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自転車小隊

作者: mayo

 私は、自転車小隊の隊長であります。しかし、隊員は私のみであります。シフトと呼ばれる任務に赴くため、基地を出て、父が購入したパナソニックの電動自転車に跨るところであります。時刻は十四時四十分、五分前には到着したいので、十五分ほどの行軍になると思われます。

 基地を出てすぐ、コンビニに寄るのであります。自転車を停め、鍵をかけずに入口から真っ直ぐレジへ向かうのであります。購入するのは九一番、ラッキーストライクという煙草であります。基地では電子タバコを吸うのでありますが、職場ではこれが一番なのであります。ちなみに私は、子どもができれば、禁煙をすると決めているのであります。

 コンビニからは、北へ直進するのであります。私が駆る電動自転車は、力を入れて漕ぐと、かなりのスピードがでたのであります。グラフィティアート塗れの高架下を抜け、真っ直ぐ進むと、工場地帯に入るのであります。工場と工場の隙間から、西日がおおよそ等間隔でちらちらと私の左頬を差すのであります。光から影、影から光、黒と橙色のクラウンローチのようなアスファルトを駆けているのであります。

 ある工場の前を通り過ぎようとしたところ、駐車場から白い自動車が出てきたのであります。左目の暗明転に気を取られていた私は、危うく自動車に衝突しかけたのであります。急ブレーキを掛けた私を見る運転手の目からは、罵詈雑言をミチミチに詰め込んだ見えない光線が発射されているように思ったのであります。その光線は確かに私の心まで届き、詰め込まれた言葉を解凍しているのであります。駐車場を出た自動車は、光線で自身を包み込み、背後の私を威嚇しながら遠ざかっていくのであります。取り残された私は、左頬をじりじりと焼く光が、私をあざ笑うように感じたのであります。私は再び発進するのであります。先程よりもスピードを上げて発進するのであります。

 程なくして工場地帯から川路へ抜けると、向かい側から、黒い自転車に乗った別の隊員が、こちらに向かって漕いでいるのであります。私よりも2回りも歳が離れていそうな男性であります。私は隊員を避けるため、右に躱そうとしたのであります。隊員も同じ考えだったようで、左へ(私からみると右であります)避けたのであります。距離は狭まりながら数回、鏡写しの妙な舞踊をした後、隊員は自転車とその身の動きを止め、通り過ぎ行く私に向かってニッコリと笑いながら言ったのであります。

「すみません。気が合いますね」

 私は咄嗟の出来事に反応できず、恥ずかしさを抱えて逃げるようにその場をはなれたのであります。しばらく走った後、私はスピードを落とし、川を流れる手漕ぎボートのようにゆっくりと自転車を走らせたのであります。先程まで左側に感じていた嘲るような光は、電子レンジのマイクロ波のように、内側から温めてくれる光に変わったのであります。

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