表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女ゴブリン 今日も嘆く  作者: 海光蛸八
魔屍画~魍魎千蛇・跋扈~ 編
134/208

その日はすぐに来る

 部屋から出ると、千晴さんとルディさんが待っていた。

 私と花牙爪さんの後ろから蛙田さんが顔をだし、いつもの様に笑った。

 それを見た二人は小さく息を吐き、

 

「おう、少しは元気になったみてえだな」

「それでこそキミだね」


 千晴さんは蛙田さんの頭を小突き、ルディさんはウィンクしてみせた。

 

「で、どんな事情だったんだ」

「それは……」

「今更隠し事は無しだよね? 私たちの過去は赤裸々に暴露されてしまっているんだし」


 確かにそうだけど、と私が迷っているうちに蛙田さんが前に出た。

 それから、自分が何をしたかを二人に伝えた。

 二人は何も言わずにただ頷くと、何でもないような調子で口を開いた。


「まあ、お互い色々あるわな……それより腹減ったぜ」

「それよりって千晴さん」

「仕方ねえだろきらりの作ったオムレツだけじゃ足りねえよ」

「それはそうかもしれませんが」

「いいから出前なり外食なりしようぜ。なあきらり? いつもみてえにさ」


 それだけ言い残して、千晴さんは鼻歌交じりに下へ降りて行ってしまった。

 ルディさんはその背を見送り、やれやれと言った様子で首を振った。


「馬鹿なりに気を遣ったんだ、分かってやってくれるよね?」

「あはは~☆ もちろん~☆」


 瞬間、真横からとてつもなく大きなお腹の音が聞こえた。

 地鳴りのような音はもちろん花牙爪さんのお腹から聞こえた音。


「……腹が減っては戦ができぬ」

「そうだね、明日の事もあるし早く食事にしようか」

「あはは~☆ 賛成~☆」


 連れだって下に降りると、千晴さんとハカセが勝手にピザを注文していた。

 皆特に文句も言うことなく宅配を待ち、夕餉を囲んだ。

 蛙田さんもすっかり調子を取り戻し、食事風景はいつもの物に戻っていた。


 二人の時とは違って、完全に解決したわけではない。

 だから心に引っかかるものがあるのは事実だ。

 蛙田さんの過去は、まだ彼女の心に影を落としている。


 だけど、焦っても仕方がない。

 さっき自分で言ったようにいつか来る向き合う時を待てばいい。

 そしてその日が来たら、全力で助けよう。


 皆が、菊さんが私にそうしてくれたように。

 ただ、それだけでいい。

 だから今は、日常を味わっておこう。


 私は味の濃いピザを、甘ったるい炭酸で流し込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ