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最新鋭のバイクで知られていない部分。フロントフォークで一般的になりつつある機構。

技術革新というのは目に見えていない部分からすでに始まっているということがある。
筆者からすると割と最近では当たり前だったことが当たり前だと思われていなかったので、今回の話を書いてみた。

ことの始まりはZ900RSというカワサキが満を持して登場させたバイクにある。
このバイクはかつて伝説と言われたZ1を参考にそれを現代風に復活させようと試みたものだ。

ただし、本当に現代風で、リアサスペンションはシングルサスペンションで、倒立式フロントフォークを採用している。

ここまではいい。

問題はZ900RSにはリアをツインサスにする事も試みられていて、そこで開発者が触れた説明を理解できない者が多かったことだ。
開発者が間違った主張をしていると思っている者がいるらしい。

開発者は「リアをツインサスにすると3本のサスペンションとなり、極めてアンバランスな仕様になる」と言っていた。

これに違和感を感じたライダーが少なくないことに筆者は逆に違和感を感じたのだ。

これは実際に調査をしたわけではないが、例えば「バイクといったらサスペンションは何本ある?」という問いを投げかけて、ライトなライダーに年代別に答えを求めた場合下記のようになると思う。

50~60代ぐらいの者は「やっぱ4本だよな。我々の時代には4本が基本だったし」と
30~40代ぐらいの者は「今の時代3本だろ!」と言うはず
上記年代の極一部はド変態仕様の独自サスペンションを列挙するかもしれないがそれらはライトなライダーとは言えないので除外する。
10~20代も「3本?」と言うかもしれない

しかし現役ライダーでも特にカワサキにご熱心の者ならこういう。

「は? 前後で2本だろ?」と。

ライダーでない者は全く知らないが、実は最新のフロントフォーク、いわゆるバイクのフロントサスペンションは2本のパイプによってフロントホイールと接続されているが、実は「バネは1本」しかない。

つまり開発者が主張したのは「リアサスを2本にするとフロントフォークが1本なのでバランスが悪くなる」と言いたかったのだが、フロントフォークのバネが1本なのを知らない者たちは「お前は一体何を言っているんだ」とSNS上などで主張していた。

このようなバネが1本のフロントフォークを「セパレートファンクションフロントフォーク」と呼ぶ。
構造としては「マフラーが存在する側」に「バネ」を、マフラーが存在しない側に「従来のオイルダンパー」を設け、2対で1つのサスペンション機構とするという外観からは想像も出来ない仕様となっている。

この機構の弱点としては「片方が破損すると事実上機能しなくなる」というデメリットはあるが、「片側が破損する状況ではもう片方も高確率で死んでいる」と思われるので殆どデメリットにはならない。

最新鋭かつ技術革新の末に至った存在であり、カワサキの倒立フロントフォーク車両は8割以上がこの機構を採用。
カワサキを中心に他メーカーにも採用されるようになった。

このセパレートファンクションフロントフォークの話の前に、少しだけ昨今のフロントフォーク、つまりバイクにおけるフロントサスペンションの状況について触れなければならない。

まず現代のバイクには「正立フォーク」と「倒立フォーク」というものがある。
BMWを除くとほぼ大体のバイクがフロントにおいてはこのどちらかを採用しているといって良く、それ以外を採用する例が珍しいぐらい一般的な機構である。

正立フォークというのは「テレスコピック式」と呼ばれるフロントサスペンションの方式の1つ。
これらについてはwikipediaでも見てもらえればと思う。
倒立式はこの機構を反転させたものだと思ってもらっていい。

基本的に正立フォークは古くから存在する機構で、枯れた技術であると言える一方、倒立フォークはレースで採用されたのも1990年代前後からで、割と新しい部類の機構である。

特に市販のバイクに採用されるようになったのは割と最近であるが、機構としては倒立の方が最近では採用事例が増えてきている。

その採用事例が増えた理由こそ「セパレートファンクションフロントフォーク」の登場によるものだった。

ちなみに「セパレートファンクションフロントフォーク」は基本的に正立フォークでは採用できない。
というか極めて採用しづらい仕様である。

理由として倒立フォークの場合、フロントサスペンションの部分にあたるフロントチューブを太くできるのだ。(ついでに言うとバネの長さ自体も長くしやすい)

ようは「フロントチューブを太くするなら、その中に収まるバネの大きさも大きく出来る」=「バランスさせ調節できるならバネ1本で良い」という考えに至り、登場した構造なわけで、

「アウターパイプが細い」=「太い、大きいバネを採用できない」正立フォークでセパレートファンクションにする場合は、現段階だと重量の軽い「125cc以下」のバイクにしか採用できない。

この結果正立フォークと倒立フォークでは逆転現象が起こった。

これまでの倒立フォークの場合「部品点数が多い」などにより「コストが高くなる」「オーバーホール費用が高くなる」など様々な弱点があったために一般車に採用するのは難しかった。

それがアジア諸国の安物バイクどころか「スーパーカブ」にすら採用可能な状況となったのは、上記の機構が「導入コスト」「維持コスト」の双方を含めて「正立フォーク」という存在を上回ったからだ。

バネは1本しかなく、ダンパーも1本しかないのでオーバーホール費用は完全に正立フォークより安くなってしまった。
「正立フォーク」+「ツインリンクサスペンション」で合計4本のサスペンションを持つネイキッドバイクに長年乗ろうものなら毎回サスペンションのオーバーホール費用などに泣かされることになるが、最新の倒立フォーク採用車ではそういう部分が緩和されている。

そのため、グロムやZ125などのように125cc前後でもスポーツ走行を考えたものだと倒立フォークを平気で採用するようになってきている。

というかタイ、フィリピン、中国などのアジア市場で展開されるバイクはよほどの安物でなければ大半が利点が多く弱点が少ない最新鋭の倒立フォークである。

特にこの機構に熱心だったのは川崎で、カワサキのバイクで倒立フォークといったらほぼ間違いなくこの機構である。

外観は左右対称なのであたかもバネは2本あるように感じ、前2つに後ろ1つの3本で成立しているように思えるが、実際は前1本の後ろ1本の2本で成立していたのだ。

これをSNS上などに存在するライトなライダーは認知していなかった。
そのためにプチ炎上を起こしてしまったのだった。

正直言うとセパレートファンクションなんてそれこそ「カワサキか……」の代名詞みたいな構造なのに、どうしてこんなに認知度が低かったのだろう。

そこにはやはり、自分が乗っているバイクの構造がどうなっているかなんてどうでもよくて、外観の状態からなんとなしに判断してしまう日本人の性のようなものが影響しているのだろう。

ところで余談だが、筆者は倒立と正立どちらが好きかといわれたら、断然倒立フォーク信者である。
理由としては、正立フォークにおける弱点によるものだ。

1.今やオーバーホール費用が倒立フォークより高くなってしまった。
2.極めて汚れやすく、インナーチューブの防錆管理などが面倒。(なぜか正立フォークのインナーチューブは未だにメッキばかりなのだが、倒立フォークは基本ステンレスのため錆びにくくおまけにインナーチューブをフロントカバーが覆う構造が基本であり極めて汚れにくい。

一応言うとフォークカバーなる存在が正立フォークにはあるものの、フォークカバーがあるとメンテナンス性が下がるので正直かったるい……というかなんで正立フォークのインナーチューブがメッキなのか誰か教えて欲しい。(ステンレスと比較して重量も重いし錆に弱いしどこがいいんだろう?)

3.圧倒的な整備性の良さ。
上記に付随しているが、正立フォークの場合、インナーチューブはハンドル付近まで及ぶ。
つまり1m弱の剥き出しのメッキパイプがあるわけだ。
これをピカピカのまま維持するというのはきわめて難しい。
虫が付着すれば気づいたら錆発生みたいなレベル。
一方で倒立アウターチューブは全体の8割以上にも及び、ハンドル部分からインナーチューブのあたりまでアルミや銅などの極めて錆に強い合金が使われるので正直適当に放置しておいても「錆びる」なんてことを気にしなくていい。

4.やっぱり最新鋭という言葉に弱い。

このような理由によってやっぱり倒立フォークである。
似たような理由によってアジア市場でも倒立フォークが支持されているが、筆者が好きなホンダはなぜか「正立フォーク大好き」メーカーだったりする。

ただしそれは国内の話。
中国を見てみると「CB190R」なんかは完全に倒立フォーク、タイから輸入されてきたグロムなども倒立で、あっちでも倒立の方が支持されているのがわかる。

さすがのホンダも昨今の倒立フォークの進化によって目覚めたのか、最新のバイクは比較的倒立フォークの率が高くなってきた。
そりゃコストが下がってきたら採用するわなと。

コスパ重視のスズキが採用しまくってる点からしてもそういう時代なのだろうということは断言できる。

さて、ここまで説明すると、とあるバイクのフロントフォークが4つもある理由が見えてくるかもしれない。

2017年11月に公開されたヤマハの3輪バイク。「Nikenナイケン」である。
yamaha nikenとかで検索すると出てくるゲテモノだ。

これが公開された当初、SNSや掲示板などでは「なんでフロントフォークが4つも必要なんだ?」というコメントがかなりあった。
2本でいいだろうと思う人が多かったらしい。

これは当然Nikenに採用されているフロントフォークがセパレートファンクションだからである。
セパレートファンクションフロントフォークは2対で1つなのだから、タイヤが2つあれば4本必要になる。

ではなぜあえてセパレートファンクションなんて構造を導入して「4本」にしたのか。
重量的になんら利点がないように思える。

それは簡単だ。
「コストを下げるためにYZF-R1のものをそのまま採用したから」だ。

アレのためにわざわざ特別なモノを独自に作るなんてことをヤマハはしない。
「Niken」は既存のパーツを大量に流用しまくっている車体であり、車体価格は現実的なレベルに落とされるといわれているが、フロントフォーク1つだってコスト増大の要因になる。

だから「そのまま利用するために結果的にフロントフォークが4本」という構造になった。

決して「重量を支えるのに2本だと問題がある」とかそういう事ではない。
むしろ4本の方がバネ下重量軽減などにおいてデメリットしかない。
ヤマハは「本気でこいつをYZF-R1より安く売りたい」からああなったのだ。

「Niken」の内容を見てみれば一目瞭然。

「チェーンドライブ」
「マニュアルトランスミッション」など、コスト軽減対策が大いに施されている。

筆者からすると「せめてスーパーテネレのシャフトドライブ流用しろよ……」と思うのだがそれすら採用しなかった。

それだけ「売ることも考えた開発者のオナニーではない」存在なのである。
だからこそあのバイクは面白いのだ。

最後に4本のフロントフォークということでとあるバイクについて語って締めくくりたい。
1988年に出てきた世界でも有名なバイクの存在だ。

AKIRAの金田のバイクである。
劇中、4本のフロントフォークを持つバイクは2台あるのだが、なぜか金田のバイクは「4本の正立フォーク」+「テレレバー(BMWが採用している方式)」とかいうド変態すぎる仕様である。

筆者が何を考えてそんな仕様にしたのかは不明だ。

「いやあの頃のバイクの状況だと200馬力とか考えたらそういう風に至るのでは?」と思うかもしれないが、他の仲間の連中は「倒立フォーク」を幅広く採用しているあたり、無類のバイク好きである作者兼監督の大友先生があえて採用したとしか思えない。

ちなみに4本フォークのもう1台はクラウンのリーダーの乗るアメリカンバイクである。
こいつはなんと「4本の倒立フォーク」という「Niken」仕様。

というかアニメ版の設定を見ると「セパレートファンクション×2では?」と思ってしまう。
装着図と色分けが明らかにそれを彷彿とさせるのだ。
倒立フォークが出始めたばかりの1980年代の段階で漫画にもアニメにも「2019年の世界のバイク」という設定で出してしまう作者は預言者か何かとしか思えない。

一応、クラウンのリーダーは劇中屈指の技術力と技術知識を持っており、漫画版でもアニメ版でもその設定は変わらないらしいのだが、アニメ版だと殆ど出番はないものの、2019年の設定の世界の中で彼が4本の倒立フォークを採用した理由はそれになりに理解できなくもない。

一方で「4本の正立フォーク」+「テレレバー」を採用している金田のバイクは一体なにを思ってそんな仕様にしたのだろうか。

もし私が鉄雄なら「ピーキー以前にそのバイクの維持費いくらすんだよ?」って言うかもしれない。
何しろ金田のバイクはリアサスペンションも×2なのだ。

これ劇中平気で振り回してるが、あのバイクの重量も相当なものではないのか?

なんというか、一度どうしてそんな構造にしたのかを大友先生に是非聞いてみたいなと思う今日この頃である。

ちなみに大友先生が預言者としか思えないものの1つに金田のバイクに張られたステッカーも挙げられるる。
「Shoei」と「Arai」のステッカーが実は張ってあるのだ。

ノーヘルで乗ってる癖にヘルメットメーカーのステッカーを貼っているというのが実に皮肉たっぷりで面白いが、当時ヘルメットメーカーは他にもいくつもあったのに大友先生は「2019時点でも生き残っているだろう」ということでその2社を採用したらしい。

実際生き残ってるばかりかShoeiなんて世界でもかなり評価されるブランドに成長したという……あの頃倒産しかけていたのにどうしてそれが予見できたのかサッパリわからない。

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