悪魔一向ご招待
「温泉ですか?」
ハカセの言葉をオウム返しした私の言葉に、皆が反応する。
「そうだ、デイジーの奴が新しく作った施設があるそうでな。そこに招待された」
「へえ! いいじゃないですか」
「……まったく余計なことを」
「え?」
私が首をかしげると、ハカセは「なんでもない」と言って何かをこちらに投げた。
ちょうどよく目の前のテーブルに落ちたそれは、旅館のパンフレットの様だ。
「おお! これですか!」
「らしい」
「どれどれ……」
広げてみてみると、まるで別荘のような客室の写真がそこにはあった。
旅館の一室にも関わらず、リビング、和室、テラスという文字もある。
個室には露天風呂どころか、大きな温水プールまであった。
「うわあ高そう……」
「いい感じじゃねえか、行こうぜ!」
「……私、この姿だから皆で入るの無理」
「おっきな温水プールあるから大丈夫ですよきっと!」
「あはは~☆ よかった~☆」
「たまにはゆっくりするのもいいかもね」
「それじゃあお前さんたち、ゆっくり体休ませて来い」
コーヒーを啜るハカセの顔を、私たちは一斉に見た。
「な、なんだ」
「ハカセは行かないんですか」
「私は別に」
「え~何でですか行きましょうよ!!」
「そうだぜ、一人残してってのも気分悪いだろ」
千晴さんの一言を皮切りに、私たちはブーブーと文句をたれた。
ハカセがいかない口実を口にするたびに、私たちは不満を口々にわめいた。
最後には行こう行こうの大合唱である。
「……わかったよ、付いて行く」
観念したハカセの言葉に、私たちはわーいと子供のように両腕を上げた。
「よーし、だらだらお菓子食いながらいこーぜ!!」
「おかしっていったの!?」
ルディさんの銃からルルちゃんたちまで出てきてもう大騒ぎだ。
「ハカセ、バン出して乗せてくれよな!」
「それは構わないが……」
「あはは~☆ それならラクチンだ~☆」
「……悠々自適」
「それじゃあ、みんな準備しようか」
皆好き勝手言うと、ばたばたと自分の部屋へと戻って行ってしまった。
取り残されたハカセはコーヒーを一口飲むと、私の方を向いて、
「……あいつら、足が欲しかっただけか?」
「ち、違うと思いますよ……」
私はハカセから目をそらしながら言った。