表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/19

"花凜"

「殺し……た?」



かぐやの表情が一気に凍りつく。


「あれは、中学1年生になった頃の夏。」



【連斗中学1年生】



「花凜。」




「なぁに?」




「今年の花火大会、行く?」




「あ、ごめん。友達と約束…しちゃった…。」


悲しそうに顔を歪めてそう言う彼女。


「そっか。じゃあ良いや。龍と愛菜と行く。」



冷たく言い、誰もいない教室を出る。



タッタッタッ



「連斗!」



「花凜?何?」



「友達と行くなんて嘘!ゴメンね?」



そう言って俺の顔を覗きこむ。



「……///!ま、紛らわしいことすんなよ…。」



「ねぇねぇ、寂しかった?あれ?顔が赤いよ?」



「う、うるせぇ!帰るぞ。」





里田花凜


花凜は俺の幼馴染み。


勉強は出来ないが、性格は良いし、見た目もまぁ、可愛い………と思う。



親は俺が小さい時にもう死んじゃって、花凜が家族みたいなもんで気がつけば隣に居て笑っていてくれた花凜が好きだった。



でも花凜は俺の世話係みたいであっちは全然気づかない。


中学生になって大人っぽくなって雰囲気も変わって見たことない人みたいで花凜が遠くなっていく気がした。



綺麗なオレンジ色に染められた道を歩いていて、


「なぁ、花凜。



俺が"花凜のこと好き"って言ったら、どーする?」



素直にそう思って聞いてみた。


「え?


……やだなぁ、からかわないでよ!!」



「……チッ。これなら引っ掛かると思ったのになw」



鈍感過ぎる…。



そんな風に喋りながらいつも帰っていた。



――花火大会当日――



「「ごめん!遅れたー!」」



「遅い………。え?」



「な、何か変?」



「別に……。」



愛菜と花凜は浴衣姿だった。


もちろん、今までも浴衣だったけど何か今回は雰囲気が違う。



「花凜、可愛いな?」ボソッ



「……!うるさい龍」



「まぁ、俺には愛菜の方が可愛く見えるけどw」




「何話してんの?」



「ほらッ!二人とも、早く行こ?」




それから、皆で金魚すくいやったり焼きそば食べたりして楽しんでいた。



「もうそろそろ花火始まるね!」



嬉しそうな笑顔を向けられると自然にこっちも笑顔になる。



「うわっ!!!」



「キャアッ!!」



人の波によって、俺たちは別れてしまった。



「連斗!?良かった、連斗と一緒で!」



「花……愛菜。」



「あからさまにガッカリしないでよ…。」


「ごめん…うわっ!?」



突然後ろから押され、



「ちょ、連…斗…近い…///」



あと少しでキスしていまいそうな位愛菜に寄ってしまった。



離れると妙に視線を感じた。



「キス…したって思われてますね。はい。」




「花凜にバレなきゃいい。探すぞ、……!!!」




神様は何て酷いんだろう。



視線の先には今までに見たことないくらい悲しみに満ちた顔をした花凜がいた。



俺と視線があうと背中を向け走った。


「……っ!!」



すかさず俺は追いかけた。



「花凜っ!!」



呼び掛けても止まらない。



「おい、花凜!待てっ!!」



花凜は降参したのか暗い人のいないところで止まった。




「花凜…。」



空気が死ぬほど重い。



「愛菜と上手くいって良かったね?」



明るい声を出そうとしているが震えている声。


暗くて表情は分からない。



「…何言ってるの?」



「え?連斗?」



明らかに怒ったような低い声を出している俺に驚いているようだった。


「愛菜は幼馴染みじゃん。俺、恋愛的な感情で愛菜のこと見たことないし。




―――花凜以外みたことない。」



「―――っ!!」



「花凜。ずっとずっと好きだった。」



「……。じゃあ何で愛菜とキスしてたの?!」



初めて花凜が感情を高ぶらせたのをみた。



「それはちゃんと訳があるから、聞いて?」



そう言っても花凜は落ち着かない。



「う…っ、うぇぇ―ん…」



花凜が泣いた?



花凜はいつでも笑顔で…


花凜を泣かせたのは誰?



「俺…だ…。」


気がついたら花凜をきつく抱き締めていた。



「離して!」



そう言われて俺は…


「分かった。」



………離してしまった。



「私も連斗のことずっと前から好きだった。

でもでも…。



―――ムリだよ、」



そう言われた瞬間頭を殴られたようなショックが全身を貫き声を失った。



花凜はまた走って行ってしまった。




やっと体が動いた時だった。




「キャアァーー!」




瞬時に花凜だと分かった。




「花凜っ!!」



考える間もなく走り出した。


風のように。




確かこの先は……!!


嫌な予感が頭をよぎる。



「花凜っ!花凜!」



まさか!!?





予感は…




当たってしまった。



先ほどのショックより更に大きいショックが心に襲ってきた。



ここは崖だった…。



下は砂浜だが高さはかなりある。



人が落ちたら……



即死するほど。



「うわぁぁー!!」

狂ったように叫び、すぐに下に降りていった。



花凜の側に寄る。


「花凜?」


手を握ると、


ギュッ



弱い弱い力で握り返した。


「っ!!!」


「連……斗?」



「そ…そうだよ。ごめん。ゴメンね、花凜。」



「泣か…ないでよ…だ、大丈夫だから……ね?」



「愛菜とは何もない。花凜がずっと、好き……だから……っ」



「ねぇ、連斗?


ずっと…」



そして花凜は目を閉じた。



暑いのに、花凜は、冷たい。




花凜は………













いなくなってしまった。





全部俺の…せいで……。



『連斗のせいじゃないよ。事故だよ事故。』





何回そう言われただろうか。




そう言われるたびにまた1つ、また1つ、俺の心には消えない傷が出来る。




あの時、花凜を離さなければ……。



離さないで、ちゃんと話せば。




花凜は今でも、俺の隣で笑っていてくれただろうか?




花凜のあの太陽みたいな笑顔が大好きだった。



でも…俺が花凜を…



―――殺した。




*********




「それからはショックで食事もまともに出来なくて、外に出なくなって、



それから、花凜との幼い時の思い出も家族との思い出も…





なくなった。」


ケロッとした懐かしいなー、という感じで話していた。


「っ!!?」



「中学1年のこの記憶がかろうじて覚えていること。」


最後に花凜は何を言ったんだろう。


「……ズッ!!」



見るとかぐやが泣いていた。



「記憶が…なくなる…?だって、それって…。」




「っていうか、忘れたかったんだろうな。昔を。


花凜を傷つけた自分も嫌な思い出も…。全部全部。」




またかぐやをみると、



「怒ってる?」




泣きながら怒っていた。




「そんなに…どうして強がりなの!?


そんなに辛いことをどうして、軽いことみたいに言うの!?」



家族でも親友でも恋人でもないかぐや。



この関係は、何だろう?



「かぐやに関係、なくない?」




あ、ヤバい。言い過ぎた?



「関係ないよ…。

関係ないけど……さ……


連斗には笑顔でいて欲しいんだよ…!」




懐かしい…。



花凜といるみたい。



花凜は僕がいくら突き放しても側にいてくれた。



だからかな?



かぐやに少しだけ、花凜に抱いていた感情を抱いたのは。




「笑顔…。



ん、笑顔か…。」




何だか心の中で気持ちに区切りがついた。



「ねぇ、連斗?


ずっと…、笑っててね?」




その言葉を聞いた瞬間。



今まで忘れていた記憶が、頭の中を駆け巡った。


全身に血が巡るように。


そうだ、花凜は最後に、"ずっと…、笑っててね?"って言ったんだ。




「うん。"俺"ずっと笑ってるから。


側で見ててね?かぐや。」




「ずっと……、か…………。」




かぐやは悲しそうに微笑んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ