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LXIV.フィレンツェとのお茶会

短めです。

 キードゥル93年11月


(疲れた……)


 クリスティーネは、ぐったりと机に突っ伏していた。


 クリスティーネとミカエルは、メリアティードから帰還した。そして、次の日には貴族学院に戻っている。


 そして、その日にアランとのお茶会。アランがまたいろいろと言ってきてすごく大変だった。マリナの側近であるレヴェッカとルードルフ、そして、謎の女、イグニスに関して探りを入れてみたものの、いい情報は掴めなかった。マリナは好きでも、マリナの側近に関しては興味がないらしい。


「今日は皆様、とてもお疲れのご様子ですね……。大丈夫ですか?」


 クリスティーネにそう声をかけたのは、ユティーナだ。

 ユティーナは基本的に貴族学院にいたので、メリアティードには向かっていないのだ。


「大丈夫です。明後日頑張ったら終わりですから。その後は、少しくらいゆっくりしても問題ないですよ」


 ユティーナははにかむように笑って、クリスティーネを元気づけてくれる。


「そうね……頑張るわ」

「はい」


 ちなみに、すっぽかしてしまったシリウスの母、ローザと姉のイリスには謝罪をし、また冬季休みか春季休みに話をしよう、ということになった。

 第二皇女のフィーネとのお茶会に関しては謝罪をした。何か罰が下るかもと心配したが、メリアティードでの魔族騒ぎがあったことで、なんとかお許しはもらえた。


(うぅ……殿下に会ったら、どう接すればいいのかしら)


 クリスティーネは重いため息をついた。



 ◇◆◇



「ごきげんよう、フィレンツェ様。来てくださりありがとう存じます」

「いえ、こちらこそ。病み上がりですのに、こうしてお会いできて嬉しいです」


 クリスティーネの挨拶に、フィレンツェはそう返す。


 今日はウジェートルの第二領女、フィレンツェとのお茶会だ。


 メリアティードでの魔族騒動については、領主が皇帝へ正式に報告し、各領主に通達されている。

 クリスティーネが倒れたことは軽く触れられていた。


「そういえば、来る途中にミカエル様にお会いいたしました」

「まぁ、そうなのですか?」

「はい、とても驚いた様子でした」


 フィレンツェはニコニコと楽しそうにそう報告してくれる。


(そういえば、お兄様にフィレンツェ様がいらっしゃることを言っていなかったなぁ)


 クリスティーネのせいで、ミカエルは急なフィレンツェの登場にたいそう照れ驚いていたのだが。


「フィレンツェ様にはご兄弟はいらっしゃるのですか?」

「そうですね……。兄と弟、妹がいます。弟は最近生まれたばかりで。お兄様は落ち着きがなくて、とても困った方ですわ。妹はわたくしに懐いてくれてとても可愛らしいです」


 フィレンツェはクスリと笑ってそう答えた。兄を困った方、とは言いつつも笑っているので、家族仲が悪いわけではないと思う。


「クリスティーネ様は?」

「わたくしには妹がいますよ。勉強もできますし、とても努力している子なのです。とても可愛いですよ」

「まぁ、努力家なのですね。羨ましいです」


 フィレンツェはそう言って、コロコロと笑う。

 とても笑う方らしい。とても可愛い。


「そういえば、メリアティードでの戦いはどうでしたか? 死者も出たと聞いて、とても驚いたのですけれど……」

「はい、いろいろなことがありました。……お兄様、かっこよかったのですよ」

「……あら、ミカエル様も参加されていらっしゃったのですか?」


 クリスティーネが内緒話をするように小声で言うと、フィレンツェは少し驚いた様子だった。


 どうやら、報告にミカエルの名前はあったそうだが、クリスティーネの怪我の方が大きく取り上げられ、ミカエルの名前が出ることは少なかったそうだ。

 それで、フィレンツェはあまり覚えていなかったらしい。


「はい。それに、魔族に止めを刺してくださったのはお兄様ですもの」

「まぁ、それはすごいですね」

「是非お兄様におっしゃってみてくださいませ」

「……わたくしでよろしいのですか? 烏滸がましいと思われないでしょうか」


 フィレンツェは眉を下げてそう言った。


(全然、そんなことはないと思うんだけどなぁ……)


「そんなことはありませんよ。フィレンツェ様だからこそ、とても喜ばれると思います」

「……クリスティーネ様のお言葉を信じてみます」


 フィレンツェはそう言って柔らかく微笑み、両手に握り拳をつくった。


(可愛いなぁ……)


 是非、ミカエルの前でやってもらいたいものである。


「どんな反応をされていたか、是非教えてくださいませ」

「分かりましたっ」


 フィレンツェはとても素直であった。

 クリスティーネは自分以外の色恋には意外と敏感なのである。


(どんな反応をされるのか、とても楽しみね。怒られそうな気もしますけれど)


 クリスティーネはゆったりと微笑んだ。

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