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私とあの子と槻山くんの49日間  作者: 雨咲まどか
隣の席の槻山くん
2/6

私の日記2


4/28 (日)

 世間はすっかりしっかり、憎らしいまでにゴールデンウィークだ。我が家は特に旅行に行くでもなく、出かけるでもない。こういう時はやっぱり、親が自営業をやってるのはなんだか寂しいな。まなみは今日は遊園地で五月は北海道へ行くらしい。私も連れてけ。


 そもそも、今年のゴールデンウィークはちっともゴールデンじゃない。認めない。

 さっきまなみから寿司の画像が送られてきた。ひどい。私の夕飯が味噌汁と野菜炒めだけだった当てつけか。魚か肉が食べたい。

 槻山くんはゴールデンウィークどこも行かないと言っていたなあ。仲間だ。遊びに誘ったら来てくれるだろうか。断られたら嫌だなあ。やめとこ。




4/30 (火)

 三日ぶりに会った槻山くんには眼鏡が付いていた。目が悪くなったらしい。私たちの席は後ろから二番目だから、確かに目が悪いとつらいだろう。

 少し恥ずかしそうだったので「知的な感じがしていいと思うよ」とほめてみたら、目をぱちくりされた。曰く、「安達さんには笑われた」らしい。まなみは相変わらずである。いいじゃない、のび太っぽくて可愛いじゃない。授業中しか付けないらしいけど。

 なんだか、授業中の楽しみが増えた気がして、大嫌いな火曜日も無事乗り越えられた。




5/1 (水) 晴れ

 槻山くんのお昼ごはんは毎日コンビニのおにぎりかパン。体によくないって、美波がおかずを分けていた。いいなあ……。

 美波は、私の姉妹きょうだいとは思えないほどいい子だ。もしかしたら、姉妹なんかじゃないのかも。けどじゃあ私って?

美波と槻山君は、本当によくお似合いだと思う。悔しいなあ。一度でいいから、私を見てほしい。……一回だけでいいから。





5/2 (木)

 明日からまた連休だ。四連休嬉しいな。どこにも出かけないけど。

 まなみにはなにか美味しいものをとねだっておいた。すごくホタテとか食べたい。

 今週は三日しかなかったけれど、楽しかったなあ。


 そういえば、槻山くんはスポーツが大の苦手らしい。男の子では珍しい。部活も書道部らしいし、文科系なんだなあ。

 一応籍だけ入れているだけの囲碁部はやめて、私も書道部に入ろうか。そもそも私、囲碁弱いし。お父さんに習ってルールだけ知ってるけど。むしろ、オセロ部とかあればいいのに。





5/3 (金) 曇り

 夜、また電話した。明日の夕方、二時間だけ会ってくれないかと頼んだら、了承してくれた。二時間。たった二時間だけど楽しみだ。どんな話をしよう。





5/4 (土)晴れ

 私服で会う槻山くんは、新鮮だった。けどやっぱり寝癖はついていて、槻山くんらしかった。

 夕暮れの公園で二時間ずっと座っていた。口が渇いて仕方ないから、私は缶ジュースをすぐに飲み干した。


 話したのは、ネコ派かイヌ派か。どこに旅行へ行きたいか。どんな小学校だったか。初恋はいつか。とか。

 けど一番面白かったのは、小学生の頃変わり者の男の子と友達になったっていう話。その子は槻山くんを連れまわして、学校も違うのに沢山遊んだらしい。今も仲がよくて、槻山くんの恩人なんだとか。

 槻山の話は驚くほど共感できて、私は槻山くんが私の目をみて笑った瞬間、私は存在してる、って思った。

二時間は、あっという間だ。





5/6 (月)

 びっくりなことにもう明日から学校です。どういうことだ。信じられない。

 まあでも、探偵小説を五冊くらい読んだから、大変建設的なゴールデンウィークだった気もする。それにしても、みんなあれ読みながら推理できてるのかな。無理でしょ。犯人わかったためしがない。当てずっぽうすら外れるし。


 なんだか、寝てばっかりなゴールデンウィークだった。寝ても寝てもまた寝てしまう。ちょっと怖い。でも一番怖いのは五月病。なんておそろしいのか。果たして私は明日からも元気に学校へ通えるのか。


 さて、明日の槻山くんはどんな寝癖だろう。それだけで学校にも行く気になるんだから、すごい。

 あ、まなみのお土産も楽しみ楽しみ。




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