私と彼と、ビスケットのはなし
私と彼と、ビスケットのはなし
【主な傾向】オリジナル
【厳重禁止】無断転載、無断転記、無断引用、無断使用
彼の第一印象は
コイツ馬鹿だな
見た目も発想も
馬鹿だと思った
【私と彼と、ビスケットのはなし】
お腹が空いて
イライラする
こう言う時に限って
お菓子ポーチ不携帯
ポケットにはのど飴ひとつ
家までの道のりは一時間半
(もたない…倒れる…)
バスを降りてコンビニに行きたい
でも降りてまた乗るの面倒くさい
寝たら気が紛れるかな
後ろの広い席に座ろう
多少行儀悪くしても
機嫌が悪いんだから
今日だけ大目にみて
明日からしないから
許して
お願い
私に構わないで
お気になさらず
放っておいて
機嫌が悪いの
「君 可愛いね!隣良い?」
私に構うな放っておけと言った傍から
大変頭の悪そうな男に声を掛けられた
秀才校とは違った意味で
話題となっている学生服
狸寝入りを決めた私の直ぐ左隣
大変頭の悪そうな男は腰掛けた
「名前何て言うの? 何年生??彼氏いる???」
目を瞑る私に質問攻め
勿論会話する気はない
寝たふり
狸寝入り
聞こえないふり
気付かないふり
そのうち諦め離れるか
痴漢行為をして来るか
変な事をするようなら
大声と共に蹴り飛ばす
そう意気込んだ直後
腹音が野太く上がる
グウウウウウウ
「…」
とうとう鳴った
このタイミング
人が至近距離にいる今
鳴らなくても良いのに
知らない人だから
余計に恥ずかしい
グウウウウウウ
だから
鳴るな
あと少しで家でしょう
もう少しで家でしょう
鳴るな
鳴るな
鳴るな
鳴るな
鳴るな
鳴るな
鳴るな
鳴るな
グウウウウウウ
「…」
「腹減ってんの?」
この男少しは察しろ
他の席へ移りやがれ
「俺 食うもん持ってるよ!木野からお菓子貰ったんだよなぁ~!!」
何だと
寄越せ
菓子を寄越してから席移動しろ
そんな悪態を心に薄目を開ける
男をチラリ盗み見
やはり頭悪そうだ
こう言うちゃらんぽらん系男子に助けられる日が来ようとは
県内トップ3に入る進学高校二年生首席クラス委員長の私が
世の中は時々想像しなかったような
予想外かつ不思議な出来事が起こる
「ビスケット! じゃーん!!」
じゃーんと勢い良く出されたところで
薄目開きの私には何にも見えないわよ
呆れつつ男がビスケットを渡して来るその時を待てば
何を思ったか男は取り出したビスケットを私ではなく
自身のズボンポケットへ
何故かしまい始めそして
ビスケットの歌を唄いながら
ズボンのポケットを思い切り
叩く
その
あまりの奇抜さに
思わず目を開けた
「ビスケットが~♪ 粉々!?何で!!?」
気持ち良く唄っていたその歌は
ズボンから取り出した瞬間絶叫
「えええええええええ!? 何で?増えてねえ!」
本当に叩けば増えると思ってた?
この男どんだけ頭の中メルヘンだ
現実問題粉々に決まってるじゃんか
これまでの人生経験で解るでしょう
「うっわ! まさかの粉々!!」
この男
バカだ
見た目も発想も
馬鹿過ぎでしょ
でも
少し
「っぶはっ…!」
面白い
この男
「あれ 面白かった?」
「ふっははははは!!!」
私とした事が完全にツボってしまった
バス内で大声を出すなんてお行儀悪い
ほら他の乗客も見てる
笑うの止めないとでも
「っは…っはははは!!!」
ダメだもう
止まらない
ちゃらんぽらんそうなこの男と
話してみたいだなんてそんな事
考える程
過る程に
私の中の今までの私が
こんなに簡単に崩れる
世の中は時々想像しなかったような
予想外かつ不思議な出来事が起こる
「粉々だけど食べる?」
差し出された粉々のビスケット
何となく男から受け取ったのが
私と彼の
はじまり