2
俺は本を閉じた。どうも暗いと思ったら、もう陽が落ちていた。夕方から本が読めなくなる図書館はどうかと思うが、その矛盾は好きだ。
入隊してから六年目、大尉になった。閲覧できるようになった本も増えたが、肝心のカタリナを召喚する呪文がまだ分からない。佐官クラスか、それ以上にならなければいけないようだ。それでも駄目なら、外に探しに行くしかない。呪文が分かっても、カタリナを召喚するにはトゥーシャが必要な気がする。トゥーシャが絶滅してから六万年、カタリナは一度も召喚されていないから、多分現代人では駄目なのだ。更に昇進するにこしたことはない。
俺は本を持って席を立った。貸出手続は済ませてある。召喚の呪文は載っていないが、少しでも知識を頭に入れておきたい。暗がりの中に司書が一人だけいた。俺は図書館を出た。
靴音が響く。黒い窓硝子に廊下のランプと自分の姿が映っていた。図書館は寮から遠いので、この時間にここを通る人間はほとんどいない。通り道には会議室しかない。
俺は、足を止めた。来た道を振り返って、歩き出した。今しがた通りすぎた会議室の扉を開け放つ。暗い室内の床に、男が二人と、仰向けに口元を押さえつけられた、メイベルがいた。男達は俺を見て動かない。メイベルが、見開いた目で俺を見ている。
「部下に勝手に手を出すな」
男達が弾かれたように立ち上がる。歳は俺より若い。男の一人が何か言って、俺へ手を振りかぶる。俺は軍服の内側から銃を抜いた。男の喉に銃口をつきつける。男の動きが止まる。
「撃たれるか帰るかどっちかにしろ」
男は苦々しそうに顔を歪めて、後ずさりする。もう一人の男は俺の横を走り抜けて、外へ出ていった。銃を向けた男も背を向けて外へ走り出す。靴音が遠ざかっていって、俺は銃をしまった。
「申し訳、ありません」
小さな声が聞こえて、振り返る。メイベルが床に座っていた。見た所、何かされる前だったようだ。
「何があった?」
メイベルは目を伏せる。俺の方を見ない。
「大尉を探しに来たら、突然ここに連れこまれて、何で私が大尉の下についているのか聞かれました。大尉を失脚させる気はないかと言われて、ないと言ったら、力ずくでということで」
「何かされたのか?」
「いえ、それは、大丈夫です。本当に、申し訳ありません」
「あまり人気のないところを通るな」
メイベルは返事をして、もう一度謝った。俺は開きっぱなしの扉に手をかけた。
「俺はお前が裏切っても、したいようにするだけだ。だから自分の保身を優先しろ」
「私は私のしたいようにしただけです」
メイベルが顔を上げる。俺は笑った。
「それならいいが。メイベル、最後に頼れるのは自分だけだ」
メイベルは目を伏せた。
「寮まで送る」
メイベルは立ち上がって、小さな声で謝った。
入隊してから十年目の春、俺は大佐になった。戦場で味方の指揮官を事故に見せかけて殺すことにためらいはなかった。常に噂がついてまわったが、階級が上がるごとに表立って文句を言う輩はいなくなっていった。
ようやくカタリナを召喚する呪文を手に入れて、魔術師に試させたが、全員死んでしまった。やはりカタリナを召喚できるのはトゥーシャだけらしい。トゥーシャをここに呼び寄せなければならない。
隣国との休戦協定の期限が近付いていた。俺は会議で発言した。
「過去からトゥーシャを転送し、軍事兵器とすることを提案します」
円卓から失笑が漏れた。
「マグダラス大佐、物を言う時は一度考えてから言えと学校で教わらなかったのかね」
「仕方ない、大佐は我々とは育ちが違うのだよ」
笑い声が満ちる。俺の隣に座ったメイベルは、つまらなさそうにあさっての方向を見ていた。
「そんなに非現実的な案とは思いませんが。トゥーシャの魔力は魔術師百人分に匹敵するといいます。自我を奪って魔力を増幅する装置に組み込めば、装置を作るコストを考えても、大砲よりずっと安上がりだと思いますが」
「しかしそれは、倫理的にどうなのかね」
俺は心の中で笑った。今更何が倫理だ。
「ご存知の通り、トゥーシャは遅かれ早かれ絶滅する種族です。ここで自我を奪われるのも、過去で絶滅するのも、結果的には変わりないでしょう。むしろ生きているだけましかもしれません」
円卓が静まり返る。
「しかし、我が国にそんな資金はない。君が転送に関する費用を全て負担するというのかね」
「まあ待て」
円卓の上座の方から声が上がる。大将が、俺を見た。
「そこまで言うなら、やらせてみたらどうだ」
この男は、どこまでも俺の都合のいいように動いてくれる。
「またですか、フォレンティア大将。あなたのマグダラス大佐への態度は下の者達からも疑問の声が上がっているのですよ」
「言いたい奴には言わせておけばいい。マグダラス、覚悟はあるのか」
「ええ、もちろん」
覚悟なら、ミリアが死んだ時からしている。ここでしくじる訳にはいかない。
「なら、お前に任せよう。やれるだけやってみろ」
「フォレンティア大将、万が一の際は貴殿にも責任を取っていただけるのでしょうね」
「いいだろう。現場責任者はマグダラス大佐に一任する。総責任者は私だ。よろしいですね、元帥」
大将が円卓の上座を向く。坊主頭に白い口ひげを生やしたアイリーン元帥が座っている。メイベルも、元帥を見ていた。
「好きにしろ」
円卓に囁きが溢れる。「まあ、それならば」「フォレンティア大将も責任を取って下さるようだし」ここにいるほとんどの奴らが、俺と大将を邪魔だと思っている。この機会に降格しろということだろう。もっとも、しくじるつもりは毛頭ない。やっと巡ってきたチャンスだ。絶対逃しはしない。
「それでは、この案は成立としよう」
俺は、誰にも分からないくらいに、笑った。思いが果たされる日は、近い。
風が吹くと、桜が雨のように降り注いできた。
「似合わないですね、大佐と桜」
俺は歩調を緩めた。見通す限り、ずっと桜の木が並んでいる。空は薄水色で、空気も暖かい。力を抜くと体が溶けそうな雰囲気も、嫌いではない。
「何でだ? 俺は好きだぞ。桜」
「桜が綺麗すぎて、大佐の黒さが引き立っちゃいますよ」
メイベルは風に流れる髪の毛を押さえる。
「よく言う。お前の方が黒いぞ」
「私は知り合いを殺したりしたことないです」
「そういう参謀が一番たちが悪い」
「失礼ですね。私はただ大佐の行く末を見守ってるだけです」
俺は口元を緩めた。
「性格悪いな」
「大佐に言われたくありません」
「成功させる。絶対にな」
「そうですね。成功してもらわないと、こんなへんぴな所まで来た意味がないですからね。というか、いつまでたっても自分で行動するのが好きですね。こんなの部下に任せてもいいのに」
「メイベル、最後に頼れるのは自分だけだ」
メイベルは俺を見上げて、微笑んだ。
「そうでしたね。で、何でここなんですか? 桜は綺麗だからいいですけど」
「昔、スラムがあった場所の近くだ」
メイベルは納得したように小さく声を漏らした。
トゥーシャを過去から転送する装置を作るため、魔術師を本部のある首都へ召喚することになった。視察に訪れたのがここだったという訳だ。そのまま帰るのも何なので、たまたま見つけた桜並木を散歩してみようという気になった。
「前々から思ってたんですけど、大佐は妹さんを女性として好きだったんですか?」
メイベルは真顔だった。
「よく分からない」
今やろうとしていることは、もはや妄念に近いのかもしれない。
「でも、今も、愛している」
メイベルは何も言わなかった。メイベルを見ると、目をそらされた。
「いや、すみません。聞いたこっちが恥ずかしくなったので」
「何でだ」
「いや、らぶらぶだなと思って」
「やきもちか?」
メイベルは紫の目を丸くして、笑い出した。大爆笑している。どうやらつぼに入ったらしい。
「何でそんなに笑うんだ」
「いや、すみません。その答えは念頭になかったので。安心して下さい、好きじゃないです」
「そうか。それは残念だ」
俺は笑った。
「でも大佐、女性兵には大人気ですよ。軍内の抱かれたい男ランキング五年連続一位ですし。性格こんななのに、やっぱり人は見た目ですかね」
「そんなランキングがあるのか。というか、俺は仮にも上官だぞ。容赦ないな」
「それは失礼しました。人としては尊敬していますよ」
メイベルは微笑んだ。こいつの見た目にだまされている奴もかなり多そうだ。
桜並木の終わりに、白い建物が見えた。建物に入っていく人影に、目を奪われた。
「メイベル、先に帰るなり待機するなりしていてくれ。用事ができた」
俺は白い建物へ歩き出した。
「はい、行ってらっしゃい。今度は何ですか」
背後でメイベルの呆れた声が聞こえた。
硬いエナメル質の床に靴音がよく響いた。俺は足を止めた。音がしない。耳鳴りがする。廊下の片側一面、硝子張りの窓から陽が差しこんでいる。白い床に反射して、目がくらむ。
靴音が聞こえてくる。両手いっぱいに鮮やかな花束を抱えた赤毛の男が、俺の横を通りすぎる。男は俺と目を合わせなかった。靴音が遠ざかって、扉を開閉する音で消える。また音がしなくなった。俺は窓べりに手をかけた。
ジルに、似ていた。だから追いかけてしまったのだ。もちろん、別人なのは分かっている。俺は看護婦を捕まえて、今の男のことを尋ねた。終戦間際に恋人が撃たれ植物状態になり、それからずっとここに通い続けているらしい。名前は、ジーク・フォンフィリア。俺はジークが入っていった病室の前で待った。扉が開いて、顔を伏せたジークが出てくる。花束はなくなっていた。ジークは俺を見ずに歩き出す。
「取引しないか」
ジークは足を止めて、振り返った。赤毛だが、跳ねた毛先もよく似ている。丁度、あの頃のジルと同い年くらいだ。茶色い目が、冷ややかに俺を見る。
「俺ですか?」
「そうだ」
「何ですか、いきなり」
「今から言う条件をクリアできたら、お前の恋人の治療費を一生分出す」
茶色い目が細くなる。ジークは答えない。俺は床に視線を落とした。明るくて、眩しい。
「話だけ、聞きます」
俺は視線を上げる。ジークが俺を見ていた。これは贖罪なのだろうか。考えてから、違うと思った。これは賭けだ。俺が合っているのか、間違っているのか、これで分かるはずだ。俺を止めるなら、止めてみろ。そうしたらもう二度とこんなことはしないと誓う。俺も一緒に死のう。
ジークは、俺の申し出を、受けた。
俺はベッドから上体を起こした。体中が痛い。部屋には誰もいない。眠り慣れた部屋ではなく、変哲もない宿屋の一室だ。俺は自分の手を見た。手を握って、開いた。体は痛いが、死ななかった。我ながら強運だ。俺はベッドから出てカーテンを開けた。外は真っ暗だった。ポケットから懐中時計を出してみると、十時だった。扉が開く音に振り返ると、メイベルが立っていた。
「やっと起きましたね」
「どれくらい寝ていた?」
「半日ですね。それより何かおごって下さい。大佐を運ぶのにどれだけ体力を使ったと思ってるんですか。重いったらありゃしない」
レオンと、ジークと、トゥーシャに会った。レオンは家を出てから会っていないから、実に十年ぶりだ。俺より背が高くなっていた。ジークは俺達の突然の来訪に戸惑っていた。こちらから連絡をとっていなかったのだから、当然だろう。けれど本当に邪魔をするつもりはなかった。トゥーシャの実力を自分で確かめてみたかっただけだ。
そのトゥーシャに、とうとう会うことができた。メイベルから話は聞いていたが、顔立ちの整った美しい女だった。懐かない猫のようだ。さすが魔術師百人分の力というだけあって、魔法の威力は桁違いだった。よく死ななかったと思う。
「聞いてませんね。裏切りますよ」
「それは困る。すまない」
「おごって下さい。あと呪文もかけまくったのでくたくたです。というか、増幅の手袋がなかったら、大佐多分死んでましたよ」
メイベルは真顔になっていた。増幅の手袋は、文字通り魔法の威力を増幅させる手袋だ。俺がトゥーシャの呪文をかき消したのは飛散の手袋で、裾の刺繍以外、見た目はほとんど変わらない。
「さすが、トゥーシャですね」
「そうだな。期待以上だ。アイネ、だったか」
「まあもういいんで、おごって下さい」
レオンはあの様子だとトゥーシャに惚れているのだろう。随分面倒な相手を好きになったものだ。
「聞いてませんね。通報しますよ」
「いや、悪かった。おごろう」
「クレープおごって下さい。特大のやつ」
「太るぞ」
「死にたいんですか?」
「いや、何でもない」
俺は暗い窓の外を見た。今確かに、ここにトゥーシャが存在している。
「面白くなってきたな」
「そうですね」
俺は猫のようなトゥーシャの姿を思い出して、窓のカーテンを閉めた。
執務室で報告書を眺めていると、机の上の通信機が鳴った。俺は午後の穏やかな空を見て、伸びをした。通信機を取り上げて耳に当てる。
「マグダラスだ」
『メイベルです。ジーク・フォンフィリアがトゥーシャを確保して到着しました』
俺は椅子の背にもたれて、立ち上がった。
『どうしますか?』
窓際まで歩いていく。下に、地上が見える。俺も随分高い所まで来たものだ。
『切りますよ』
「すまない」
俺は笑った。
「そうだな、とりあえずここまで連れて来てくれ」
メイベルは曖昧な返事をする。
『性犯罪だけはやめて下さいね。面倒なんで』
「それは気を付ける。いくつか聞きたいことがあるだけだ」
『分かりました。五分後には到着します』
俺は通信機を切った。窓硝子にもたれかかる。願いが、叶う。レオンも、ジルも、俺を止められなかった。世界は、俺を受け入れた。ミリアが死んでから十年、ようやく世界が壊れる。俺は天井を仰いで、目を閉じた。愛する妹の名前を、呟いた。
扉がノックされた。『メイベルです』「入れ」メイベルと、トゥーシャを抱きかかえたジークが入ってくる。トゥーシャは目を閉じていて、足には足かせがかかっていた。
「本当に、連れて来るとは思わなかった」
ジークは茶色い目を細くする。
「約束が守られないなら、逃げます」
「約束は守る。治療費は一生分出そう」
俺はジークの目を見た。
「レオンを、裏切ったのか」
ジークは揺れない真っ直ぐな目をしていた。あの時の、俺の喉元へ銃を向けた時のジルと、同じだった。
「レオンより、彼女の方が大事ですから」
俺は笑った。
「そうだな。ではそのレオンの到着を待つとするか」
「始めないんですね?」
メイベルが意外そうな声を上げる。
「全員揃ってからの方が面白いだろう。それまでトゥーシャと話でもしている。そこへ置いていってくれ」
俺はソファを指した。ジークがトゥーシャをソファに下ろす。よく見ると、後ろ手にも手錠がかかっていた。
「レオンが着いたら知らせてくれ。それまで待機だ」
「分かりました。手足は封印してあるので大丈夫だと思いますが、気を付けて下さい。あと、変な気を起こさないように」
「分かっている。何なら監視カメラで見ていてくれても構わないぞ」
「ではそうします。失礼します」
メイベルとジークが部屋を出ていく。静かに、なった。俺は机を挟んでトゥーシャの向かいの三人掛けソファに座った。アイネ、だったか。眠っている。睡眠導入剤を飲ませたのだろうか。俺はソファの背もたれに沈みこんだ。アイネの目が、ゆっくり開いた。エメラルドの瞳がこちらを見る。目が見開かれて、鎖の音が聞こえた。
「目が覚めたか。お姫様」
鎖の音が激しくなる。アイネがソファの上でもがいている。魔力封じの手錠だから、逃げられはしない。魔法の使えないトゥーシャなど、ただの女だ。アイネはもがくのをやめた。無駄だと分かったのだろう。
「ジーク、仲間だったの?」
エメラルド色の瞳が、動揺している。前回戦った時とは別人のようだ。
「理解が早いな。仲間ではない。取引していただけだ」
「ここは?」
「軍の本部だ」
「私を兵器にするの?」
俺は笑った。
「いや。予定が変わった。レオンが来たら教える」
エメラルドの瞳が細くなる。
「レオンが来るかなんて、分からない」
「分かるよ。しらばっくれてるのか、本当に分からないのか、どっちだ?」
俺はソファを立った。アイネの側に歩いていく。
「レオンが好きか?」
アイネは怪訝な顔をする。俺はアイネの顔の横に手をついた。手がソファに沈みこむ。俺はアイネのあごをつかんで、唇で、唇を塞いだ。エメラルドの瞳が見開く。顔を離すと、白かったアイネの頬が赤くなっていた。俺は銀色の髪を分けて、アイネの耳元へ唇をあてた。
「待って、何で、どうして」
アイネが叫ぶ。鎖が激しく音を立てる。俺はアイネのブラウスのボタンを外していく。アイネの白い肌は、わずかに赤い。胸元へ、手を伸ばす。
「嫌、嫌だ、レオン」
アイネは叫んだ。俺は手を止める。アイネが、泣きそうな目をして俺を見ている。顔が真っ赤だった。俺は吹き出した。
「それが聞きたかった」
アイネの上からどいて、隣に座った。見開いたエメラルドの瞳が俺を見ている。アイネは、震えていた。
「可愛いな、アイネ」
銀色の髪を指ですくう。「触るな」アイネが叫ぶ。
「時間があればレオンからお前を奪って遊ぶのも楽しいが、今は止められてるからな。それとも、約束を破って本当に遊ぶか?」
アイネの頬に触れる。アイネが、震える。魔法が使えないと、本当にただの女なのか。
「お前もレオンも好きになるのが早いな」
「私のことはどうでもいいでしょう? レオンが来たら何をするつもりなの」
「それはお楽しみだ」
アイネが真っ赤な顔でこちらを睨んでいる。俺は笑った。
「どうしても知りたいんなら、キスしろ。そうしたら教えてやる」
アイネは目を丸くする。唇が薄く開く。どうやら呆れられているらしい。
「どうして、好きでもない人とそういうことをしようと思うの?」
「お前のことは好きだ。アイネ」
「何言ってるの?」
「レオンのどこが好きなんだ?」
エメラルドの瞳が俺を睨みつける。
「だから、私のことはどうでもいいでしょう」
「レオンが来るまで暇だ。質問に答えろ」
「質問したいのは私の方。何で呼び寄せたの」
「妹のためだ」
「妹?」
アイネは小さな声で呟いた。
「あなたはレオンのお兄さんなんでしょう? 妹がいるの?」
「死んだ。今はいない」
アイネが俺を見ている。
「死者を生き返らせるのは、私達にだってできない」
俺は小さく声を漏らした。その方向は考えつかなかった。
「そういう選択肢もあったのか。まあ、それよりももっと簡単なことだ」
俺はソファにもたれて、天井を仰いだ。
「暇だな。少し眠る。通信機が鳴ったら起こしてくれ」
「起こす前に逃げる」
「そんな状態でどうやって逃げるんだ。レオンが来るまで大人しくしておけ」
俺は目を閉じた。
「膝枕してくれないか」
「変態なの?」
冷たい声が聞こえた。そうか、俺は意外とこの世界が好きだったらしい。笑って、真っ黒な世界で、思考を切った。
連続した高い電子音で目が覚めた。目覚まし時計かと思ったら、通信機だった。立ち上がると体が痛かった。いつも使っている机の側まで歩いていく。ソファを見ると、アイネがさっきと同じ体勢のまま、こちらを見ていた。俺は鳴り続ける通信機を取って、耳に当てた。
「マグダラスだ」
『メイベルです。弟さんが到着したようなので準備して下さい』
窓の外は真っ暗だった。
「随分遅かったな」
『そうですね。というかあれだけ手を出すなって言ったのに、何かしてましたね。痴呆症ですか』
「ちょっとちょっかいを出しただけだ。人の食べてるものが美味しそうに見えるのと同じだ。やきもちか?」
『では今さっきの大佐の映像を軍内に流しますね。高画質で』
「冗談だ。レオンを迎えにいってやってくれ」
『分かりました。では後程』
俺は通信機を机の上に置いた。アイネを振り返る。
「やっと王子様の到着だ。来い、アイネ」
エメラルドの瞳が、俺を睨んでいた。
足元から浮かび上がる青白い光が、黒い部屋の中でレオンの法衣を浮き上がらせていた。レオンの後ろには大将と上層部の軍人、俺の後ろにはメイベルとジーク、右横には硝子ケースに入ったアイネが、いる。
「俺の勝ちだ」
「違う。お前も俺も同罪だ」
レオンの声が反響する。俺は軍服の内側に手を入れる。
「知ってるよ、そんなことは。だから全員一緒に死ねばいい」
銃をレオンに向けた。歩いていって、レオンの喉元へ銃口をあてた。硝子ケースの中のアイネを振り返る。
「アイネ、カタリナを呼べ」
エメラルドの瞳が開いた。
「どういうことだ、大佐」
大将が叫ぶ。俺は大将の方を振り向いて、微笑んだ。
「ありがとうございます、大将。あなたのおかげでトゥーシャの召喚準備がスムーズに進んだ。軍事兵器の案を取り合ってくれたのはあなただけでしたからね」
「どういう、ことだ」
俺はレオンを見た。
「まだ分からないのか? お前の所に大司教をやったのは、軍だ。軍がトゥーシャを連れ帰れば俺には手が出せない。そうなれば軍事兵器として使われる。けれどもし男がトゥーシャを連れ帰れば、俺がカタリナの寄り代として使うということだ」
本当は、軍の誰かがトゥーシャを連れ帰ったとしても、奪い返すのはそう難しくなかっただろう。けれど俺は最後に賭けた。ジルにも、レオンにも、創造主にさえも、勝った。
「お前、そういうことだったのか? 軍に復讐するためにアイネを呼んだのか?」
レオンは叫んだ。俺は笑った。ミリアはジルでもなく、レオンでも、創造主でもない、俺を選んだ。
「軍じゃない。世界にだ」
「大佐、説明しろ」
大将が叫んだ。俺は振り返った。
「簡単に言えば、仇討ちです」
「誰のだ」
「妹のです」
「貴様、気が狂ったか」
俺は笑っていた。
「狂っているのはあんた達だ。戦争にかこつけて妹を強姦して殺した。休戦があと少し早ければ、ミリアは死なずにすんだのに」
叫び声が、響いて消えた。大将は銃を抜いた。俺へ銃口を向ける。
「あなたが撃つなら、俺は先に弟を撃ちますよ」
大将は動かない。俺は硝子ケースの方に振り向いた。
「さあアイネ、選べ。愛しい男が目の前で死ぬのを見るか、カタリナを召喚して全員道連れにするか。どちらにしろ、レオンは死んでしまうがな」
「呼ぶな。駄目だ。アイネ」
俺はレオンの喉に銃を押し当てた。大将の方を振り向く。俺に銃を向けている。
銃声がした。俺はレオンを大将の方へ突き飛ばしていた。レオンの前を、黒い影が覆う。レオンと影は一緒に倒れて、レオンは弾かれたように起き上がった。
「お前、何で、そういうところだけ持っていくんだよ」
レオンの前に、ジークが倒れていた。
「俺は彼女が生き続けてくれれば、それでいいんだよ」
戦場で微笑みながら倒れた、ジルの姿がフラッシュバックした。
「裏切ったんなら最後まで裏切れよ、馬鹿」
俺はレオンの方へ歩いていく。レオンの胸倉をつかんで、左肩に銃口を押し当てる。薄い青色の目が見開いた。俺は引き金を、引いた。焦げた匂いと共に、レオンの体が落ちていく。
床に倒れたレオンの口に、銃口をねじこんだ。アイネがカタリナを呼ばないのなら、俺の手で殺すまでだ。
『無の古』
俺は硝子ケースの方を振り返った。やっと、その気になったか。
『一 全 素 源 生の彼方幾星霜』
大将ともう一人の軍人が硝子ケースへ銃を向ける。無駄だ。わざわざ割れるケースなど、誰が用意するものか。
『死せる魂繋ぎ止め 以って我が身に降り給え』
アイネはこちらを見て、微笑んだ。泣きそうな目をしていた。
『オルタナ』
光があった。俺は目を覆った。硝子の弾ける音がして目を開けると、割れた硝子ケースの中に、アイネが立っていた。
「カタリナでは、ないのか?」
アイネは呪文の最後にカタリナとは言わなかった。アイネがこちらを向いて、微笑んだ。
「オルタナだ」
オルタナという呪文など、聞いたことがない。
「そうか。今の子等は私を知らないのだったな。創造主だ」
「創造主は二人いるということか?」
「そうだ。これはカタリナとの共同作品だ」
「なぜオルタナを呼んだんだ?」
俺は呟いていた。
「誰も死なせたくないからだ」
聞こえていたらしい。オルタナは言った。
「苦肉の策だ。トゥーシャにとって、生き続ける苦しみより、死んでしまう悲しみの方が大きかったのだろう。どちらにしろ世界は壊れてしまうけれど」
俺はレオンの口から銃を外した。
「アイネ」
レオンが叫ぶ。
「トゥーシャには聞こえない。私はもう私だ」
俺はオルタナの側へ歩いていく。
「お前も世界を壊すのか?」
「この世界では誰も死なない」
雷が光ったように、目の前が点滅して見えた。
「お前の一番会いたい者に会わせてやろう」
オルタナは手を横へかざした。そこには、十年前と同じ、腹を刺され、腸を引きずり出された、ミリアがいた。左半身が腐り落ちている以外、何も変わっていない。歳も、とっていない。ミリアが近付いてくる。腐り落ちた手で、俺の頬に、触れる。
「久しぶりね。ハイン」
ミリアは半分しかない口で笑った。喉から、息をする音が聞こえる。
「どういう、ことだ」
オルタナは世界を壊す訳ではないのか? ミリアの手が俺の腰におさまっていたナイフを抜く。
「それはつまり、こういうことね」
銀色の刃が、俺の腹に刺さった。刃が、抜けていく。赤い血が吹き出す。戦場で、何度も見た。けれど、とても綺麗な赤だった。膝から力が抜けて、体が床に倒れる。痛くて、冷たい。銃声が聞こえた。
「馬鹿ねえ。話を聞いていなかったの?」
悲鳴と、重いものが倒れる鈍い音がする。
「これから大切なのは、死なないようにすることではなくて、傷を負わないようにすることよ」
大将の叫び声が、聞こえる。
「痛みなんて、すぐに慣れるわ」
先程と同じ音と共に、対照的に軽い足音が聞こえてくる。
「あなたは何もしないの?」
「私は見守るように言われているわ」
ミリアはつまらなさそうに「ふうん」と言った。足音は俺から少し離れたところで止まった。
「レオン? 大きくなったわね。あなたのことは許してあげる。まだ子供だったものね。ハインに撃たれたの? 可哀想に。後でゆっくり話しましょう」
足音が、近付いてくる。痛みで意識が飛ばない。
「起きて、ハイン。気絶するなんてまだ早いわ」
胸倉を引き上げられると、ミリアの冷ややかな青い目が目に入った。
「ミリア、どうして」
よく、分からなかった。ミリアのために世界を壊したいと思っていた。俺と同じ程ではなくても、ミリアは今も俺を愛してくれていると思っていたのに。
「あなたは、間違ったことをしたわ」
「何で、ミリア」
ミリアは、小さい頃に見た、俺をあやす優しい母親の顔で、微笑んだ。
「あなたも軍人も、大嫌い」
体が、落ちた。銀色の刃が俺の腹へ突き刺さった。ミリアはナイフを引き抜いて、同じ場所へ突き立てる。もう一度、何度も。
「痛いかしら。痛いでしょう? ハイン。でも私はもっと痛かったの。痛かったんだから」
ミリアは、声を上げて笑った。薄い青色の目が見開いていた。濡れた肉にナイフが刺さる音が、した。俺は間違っていたのか? 全部今までの報いなのか? 女の、アイネの笑い声が聞こえてきた。
「死ねるということは幸せなのだぞ? 傷を負えば血が出る。けれど体が腐っても、死なない。私はカタリナとは違う。子等よ、一人残らず壊れるがいい」
靴音が聞こえて遠ざかっていく。腹が熱くて、痛い。俺の上で、ミリアがずっと俺の腹を刻んでいる。ミリアは俺の腹にナイフを突き立てたまま、手を止めて、扉の方を振り向いた。
「レオン、どこへ行くの?」
「好きな人を連れ戻しに」
ミリアは、とても穏やかな顔をした。「そう」レオンのことは、許しているのか。俺が仕向けたのだから、当然か。このまま、ミリアに恨まれたままミリアに殺されるなら、それもいいかと思った。ああ、そういえばオルタナは死ねないと言っていたか。ミリアの気がすむまで刺せばいい。ミリアのために体が腐り落ちるのなら、俺はそれでいい。
ミリアは、俺を見下ろした。名前を呼んだが、声が出なかった。ミリアは俺の腹に刺さったナイフを握ったまま、動かない。薄い青い色の目が、俺を見ている。
「本当は、分かっているの」
ミリアの体は、俺の血で真っ赤になっていた。薄い青色の目は穏やかなままだった。
「ハインが私にしたことは、すごく、嫌だった。絶対に、許さない」
ミリアは口を開いて、閉じる。迷っているのだろうか。
「でも、ハインは、本当に私とレオンを愛してくれた。あのまま、三人で暮らせたら、よかった」
最後の方は、呟きだった。ミリアはナイフの柄から手を離した。
「どこで、間違えたんだろう。私はとても、幸せだったのに」
ミリアは俺の胸に額をつけて、体を重ねた。少しの間、何も聞こえなくなった。
「ごめんなさい、ありがとう、私達を守ってくれて。私はお兄ちゃんが嫌いだったけど、大好きでした」
軍人の手伝いをすると決まった時、軍人達に目をつけられないよう、せめても俺との関わりが薄まるように、名前で呼ぶよう言ったことを思い出した。
俺は手を動かした。手は震えていた。もう満足に動かせない。ミリアの背に、手を置いた。
「お前も、レオンも、ずっと、愛してる。今も」
かすれた声が出た。ミリアは顔を上げる。薄い青色の目が濡れていた。ミリアは、微笑んだ。それだけでもう、充分だった。俺は生きている意味を得た。今、ちゃんと笑えているだろうか? もう何も必要ない。俺は、目を閉じた。
目を開けると、白かった。寝返りを打つと激痛があって、声が出た。窓の外に雲はなく、薄青い空が広がっていた。
「おはようございます、大佐」
やっと顔だけ振り向くと、林檎とナイフを持ったメイベルが椅子に座っていた。
「やっと面会の許可が下りたので、来ました。記憶飛んでませんか?」
「覚えている」
声はかすれていた。喋ると、痛い。
「夢を、見た」
メイベルは膝の上に置いた皿の上で林檎を切り始めた。
「何の夢ですか?」
「ミリアの夢だ」
林檎にナイフを入れる音が聞こえた。
「恨んでいますか?」
「誰をだ」
「妹さんです」
「愛している。今も」
「そうですね。聞いたこっちが恥ずかしくなりました。忘れて下さい」
メイベルはうさぎ形になった林檎を皿の上に並べていた。
「あれから、どのくらいたった?」
「半年ですかね。大佐が目を覚ましたのが一週間前です。生きてることが奇跡ですよ」
最近、目が覚めたり意識が落ちたりしているのは覚えているのだが、時間の感覚がない。
「リハビリの方が死にそうだと思いますが、頑張ってください。大佐なら、って、ああ、もう大佐ではなくなるんですね」
メイベルは感慨深そうな顔をした。
「今更だな」
「いえ、まだ正式に除名された訳ではないんですけど、退院しだい除名ということになると思います。まあ、例によってフォレンティア大将が頑張ってるんですけどね」
俺は思わず聞き返していた。メイベルはうさぎ林檎をほおばっている。
「だから、大将があなたが復帰できるよう、かけ合ってるんですよ」
自然に口が開いていた。
「馬鹿か?」
「大佐、世の中には思っていても口に出していいことと悪いことがあるんですよ」
どうして俺のまわりには大将といい、ジルといい、馬鹿な奴が多いのだろう。ああ、そうか。俺は笑っていた。
「俺は、恵まれてるんだな」
「生い立ちからしたら私の方が恵まれてると思いますけど、大佐が思うならそうなんでしょうね」
「ジークは退院したのか」
「ええ、大佐より大分早く」
「レオンはトゥーシャと一緒にいるのか」
「多分、一緒に過去へ行きました」
「ミリアは、消えたんだな」
「大佐の側で、消えました」
それならいい。世界はまだ続いている。
「というか、その林檎は俺への見舞いじゃないのか」
俺はメイベルの膝の上に乗っている林檎の皿を見る。
「重傷者に食べ物なんて持ってきませんよ。病院に来ると林檎が食べたくなるから持ってきただけです」
重傷者の病室に林檎を持ちこむこと自体は、いいのか。扉をノックする音に、メイベルが返事をする。扉の隙間から、ベルガ・フォレンティア大将が現れた。思わず体ごと振り向いたら、痛みで声が出た。メイベルは椅子から立ち上がる。
「お疲れ様です。早かったですね」
「軍から近いからな」
大将は軍帽を取った。目が、合った。
「お疲れ様です。一体何をしに?」
「お前の見舞いだ」
「面会許可が下りたら一番に知らせろと言われたので」
メイベルが言った。
「わざわざ申し訳ありませんが大将、私は反逆者ですが」
大将はメイベルが座っていた椅子に座った。
「確かにあの場は俺も怒りを覚えたが、考えてみればお前らしい。入院中、お前の今までの行動は全てあの時のためだったのだと、やっと納得がいったよ」
「それで、なぜ私を軍へ戻そうと?」
「お前の、願いを叶えようとする力は、本物だった。その強い意志が、軍には必要だ」
俺は胸にたまっていた息を、吐いた。
「お言葉ですが大将、馬鹿ですか」
「大佐、痴呆症ですか」
メイベルが言った。
「いい、馬鹿は馬鹿と言われなければ気付かない。俺はもう軍人じゃない」
「一応まだ軍人ですよ」
笑い声が響いた。大将が笑っている。
「マグダラス、馬鹿なのはお前を軍に入れた時から重々承知だ。俺は、お前に初めて会った時、お前の目の強さに、願いを叶えてやりたいと思った。お前を本当の息子のように感じていたのだ。親が親馬鹿になるのは当然だろう。軍に戻れ、マグダラス大佐。お前が必要だ」
どうして馬鹿は、最後まで馬鹿なのだろう。ジルも、そうだった。俺は笑った。
「本当に、馬鹿ですね。軍には戻りません。俺の願いは叶いました」
「俺の右腕になれと言っても駄目か」
「嫌ですよ。フォレンティア大将、あなたがいたから俺はここまで来れた。本当に、感謝しています。大将は大将の信じる道を進んで下さい」
大将は俺を見ていた。やがて大きく息を吐き出した。
「意志は固いようだな。分かった。最後に無駄と分かって言うが、メイベルと結婚したらどうだ」
俺とメイベルの聞き返す声が、重なった。
「いくら大将でも、言いつけますよ。元帥に」
メイベルの声が低い。本気のようだ。
「結婚するか?」
俺はメイベルを仰ぎ見る。紫の瞳は細かった。いつもなら笑顔で怒るのだが、珍しい。
「嫌ですよ。私は安定した人と結婚して、のんべんだらりと暮らしたいんです。大佐なんかと結婚した日には毎日がサスペンスじゃないですか」
「なら安定した職に就くとしよう。そうだな、例えば神官とか」
「大佐がいる教会には絶対行きたくないですね」
俺は笑った。
「冗談だ。お前のことは好きだが、それ以上にパートナーとして好きだ。仕事場が変わっても、俺の下についてくれないか」
「それは私に軍をやめろって言ってますか?」
「なら結婚すれば全て丸く収まるだろう」
「大将は黙っていて下さい」
俺は吹き出した。腹が痛んだ。
「何がおかしいんですか」
俺は首を振る。
「いや、俺は本当に、恵まれている」
メイベルは腕を組んで、息を吐いた。
「大佐が言うなら、そうなんでしょうね」
俺は頷いた。俺は今、この世界が、とても愛おしい。
あとがき
はい、おはようございます。あとがきです。いつか書くと言っていた兄の過去話をとうとう書いてしまいました。楽しかったです。私から兄への愛が溢れています。偏愛ですね。
今回、場面の要所要所にサブタイトルがついています。私の中で。最初とかは「切れる十七歳」ですね。何でそんなに切れてるのかと思いつつ書きました。若かったんですね。人は歳をとると丸くなる。兄、意外と冷たい人のようですが、みんなが大好きなんですよー! 仲良くなった人には人情深かったですね。
そんな兄の親友になったジルさんですが、最初から死ぬことが決まってました。ごめんなさい。(※後に、あれだけ騒がしい人が未来に出てないから、死ぬと思ったと言われました。ばれてる。 2010/7/4追記)裏切るかは決めてなかったんですが、やっぱり裏切りました。どうも裏切りが好きらしい。苗字のサイファリスクはサクリファイスのアナグラムなんですよ……! この時点で既に兄の犠牲に!
後は相方のメイベル。二人はくっつかないんですよ! あの、くっつかないけど信頼してるという関係が好きらしいです。
そういえば今回、奇跡が起こったのですが、兄がミリアに名前を呼ばせてた理由、あれ、書いて私も初めて知りました。よく話を作る人は、キャラクターが勝手に動いてるところを外側から見て書いてるだけと言いますが、まさにそれだ! だからレオンはミリアのことは「お姉ちゃん」で、兄のことは「ハイン」だったのかと一人納得してました。奇跡は起こるものですね……! 自分の頭の中から出てきてるのに不思議です。やっぱりどこかで独立してるんでしょうか。
そんなこんなで最後はみんな幸せになりました。幸せなんですよ! 兄が今後何の職につくかは神のみぞ知る。本当、何になるんでしょうね。機会があればレオンとの後日談とか書きたいと思ったのですが、レオンいませんでしたね。過去に行っちゃって。
終わりに。世界は意外と捨てたもんじゃない。
2009/11/2 くらい




