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聖女ゴブリン 今日も嘆く  作者: 海光蛸八
魔屍画~魍魎千蛇・跋扈~ 編
143/208

群体の悪魔

「止めてぇええええ!!」


 受け止めて貰おうと叫んだ私を、蛙田さんはひょいとかわした。

 なんでよ受け止めてよ! いやこの勢いじゃ無理か!!

 でもなんかしら止める方法あったでしょ!?


 私はピンボールみたいにビルにぶつかりまくり、四方八方を飛び回る。

 ようやく勢いがなくなってきた時には、地面に突き刺さっていた。

 やり投げの槍みたいにびぃんと揺れてから、突き刺さった頭部を地面から引き抜く。

 

 どうやら生きてる。

 多分だけど頭から突っ込んだのがよかったみたいだ。

 ゴブリンに頭硬いイメージ無いけどなんで私はこうなの?


 てなこと言ってる場合じゃない。


「蛙田さん! 助けに来ました!!」

「たす、け……?」

「私の血を!!」


 私は散々ビルの壁面にぶつけまくった緑色の頭を拭った。

 べっとりを掌についた血を、蛙田さんに差し出す。

 蛙田さんは一瞬驚いた顔をしてから、


「――ありがとう!!」


 私の手を掴み、長い舌で血を舐めとった。

 蛙田さんは再び悪魔として覚醒した。

 人外の目玉をぎょろりと動かし、無数の悪魔に狙いを定める。


 「気を付けて!」という私の言葉と同時に、蛙田さんは地を蹴った。

 私も足に力を込めて、悪魔達の元へと飛んでいく蛙田さんを追いかけた。

 私が行って戦力になるかは微妙だけど、ここで何もしないでいるのは嫌だ。


 それに、蛙田さんは今日二回目の覚醒だ。体力切れになったら大変だ。

 それまでに千晴さんたちが合流できてればいいけど、確証はない。

 その時は私が体を這って蛙田さんを救助しなければならない。


 前方の大群に乱れが生じた。

 蛙田さんが追い付き、攻撃を開始したのだろう。

 地上から何度も跳び上がっているのが恐らく蛙田さんだ。


 徐々に近づいてくると、私は全身の毛が逆立つのを感じた。

 紫の大蛇がばらけた悪魔の姿は遠巻きにしか見えなかった。

 間近で見ると、思わず目を背けたくなるような姿だった。


 空を飛ぶ虫たちの複眼は人間の目玉を無理やり寄せ集めたようだった。

 そのおぞましい目がふたつ、丸かったり、細長かったりする体に張り付いている。

 その体は、皮を剝いだ肉塊のようにも見えた。

 

 地べたを這う虫はサソリやクモにも見えたけど、そのパーツは全て人の一部に見えた。

 人間から頭蓋と背骨を引き抜き、逆さにしたような姿のサソリが奇声をあげる。 

 手や足の骨をめちゃくちゃに組み合わせたような姿のクモが、ビルを這いあがる。


 地獄絵図、とはこのことだろう。


 そんな醜悪な悪魔達に、蛙田さんは必死に立ち向かっている。

 スマホから数々の武具を錬成し、撃ち落とし、払いのけ、叩き潰し、蹴り飛ばす。

 あれほどまでに必死の形相の蛙田さんを見たことがない。


 だけど、群体の悪魔はその数を一向に減らしていない。

 蛙田さんが倒した先から復活し、醜悪な体を再生させる。

 砕き飛び散らした肉片それぞれから再生するので、むしろ数が増えている。


「蛙田さん……! 皆はやく……!」


 蛙田さん一人ではどうしようもない。

 せめて皆が揃うまでもてばなにか活路が見いだせるかもしれない。

 そんな一縷の望みをせせら笑うように、群体の悪魔は移動を再開した。


「……ッ!!」


 蛙田さんの顔に焦りが浮かび、更に攻撃の手を強める。

 けれども悪魔達は群体の一部を迎撃に向かわせるだけで、止まりはしなかった。

 このままでは、引き寄せられるままに住宅地へ向かってしまう。


 沢山の人が死んでしまう。


 蛙田さんの家族も、死んでしまう。


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