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⑼『小説の語法について』

⑼『小説の語法について』



言葉を操る者にとって、一番大事なのは、言葉に飲まれてしまわないことだ。換言すれば、言葉の渦の中に入るのではなく、言葉の渦を客観視することなのである。渦から、言葉を拾い上げ、文章の力点として、作用するように使用するのである。



しかし、客観視とはいっても、中々自分が言葉の渦に飲まれていることに気付かない時もある。それはそれで、主観的な言葉の渦が出来るから、一旦はその中で、試行錯誤してみるのも一理ある。煮詰まった所で、客観視に戻れば、随分収穫のある言葉達が、自己の物になる訳だ。



語法としては、この渦を中核にして、小説を発展させていくことが、何より重要だと思われるのである。言葉が出てこなくなったら、それは一種の危機なので、言葉の渦に近づいてみるのが上説だろう。何れ、小説が出来上がった時に、精神の中には、その渦が渦巻いているのかもしれない。

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