夢3
「村が‥燃えてる」
まだ少し遠くに見える村からは黒煙と炎
そして人と、人ならざる者が戦っている様子がみえた。
「魔……魔物に‥‥襲われ‥‥て‥いるんだ
ど‥‥どうすれば‥」
どうすればわからず、その場に立って呆然としていると、そこにGが追いついてきた。
「おいおい、俺を負いて行くなんて酷いぞ。泣くぞマジで、大人のマジ泣き見たことある??引くよ〜あれは、マジでって
村燃えてんじゃん!よく燃えてんな〜
あぁ魔物に襲われてんのか。
あの感じだと、まぁ村人は全滅だわな。」
固まっている、いる子を無視して
Gはどんどん話を進めて行く。
「よし帰ろうか、村はなくなってました
ってセレナに伝えて、任務完了だ。
大丈夫だって。あいつがキレてきたら、
俺もキレ返すから。
だいたい、前からあいつは俺たちの事
こき使い過ぎだと思ってたんだ。
これを機会にガツンと言ってやる。
ほら、帰るぞ。」
そう言って来た道を引き返そうとGが歩き始めた時、
「なんで!?」
いる子が叫んだ。
「Gは‥Gは何も‥思わ‥‥ないの?
目の‥前で人が‥‥襲われて‥‥いるのに。
まだ‥‥間に合うかも‥‥しれ‥‥ないの‥‥に。
助け‥‥られる‥かも‥しれない‥命がある‥のに。
Gは‥‥何も‥思わ!!」
彼女は次の言葉が出なかった。
なぜなら先程まで少し遠くにいたGが
いきなり近くに現れたからだ。
恐ろしさすらある怒気を纏った、
まんべんの笑みで
Gの手が、いる子の肩に置かれる。
「いる子、何か勘違いしてるようだから教えといてやるけど、俺たちはヒーローでも無ければ、ましてや善人でもない。
あの村に知ってる奴もいなければ、ましてやあの村に恩があるわけでもない。
だからわざわざ危険なんて犯して、
助けなくたっていんだよ。わかるよな?」
「で…でも」
いる子は、それでも何か言おうとするが
「いる子ぉおおお!なんでわからねぇ!
この世界じゃあな、あんな光景なんて
当たり前に起きてる事なんだよ。
命なんてすぐ消えてなくなるもんなんだよ。
だから他人より自分を大事にしなきゃ生きてけねぇんだよ。」
殺されてしまいそうな迫力に、いる子は恐怖を感じながらも涙を流しながら言った。
「でもG‥…は…私を助けて……くれた。
あの…地獄から…助けてくれ…た…
じゃあ…なんで私を…助けたの?…
おかしい…よ?ねぇ…なんで?」
涙を溜めながらいる子は、Gを見つめる。
その瞳に耐えきれなくなったのか、
Gはいる子と距離をとった。
「ただの気まぐれだ。いる子の為じゃ」
「それでも…私は救われた」
Gの言葉を遮り、いる子はGを真っ直ぐに
見つめ続けながらそう言った。
「…………わかった。
わかったからそんな目で俺を見るな
全く、いる子にはそんな目で見られ続け
頭の中ではみんなが騒ぎ立てる。
はぁ〜こりゃ厄日だな」
Gは深いため息を一つ吐くと
「村ではまだ戦闘が行われていて危険だ。
俺が行くから合図があるまでは、いる子は
ここにいろいいな。」
Gはガントレットを装着しながら、足のストレッチを始める。
「G‥…あり…がとう」
いる子の感謝の言葉に
「全くだ」
悪態を吐き、Gは村に向かって走り始めた。