LXVI.いわゆる、女子会というやつですわ
キードゥル93年12月
「ごきげんよう、皆様。足を運んでいただいて、ありがとう存じます」
そう言って、ニコリと微笑んだのは、アードリスディッテの第二領女、ツォルアン。
集ったのは、クリスティーネ、ファミリア、リアだ。
すでに魔法や音楽の講義を終え、新年を迎える前のゆったりと過ごす頃合いである。
外は雪景色だ。今年は例年より寒いらしい。
「こうして同学年になったのも、何かの縁。折角ですものね」
「そうですね。これから、何度も顔を合わせることになるでしょうし、仲良くしてほしいですわ」
「あっ、こういう集まりをなんて言うんでしたっけ……あの、あれです」
むーん、とファミリアが眉を寄せて考える。ツォルアンが楽しそうに笑って言った。
「いわゆる、女子会というやつですわ」
「そう、それです!」
ファミリアがふわふわ笑って頷いた。楽しそうで何よりである。
「そういえば、わたくしたちの代から、卒業式で劇の発表をするそうなんです。何かご存じではありませんか?」
リアがゆったりと首を傾げる。情報通のツォルアンは、存在自体は知っているそうだ。クリスティーネとファミリアは知らなかった。
「どんな劇を?」
「神々に捧げる舞――から派生したものだそうで、神話の劇ですわ」
「なるほど……」
ツォルアンの説明に、リアは頷いて、再び口を開く。
「同盟国となったレーニアティータ皇国の文化だそうですよ」
「まぁ、ではクリスティーネ様は何かご存じですか?」
ファミリアは首を傾げる。
残念ながら、使者であるアダルベルトやスウェートたちと、そのような話はしていない。
「いえ……初めて伺いました。ですが、劇というのは、とても楽しそうですね」
「そうですね。配役はどうなるのかしら」
「八大神は領主一族が担当するのでは? そうなると、一人の神が余ってしまいますけれど」
話がひと段落したところで、各自がお菓子を提供し始める。
「氷菓子を持って参りました。溶けやすいですから、早めに召し上がってくださいませ」
(氷菓子……!)
三人分の持ってきたお菓子を食べなければならない、ということや冬が近づいてきている、ということを考慮して小さ目だが、やはり美味しかった。
(やはり、レシピを売ってもらうことを真剣に話し合った方がいいかもしれないわ)
リアが持ってきたのは、特産品である葡萄を使ったゼリー。クリスティーネは最近栽培が始まった、蜂蜜を使ったパンケーキだ。
「どれも美味しかったですわね」
「本当にそうですね。氷菓子は初めて食べました。珍しい食感でしたが、とても美味しかったです。夏にはぴったりですね」
「そういえば、レーニアティータ皇国とのお話はどうでしたの? いらっしゃった方はどんな方でした?」
ツォルアンがクリスティーネに質問を投げかける。
「そうですね……個性的な殿方でした。弟君はとても落ち着いた雰囲気の方でしたね」
クリスティーネはアダルベルトやスウェートについて思い出す。
「まぁまぁ、とても楽しそうですわね」
全員にニヤニヤとした笑みが浮かんでいる。
(これは、もしかしなくても、恋愛話だと思われているのでは……?)
「その、一応否定しておきますけれど、彼らにそう言った感情は全くありませんからね?」
(アダルベルト様が、イディエッテの手の甲に口付けるということはありましたけれど!!)
「そうですか……」
とてもとても残念そうな顔をされた。やはり、女子は恋バナが好きらしい。
と、キャッキャッとお話をして女子会は終了した。
かなり楽しかった。
「是非、是非……! またやりましょうねっ!」
「はい、またっ」
そうして、穏やかに貴族学院一年生としての生活は過ぎ――キードゥル94年3月を迎えた。貴族学院七年生は卒業する〈花の女神〉フローヌリンデの季節、春。
桜が咲き始め、暖かくなってきた。クリスティーネたちは、二年生に進級する――はずだった。
◇◆◇
「あぁ、楽しみです。とっても……」
ある部屋で、金髪の女が頬を染めて笑っていた。
その隣にいるのは、赤褐色の髪の女と白いメッシュの入った黒髪の男だった。
「楽しみすぎて失敗しないようにねェ? 失敗ちャッたら意味ないでしョ? ちャあんと、死んでもらわなくちャ」
「あぁ。だが、マリナに言うことではないだろ? イグニスを出せ」
「はぁい」
金髪の女は頷いて、「イグニス」と呟く。
すると、金髪の女の掌に燃えるような赤髪の女が出てくる。羽の生えた精霊だった。
「お久しぶりです、〈運命の女神〉様、〈虚偽の神〉様。ご主人」
「アッハハ、久しぶりィ。準備は順調~?」
「もちろん」
赤髪の女は勝気に微笑んだ。
「必ずや、成功させてみせますよ」




