………っ」

「……喪家の狗」


 他の三人も似たような感じだ。

 ハカセが言うには長時間繰り返し覚醒したせいらしい。

 とにかく、四人とも今までで一番のグロッキー状態だ。


 かく言う私も調子がいいわけじゃない。

 今回の戦いは長丁場だったから、私にも疲れが残っている。

 皆の力になりたいとは言ったけれど、今できるのは声をかけるくらいだ。


 この場で唯一元気なのは――。


「皆げんきないの!」

「戦いの後だから仕方ないわ!」

「……んみぃ」


 ルディさんの狼三姉妹くらいだ。

 この三人は彼女とは疲れはリンクしていないらしい。

 皆に構ってもらえずさっきから三人でじゃれ合っている。


「まりやも疲れてるの?」

「あはは、まあね……」

「だったら寝てなさいよ! お掃除くらいならできるよ!」

「……できるぅ?」


 一人ちょっと不安だけど今はお言葉に甘えようかな。

 ルルちゃんたちと協力して皆を寝室に押し込んで、私も自室に入った。

 皆の力になりたいとか言っておきながらこの体たらく。情けない。


 少し休んだら夕飯は皆の好物を作ろう。

 ベッドに横になってそんなことを考えていたら、まぶたが重くなってきた。

 私は眠気に逆らわず、そのまま目を閉じた。


     ◆


「さあて、二人とも頑張るの!!」


 三人の悪魔はおー!と元気よく腕を振り上げた。

 その後ろを、なにかが通り過ぎていったのをルルは見た。

 ひとつの影が階段を下り、ルルの視界から消えた。


「あれ、今何かいたの」

「……なにかぁ?」

「うん、人じゃないと思うの」

「でも、今この家で動けるのはハカセだけよ?」

「……オバケ?」

「や、やめてよ!!」

「とにかく見に行くの!」


 よく聞くと、階下で何か物音がしていた。

 三人は手を繋いで慎重に階段を下りて行った。 

 一階に降りたところで、キッチンから音がする事に気が付いた。


「ゆっくり行くの……!」


 狼三姉妹は足音を忍ばせ進んでいく。

 そうして、そっとキッチンを覗き込んだ。

 そこに居たのは、1匹の犬だった。


 しかし、ただの犬ではなかった。

 黒い体毛の犬であったが、その頭は二つあった。

 ひょろりと長い尻尾は細い蛇になっていた。


 冷蔵庫に顔を突っ込み、食料を貪り食っている。

 肉類にかぶりつく口の端から、食べこぼしが辺りに散らばっている。

 落ち着きなく周囲を見回しながら、焦るように肉を食らっている。


 二つの頭のひとつが三姉妹の方を向いた瞬間、三人はぱっと体を引いた。

 双頭の犬は数秒動きを止めたが、またせわしなく肉に牙を立てる。

 気づかれていないこと確認し、ルルは二人に向き直った。


「二人とも聞いてほしいの!」

「どうしたのよ?」

「……んん?」

「今日は皆疲れてるの! だから――」


「――私たちが頑張ってやっつけるの!」


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