第四話 「ロリコン魔王、ブチギレる」
「ふっふっふっ……魔王よ、怖気づいているのだな?
それも仕方がないか。お前さんの死はすでに確定したようなものなのだからな」
ガハハハと笑い続ける勇者アレン。
俺はその筋骨隆々とした角刈りの男を見て、
少なからずイラつきを覚えていた。
勇者は俺の肩にポンと手を置いた。
「お前さんの胸に刺さっているこの剣は魔剣ブレイカー。ただの魔剣ではないぞ?
二つもの呪いの効果が付与された魔剣だ。
能力の一つは【魔法無効化】。
もう一つは【絶対崩壊】。
ふっふっふっ、この意味が分かるか?
そう! その傷はお前さんが粉々になるまでいかなる手段を用いても修復できないということだ!!」
勇者の言葉は止まらない。
「この魔剣を手にするために、俺が寿命を半分まで使った甲斐があったな……。
見たか魔王よ! これが人類の力だぁぁぁあ!!!」
勇者は高らかに笑う。スキだらけで。
そして、残念なことに俺の怒りは頂点に達していた。
沸々としていた怒りは、爆発してしまった。
「うるっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええ!!!!!!」
俺は大男の腹を殴った。
「ひぢぇぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!?!?!?」
おっさん勇者のあばら骨を粉砕した感触を手に残したまま、
俺は奴の首根っこを掴んだ。
そしてそのまま、魔王城の固い大理石の床に叩きつけた。
ドッガァァァァァアアアアアアア!!!
……。
…………。
……………‥。
大男が首から上だけを床から覘かせるというカオスな空間が出来上がっていた。
おっさんは目をぱちくりとして茫然としていた。
あまりにも起きた出来事が異常過ぎて、
何が起こったのか、まだ理解できていないのだろう。
俺は絶対に逃げられなくなった男の頭を手で押さえ、
ゆっくりと言葉を紡いでいった。
「別にいいんだよ、俺が死ぬなんてことは些細なことだ……。
なんかこの魔剣で刺されたときにちょっとソレは察したからもう良いんだよ……。
俺がムカついてるのは、貴様が、魔王である俺を殺そうとしている貴様が、
筋肉モリモリのおっさんだってことだよぉぉぉぉおお!!!」
「…………は?」
チッ、
まーだ理解できていないようだ。
マッシュだったら「はい? あーー……はい!」と完璧に納得してくれるというのに。
やはりいかん。
おっさんなどでは駄目なのだ。
臭いしむさ苦しいし、おまけに理解力も下がったジジィに価値はない。
(俺を殺すのは……幼女じゃなきゃ駄目なんだっっ!!)
……そう、だから俺は命が懸かったこの場面で、ある実験をしようと思う。
俺のスキル【ロリ属性付与】を、初めて人間に使ってみるのだ。