《通信記録》
《物音》
「……私だ」
『ハァーイ! ハカセ!!』
《ため息》
「連絡はこっちからするって言ってただろ」
『マリヤちゃんたち、勝てたみたいデスね!』
「……ああ、さっき聞いたよ」
『ドーですか? なにかイミありましたカ?』
「勝てたという事は、順調に進んでるってことだ」
『オー! それはグッド!! ワザワザ呼んだかいがありマシタ!!』
「……感謝してるよ。それじゃあな」
『あー! ハカセ、ちょっと待ってくだサイ!』
《舌打ち》
「なんだ、私は忙しいんだ」
『いっこだけクエスチョンありマス!』
「なんだ」
『……なんで、マリヤちゃんにアーマー渡さなかったですカ?』
《椅子が軋むような音》
《しばらく沈黙が続く》
「……渡し忘れただけだ」
『ハカセはウソが下手ですネ!』
《沈黙》
『ハカセ、あなたもしかして――負けてほしかったんじゃないデスカ?』
《長い沈黙》
《何かを乱雑に机に置く音》
《深いため息》
「……さあな」
『ハカセ、本当に予定通りススめるデスカ?』
「決まってるだろう」
『今はワタシの聖歌隊もイマス。このママでもいいのでは――』
《何かが壁に当たって砕ける音》
《荒い吐息》
「黙れ……もう決めたんだ。決めてたんだ、ずっと前からな!!」
『ハカセ、他に方法が……』
「それしかないんだよ!! 私がやんなきゃなんないんだよ!!」
『ハカセ……』
「……とにかく、予定を変えるつもりはない。この話は二度とするな」
《沈黙》
「わかったのか?」
『……オーケーです』
「とにかく、あいつらの仕上がり具合はいい、予想以上だ。それこそお前のことのアーマー使わなくても死なずに戻って来たんだ。あと2、3デカい悪魔を狩れば十分だろう。そっちの準備も怠るなよ」
『……もちろんデス。そのためにもアーマーのデータはきちんとお願いデス。そうしたほうが、あの子たちももっと強くなれマス』
「ああ、次からは気を付ける」
『……ハカセ、また今度遊びに行ってもいいデスカ?』
《沈黙》
「……あいつらに何か言ってみろ、殺すぞ」
『もちろん何も言いマセン。ただの友人として、デス』
「……あまり深く付き合いすぎるな。お前まで情がわいたらかなわん」
『ハカセ、アナタやっぱり……』
「切るぞ」
《通話終了》