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聖女ゴブリン 今日も嘆く  作者: 海光蛸八
御鬼上千晴 という悪魔
12/208

その①

「あびゃああああ!!」


 崩れ落ちてきた瓦礫の下敷きになる前に、私は横っ飛びに逃げた。あっぶなかったよ、今危なかった。危ない事なんてなんもないって言ってたのにあの嘘つき! 白衣! 猫背!!


「大丈夫かゴブ子ちゃん」

「そんなわけないじゃないですか!」

「お前はとびきり頑丈らしいから、瓦礫に潰されても大丈夫だってさ」

「大丈夫なわけな――!」


 私の口は恐怖で固まった。刀を弄ぶ彼女の背後に、こちらを睨みつける巨大な悪魔が見えたからだ。ゾウだとかキリンだとか、そんなスケールではない。明らかに異常だと分かる巨体。


「ご、御鬼上さ……」

「ん? ああ、こいつサキュバスなんだってよ」

「ごちゃごちゃと五月蠅い……」


 巨大な女悪魔はお腹に響くような重い声を出した。それだけで全身から嫌な汗が噴き出す。瓦礫の陰にこそこそと隠れる私に向けて、サキュバスは「醜いわね」と笑った。


「そうか? けっこう愛嬌あるゴブリンだろ?」

「いちいち癪に障る女……」

「そりゃお互い様」


 金属が擦れ合うような耳障りな音が響く。サキュバスの爪を刀でいなしたらしい。なんでそんなことできるんですか、体格が違いすぎるでしょうに。巨大なサキュバスもほんの少し動揺しているように見えた。


「しかしなあ、ゴブ子ちゃん!」

「へあっ!?」


 急に話しかけられ素っ頓狂な声を出してしまった。


「どうよコイツ」

「どうって……?」

「なんかイメージと違くねえ? サキュバスってなんかもっとこう、なあ?」


 言わんとしてることは分かります。なんかサキュバスってかわいくてエッチな感じですよね。でも、目の前の巨大な悪魔は西洋の彫像っていうか、なんというか……。


「なんか可愛げがないよなあ」

「まあ、言われてみれば」


 言ってしまってハッと口をおさえるが、時すでに遅し。巨大なサキュバスが頬をひくつかせている。眉は一気につり上がり、口元は歪んで牙が見える。怒らせた、もう駄目だこれ。


「そう思うよなあ、なんか夢が壊れるよなあ」

「貴女たち……ッ!!」

「コイツは衆目に晒さないほうが世のためってもんだ」

「楽には殺さないわよ……!!」


 目に見えるほどの殺気を放ち始めたサキュバスに臆することなく。彼女は手にした刀をぶんと一振りして、前へと歩み出た。


「安心しな、あたしは一瞬で終わらせてやるからさ」


 そう言って彼女は――御鬼上千晴ごきじょうちはるは笑った。


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