その日はすぐに来る
部屋から出ると、千晴さんとルディさんが待っていた。
私と花牙爪さんの後ろから蛙田さんが顔をだし、いつもの様に笑った。
それを見た二人は小さく息を吐き、
「おう、少しは元気になったみてえだな」
「それでこそキミだね」
千晴さんは蛙田さんの頭を小突き、ルディさんはウィンクしてみせた。
「で、どんな事情だったんだ」
「それは……」
「今更隠し事は無しだよね? 私たちの過去は赤裸々に暴露されてしまっているんだし」
確かにそうだけど、と私が迷っているうちに蛙田さんが前に出た。
それから、自分が何をしたかを二人に伝えた。
二人は何も言わずにただ頷くと、何でもないような調子で口を開いた。
「まあ、お互い色々あるわな……それより腹減ったぜ」
「それよりって千晴さん」
「仕方ねえだろきらりの作ったオムレツだけじゃ足りねえよ」
「それはそうかもしれませんが」
「いいから出前なり外食なりしようぜ。なあきらり? いつもみてえにさ」
それだけ言い残して、千晴さんは鼻歌交じりに下へ降りて行ってしまった。
ルディさんはその背を見送り、やれやれと言った様子で首を振った。
「馬鹿なりに気を遣ったんだ、分かってやってくれるよね?」
「あはは~☆ もちろん~☆」
瞬間、真横からとてつもなく大きなお腹の音が聞こえた。
地鳴りのような音はもちろん花牙爪さんのお腹から聞こえた音。
「……腹が減っては戦ができぬ」
「そうだね、明日の事もあるし早く食事にしようか」
「あはは~☆ 賛成~☆」
連れだって下に降りると、千晴さんとハカセが勝手にピザを注文していた。
皆特に文句も言うことなく宅配を待ち、夕餉を囲んだ。
蛙田さんもすっかり調子を取り戻し、食事風景はいつもの物に戻っていた。
二人の時とは違って、完全に解決したわけではない。
だから心に引っかかるものがあるのは事実だ。
蛙田さんの過去は、まだ彼女の心に影を落としている。
だけど、焦っても仕方がない。
さっき自分で言ったようにいつか来る向き合う時を待てばいい。
そしてその日が来たら、全力で助けよう。
皆が、菊さんが私にそうしてくれたように。
ただ、それだけでいい。
だから今は、日常を味わっておこう。
私は味の濃いピザを、甘ったるい炭酸で流し込んだ。