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⑺『小説の語法について』

⑺『小説の語法について』



観念から現実へと人間は向かうのに対して、小説は現実から観念へと向かう。この両極に支えられ、小説家は均等を保とうとするのである。何か難しいことは、段々と消失していくのだ。或る発想、というものを掴まえたが最後、小説家は、執筆に明け暮れる。



言葉の語法のことを考える時も、人間はその深淵までは理解しないし、判断できない。しかし、人間はこの無意識を糧にして、日々を普通に過ごしていく。小説家は、まさに、その無意識の糧を拾い、小説として具現化する訳であって、それは訓練を伴えば、自ずと簡単になる。



何かに後を引かれるように、小説家は生きていく。現実の幸せを消失した時、その消失の有り様を、文章にするのである。誰も介入出来ないカテゴリーの中で、病魔の様に、生き生きとした小説は、その先を見通さずに、遥か彼方へと、思いを巡らすのである。

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