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 ある日の朝。

この特別支援学校の四年生でダウン症の少女、桐島 桃は

布団の中で眠っている真似をしていた。

本当は目が覚めている。

だが、ぬくぬくした布団に寝そべっているのが心地よくて出たくなかったのだ。

母親が階下から

「桃ちゃん。ご飯できたわよ。桃ちゃん。」

と呼んでいたが、気が付かない振りを続けた。

桃の部屋を覗き、その様子を見ていた父親は

「桃。あったかいお布団の中にずっといたから、おヒゲが伸びてきたぞ!」

と言った。

桃は産毛が濃いのをちょっとだけ気にしている。

むくっと布団から起き上がって座り、鼻の下を掌で隠した。

「のびてないもん!もも、おヒゲなんてないもん!」

 桃は一生懸命主張したが、父親は笑って言う。

「伸びてる、伸びてる。四万五千六百二十三本あるぞ!」

「ちがうもん!ママにそってもらったからないもん!」

「いや、あるぞ。眉毛だって一本に繋がってるし。」

 今度は掌で眉毛を隠した。

「つながってないもん!ちがうもん!」

「こりゃあ桐島 桃じゃなくて桐島 ぼぼだな?!おヒゲぼーぼーのぼぼ。」

「ちがうもん!ぼぼじゃないもん!!」

 そこに、母親の代わりに兄の檸檬が部屋を覗きに来た。

檸檬は中学二年生なので、桃とは若干年が離れている。

中学二年生にしてはクールで大人びた少年だが、妹の桃のことが可愛くて仕方がなかった。

「おはよう、桃。今朝も父さんと仲が良いな。」

 桃はまんまるのほっぺを更にふくらませた。

「なかよくないもん!」

「でも、父さんに起こしてもらったんだろう?」

「まだねたかったのにー!おきたくなかったのにー!パパがいじわるなの!」

 父親と兄は叫ぶ桃に苦笑した。



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