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つきしろ骨董店へようこそ!~霊の願いは当店におまかせください~  作者: 市瀬瑛理
第五章 丘に現れるもの

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第37話 さっぽろ羊ヶ丘展望台

 同日、昼過ぎのこと。

 (みなと)紫呉(しぐれ)とともに、さっぽろ羊ヶ丘(ひつじがおか)展望台を訪れていた。


「このジンギスカン、すごく柔らかくて美味しいですね!」


 湊が焼けたばかりのジンギスカンを口に入れる。その表情はとても幸せそうだ。


 さすがに日曜日なだけあって、このレストハウスも家族連れなどで(にぎ)わっている。あちこちでジンギスカンが焼かれ、美味しそうな匂いが充満していた。


「そうだろ? まずは腹ごしらえしとかねーとな」


 湊の向かいに座っている紫呉も、口を大きく開けてジンギスカンを頬張る。


 二人がここにいるのには、きちんとした理由があった。決してただの観光ではない。


 この後には、先ほどの沙也(さや)とは別件で、霊絡みの依頼が待っているのだ。もちろん湊の能力も必要になる予定である。

 今食べているジンギスカンは、そんな湊の『特別手当』の一部、その前払い分だった。


「あとでソフトクリームも食べたいですね。メロンのやつがあるらしいですよ。あ、白い恋人ソフトっていうのもありました」


 どれを食べるか悩みますね、と湊が嬉しそうに目を細める。


 先ほど少しだけだが、軽食やお土産を扱った店の入っているオーストリア館を(のぞ)いてきたのだ。ちなみに、オーストリア館はレストハウスの隣にある。


 平岡(ひらおか)公園に続き、ここに来るのも初めてだった湊は少々はしゃいでいた。


 前に平岡公園に行った時は、梅ソフトクリームを食べられず悔しい思いをしたので、今日はここぞとばかりにしっかり食べておこうと考えている。


「おお、それだったら食べ比べもいいな。他にも美味(うま)そうなもん、たくさんあったしな」


 一緒になってオーストリア館を覗いてきていた紫呉も、顔を(ほころ)ばせる。


 二人が『次に何を食べるか』で盛り上がっている時だった。


「ずいぶんとのんびりしてるね」


 不意に後ろからとても覚えのある声が聞こえて、湊は反射的に後ろを振り返る。


 瞳に映ったのは、全身をモノトーンで統一したシュウの姿だ。その全身は、紫呉と比較すると本当に細い。


 腕を組んで立っているシュウに、湊が明るく挨拶をする。


「あ、シュウさん。こんにちは」

「こんにちは、湊くん。で、紫呉はここで何をしてるの?」


 シュウは湊を見てわずかに微笑んだあと、すぐに険しい顔つきで紫呉に向き直った。


「おう、お前もジンギスカン食うか? 今なら(おご)ってやらないこともないぞ」


 しかし楽しそうな紫呉はそんなことはお構いなしに、満面の笑みをシュウに向ける。

 途端にシュウの表情が呆れたものに変化した。そして大げさに溜息をついてみせる。


「それは丁重にお断りするよ」

「お前は食わなすぎなんだよ。ちゃんと家で食ってんのか?」


 紫呉は食べながら、あからさまに眉をひそめた。


 これでも一応、シュウの食生活を心配しているのだろう。それくらいは湊にもわかる。


「それなりには食べてるよ」


 だが、シュウは突っぱねるようにそう返すだけだ。

 その姿に、(はし)を止めた紫呉が、怪訝(けげん)な顔で聞き返す。


「それなりってどれくらいだよ」

「それなりはそれなりだよ。あまり僕に干渉しないでもらえるかな。これ以上その話を続けるつもりなら僕は帰らせてもらうからね」

「ちっ、わかったよ。せっかく心配してやってんのに」


 不機嫌を隠すことのないシュウに、紫呉は不満そうに一つ舌打ちすると、また食事に戻った。


(よほど自分のプライベートには関わらせたくないんだな。きっと誰に対してもそうなんだろうけど)


 紫呉とシュウのやり取りを控えめに眺めながら、湊はそんなことを考える。


 湊にとって、シュウは今も憧れの対象だ。


 これから先シュウに嫌われることのないよう、自分も下手に突っ込んでプライベートについて聞いたりしないでおこう。

 そう誓いつつ、湊は残りのジンギスカンを口に運んだのだった。



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