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第三話 「ロリコン魔王、勇者に刺される」

 

 会議室のある二階へ進むため、階段に足を踏み入れたとき、

 俺は何となく違和感を覚えた。


 そして、その違和感は数秒後には現実のもとなって現れていた。


 三階から二階へと続く階段。

 その折り返し地点では、大きなガラスの窓が光を反射させていた。

 教会の窓のように、虹色で施されたその窓が、一瞬眩く光って……、


 バリィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!








 割れた。











 ―――



 もちろん、俺は窓が割れるその前に、その気配……いや、殺気に気付いていた。

 虹のガラスをすり抜けて目を凝らし、

 敵が剣を振りかざしていることを、俺は見抜いた。



「防護魔法・物理絶対防御結界(リアルキャンセラー)!!」


 防護魔法における最上位魔法の一つ、

 物理絶対防御結界(リアルキャンセラー)を、俺は無詠唱で展開した。

 この魔法は剣や槍、投擲武器も含め、あらゆる物理攻撃を完全に無効化する。


(あっぶねー……防護魔法極めといて助かったぁ)


 敵が現れる直前、俺は完全に安心していた。


(あとは即死魔法で殺してしまおう)


 直感だが、敵と俺の実力差は歴然だ。

 この程度なら即死魔法で殺れるはずだ。


魔王城(こんなところ)まで来れたんだから、才能はあるのかも知らんが、

 俺だけじゃなく幼女を危険にさらそうとしたんだ。

 心苦しいけど、一回死んでもらおう)


 誰かを殺すことは嫌いだが、

 ここが戦場になることや、幼女に危険が降りかかることを考えれば、

 俺の手を少し汚すことくらいは我慢しなくては。


 ここまで考え、俺は空いた左腕で空中に魔法陣を浮かべていた。

 無論、即死魔法の魔法陣だ。


(なるべく苦しまないように、一発で……っと)


 準備を完璧にしていた俺は考えもしていなかった。















 俺が剣を胸に突き立てられるなどという想定外は。



「……ッ、ごぱぁっっ!!」


 俺は胸からせり上がってきた血を吐き散らした。


「魔王様っ!?」


 心配して駆けつけてくれる天使を俺は手で制し、

 即座に物理無効化と魔法無効化の結界をマッシュの前に展開した。


 そして、俺はすぐに自分が刺された現状の原因を突き止めた。


「魔法殺しの魔剣……か」


「ご名答。さすがは魔王といったところか」


 そう言って、眼前の金髪で屈強な男はニヤリと嗤う。


 俺の胸を貫いていたのは柄から刀身まで漆黒の剣であった。

 あらゆる魔法効果を打ち消す剣。魔法殺しの魔剣。

 物理完全無効化の魔法は、それによってなかったことにされたというわけだ。


 ん? いや……そんなことより。


 俺の名前を知っている?

 馬鹿な。俺の顔を知っているのは、この魔王城にいる部下たちだけだ。

 俺の正体は機密に守られているはずなのだ。

 ……例外があるとすれば、それは……。


「貴様、誰だ?」


 俺が問うと、男は剣を俺の胸に押し込みながら答えた。


「我が名はアレン・グレンヴィル!! 勇者である!!」




 な…………に?




 俺は絶句した。

 確かに、勇者選定の儀において、勇者は魔王の姿を先代の記憶から見ることとなる。

 だから、奴が勇者であることは嘘ではないのだろう。


 だが、俺は驚愕した。驚愕した上で絶望した。

 相手が勇者にしてはちょっと弱すぎるからとか、そんな理由ではない。


「勇者が……ロリではない、だと……」


「……は?」


 勇者が魔王を刺し殺す。

 この構図において、勇者が決意に満ちた表情をした金髪ロリ剣士であることは絶対だ。


 絶対、なのだ。

 そのはずなのに…………




「おっさんじゃねーーーーーかっっ!!!」




 ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!




 俺の悲痛な叫びが、魔王城に響き渡った。


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