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上杉謙介(23)の場合  二日目


いつもより早く出勤すると昨夜の当直だった前田さんから

青木さんの様子が報告された。

転院の疲れからか、夜はぐっすりお休みになられたようだ。

案外お世話し易いタイプかもしれない。

(と思った僕は未熟者)


「おはようございます。

きょうはいいお天気であったかいですよ、青木さん。

後で外へ散歩に行きませんか?」


背中を向け寝ている青木さんにそう声をかけたが返事が無い。


「あ・お・き・さ・ん」


反応が無い、、、まさか死んでる!?


焦って回り込むと青木さんは夢中でスマホを操作していた。

えっ!できんの?


僕に気づくと青木さんも慌ててスマホを消した。

えらい鮮やかな手つき。

エロ画像でも見てたのか?


エデンは別にスマホ禁止じゃないし、

他の人に多大な迷惑をかけさえしなければ

基本 何をやってもかまわない。

だから青木さんがスマホをやろうが、フラメンコを踊ろうが、

女装をしようが自由だ。

現に前田さんだって、普段からブラジャーをしているし

レースのフリルがついたパンツを穿いている。

多分僕しか知らないけど。


その後の青木さんは特段目立った様子もなく、

静かにというか、ぼわぁ~っとご飯を食べ、何となく散歩させられ

談話室でみんなとテレビを眺めている。


この日は、デイサービスで大久保さんも来ていた。

相変わらず大久保さんは若々しく、

柑橘系のコロンの匂いを漂わせながら

ばば様達をたぶらかしていた。

ばば様にとっては、身近なスターのように思えるのか

大久保さんの話にぎゃぁぎゃぁ言いながら

うっとりしている。

男と女って齢をとっても関係ないんだと

この職に就いてから実感する。

現に大久保さんのせいで、ばば様同士の喧嘩になった事があり

前田さんが仲裁に苦労したことも一度や二度じゃない。

隣の介護施設でなんか、そのせいで刃傷沙汰になり

警察が出動するほどの大騒ぎになった。


それにしてもきょうはやけに盛り上がっている。

クリスマスが近いせいかなぁ。

病棟には午睡をしている患者さんも居る。

少し声を控えて貰おうか。

注意しようとそちらへ向かおうとした

 その時。


「おめぇら、うっつぁしいんだでば!」

(※注・あなたたち、うるさいですよ)


青木さんが突然立ち上がり、叫んだ。


「な、なんだ君は!失礼じゃないか。

僕はレディ達とトークを楽しんでいただけだ!」


大久保さんが真っ赤になって言い返す。

ルー大柴?


ばば様たちも般若のような顔で、こちらを睨んでいる。

コワイー!


僕はあまりの展開に、なぜか咄嗟に


「ごめんなさいーーー!」


と大声で謝り

一目散に青木さんと部屋へ逃げ帰った。

青木さんはとみると、何事もなかったかのように

ぽわぁ~とした顔をしている。

幻覚じゃないよな。

あの時たしかに自力で立ち上がり、怒鳴った。

しかもウルサイって。

耳ちゃんと聞こえてるのか?


謎の残る二日目が終わった。


大久保VS青木 の勝負?

今後ふたりはどうなるのか!?

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