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⒀『小説の語法について』
⒀『小説の語法について』
㈠
何かを通り抜けて、新しい世界へと進む時、確かに小説は、架空を超えて、現実的世界での役割を果たすことになる。それは、その瞬間は、小説を書く必要がなくなったということだ。語法をも超えて、言葉が言葉となって空位を彷徨い、解放される。
㈡
しかしまた、その現実的事象から、その現象を続けるという目標ができた時、今度は役割を果たした言葉を、小説として観念に蓄積しなければならない。別段、言葉で執筆しなくとも、覚えていられるのであれば、記憶しておけばそれで事は澄むのである。
㈢
こういう波の様な現象を見る時、語法とは、その低海で、物事の現象を支えていることに気付かされるのだ。当たり前のように人間がこなしている、この語法は、言葉にすればする程、危うくなる。つまりは、言葉の推移を語法に置き換えれば、文章として成立している文章も、語法無しには語れないのであろう。




