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聖女ゴブリン 今日も嘆く  作者: 海光蛸八
魔屍画~魍魎千蛇・跋扈~ 編
136/208

ひとつの家族

 聖歌隊の保護区域の中に、そのきょうだいはいた。

 十を超えるきょうだい達を、一番年上の姉が世話をしている。

 わいわいと騒がしい弟、妹たちを相手に、彼女は笑顔を崩さない。


 彼女は――いろはは家族と出かけていた。

 先日、きらりが来た時に取り乱したせいで職場の同僚に心配された。

 有休も消化しなければならなかったので、休暇を取ったのだった。


 もっとも、家族を連れての外出は疲労がたまるものだった。

 だが、彼女はそれでよかった。

 姉のきらりの分まで、自分が彼らを幸せにしなければならない。


 それが、彼女が最大限できる償いだった。


「お姉ちゃん、今日はどこいくのー?」


 双子の妹が声をそろえてそう言うと、いろはは笑って、


「そうね、たまには外に行きましょうか」


 聖歌隊の保護区は主に住宅や教育施設で構成されている。

 娯楽施設は保護区の外に設置され、住宅地よりも幾分警護が薄い。

 それでも普通の街よりも安全だが、安全が保障された区画から出る事には変わりない。


 普段のいろはなら外に出るという選択はしなかっただろう。

 双子の妹も、「大丈夫なの?」といろはに尋ねた。

 だが彼女は、「そんなに遠くには行かないから」と笑顔を見せた。


 自分が拒絶したせいで行方知れずとなっていた姉が生きていた。

 姉自身には追い出されてしまったが、自分の行いを考えれば仕方がない。

 ただ姉が生きてくれていた。その事実が、いろはの心を軽くしていた。


 だから彼女は、喜びを胸に抱えて家族と共に保護区から離れた。


 その感情が、何を呼び寄せるかも知らずに。


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