花火大会
「え?花火…大会?」
キョトンとしている彼女。
あ、そうだ。
「ちょっとゴメンね?」
そう言ってポケットを探った。
――プルルプルル―――
ガチャ
「もしもし?ごめん、今日一緒に行けないや。」
電話の相手にそう伝えると、
「は?マジかよー、OK分かった。」
と返ってきた。
悪いなと思ったが仕方がない。あの子を1人にする訳にはいかない。
「行こう。」
彼女の手を引いて東京駅に向かった。
***********
心地よい電車の揺れに眠たくなる。
―次は、横浜、横浜――
ハッとなくなりそうな意識を戻し彼女の顔を見た。
彼女は寝ていた。よほど疲れたんだろうな。
そう思うと申し訳ない気持ちになった。
……、初めて見た時から思ってたけど…、この子…かなり可愛い。
艶のあるストレートの髪。肌が白いからとても似合う。
睫毛も長いし、目も大きくてクリクリしていた。
身長は160cm位?
とても華奢だ。
すやすやと寝ている彼女に優しく声をかける。
「着くよ。」
「……ん。あ、すみません。」
その時、ちょうど駅に着いた。
「行くよ。」
*********
ザッザッザッ
「あの…」
「ん?何?」
「人、全くいませんよ?それにここ…立ち入り禁止…」
今、僕達は人気のない海辺を歩いている。
「いいんだよ、ここにするか!」
「……?」
「あ、大丈夫、レジャーシートひくから。」
そうして、レジャーシートに腰をおろした。
「花火大会の会場はここじゃないけど…まぁ追々分かるよ。」
暗く闇に包まれたこの海辺。
「私…」
ヒュー、ドォンッ!
「始まった…。」
闇に包まれているこの場所を照らしてくれる花火。
夜空に咲く花火。それは耳に聞こえる炸裂の音と一緒に、夢のようにはかなく、一瞬の花を開いて、空の中に消えていった。
風が火薬の匂いを運んでくる。また、ここは闇に包まれた。
「終わっちゃった…。」
ポツリと呟いた彼女。
そうだね。と言おうとすると、
「私ね…帰る場所が…ないの。」
そう言って彼女は涙を流した。
ヒュー、ドォンッ!
…まだ、終わってなかった。
彼女の顔を見ると、
泣きながら…笑顔だった。
横顔が…美しかった。
そして酷く悲しかった。彼女の横顔を見ているとふと、違和感を感じた。何を見ている?
僕はそう聞けなかった。いや、声を出せなかった。
そして出した言葉は、
「僕もだよ。」
だった。
「え?」
とハテナマークを出す彼女。
「それはこれから分かるよ。」
と笑って流す。
「ありがとう。」
彼女が初めて心から笑ったような気がした。嬉しそうな表情だったから。
くしゃっとした笑顔。
その笑顔を見ると僕の心にじんわりと温かいものが広がった…。




