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LXIII.お祈り

 キードゥル93年11月


「お初にお目にかかります、メリアティード領主。ヒサミトラールが第一領子、ミカエル・ヒサミトラールと申します。この度は滞在を許していただき、感謝申し上げます」

「同じく、ヒサミトラールが第二領女、クリスティーネ・ヒサミトラールと申します。以後、お見知り置きを」


 そう言って、ミカエルとクリスティーネは美しい礼をした。


「いいや。こちらこそ、巻き込んでしまって申し訳ない。私の不手際だ。それから、私たちの領地を、民を守ってくれてありがとう」


 メリアティード領主は曖昧に笑って頭を下げ、クリスティーネたちに席を勧めた。


「お二人は本当に尽力してくれたと伺った。本当に、感謝しても足りない程だ」

「そんな! わたくしは……助けられなかったのです」


 クリスティーネは唇を噛んだ。


(亡くなった方々のことを思うと、助けられたなんて思えない)


「そのように自分を卑下してはなりませんよ、クリスティーネ様」

「ファミリアの言う通りです。クリスティーネ嬢がいなければ、もっと多くの者たちが亡くなっていた」


 ファミリアとファーラレンスがクリスティーネを庇う。


「大丈夫。クリスティーネは多くの人を救ったんだ。それは誇っていいことだよ」


 そして、ミカエルがクリスティーネの頭を撫でた。


「ありがとう、存じます……」


 クリスティーネは眉を下げて微笑み、少しだけ俯いた。




 そうして、話し合いは進んだ。主には、報酬と贖罪の話だ。

 ミカエルとクリスティーネ、そしてその側近たちが勝手に参加しただけなので、と言ったものの、受け取っておくことに決まった。後日、エドゥルネから採取できた角や贖罪の品をヒサミトラールに送るそうだ。


「あの、よろしいでしょうか、メリアティード領主」

「はい、何でしょう、クリスティーネ嬢」

「亡くなった方々のお祈りに行きたいのですが、よろしいでしょうか」

「……他領の方が一介の武官たちに?」


 メリアティード領主は少し不可解そうに、首を傾げる。


「お願いいたします。わたくしは葬儀にも出席することができませんでしたし、せめて……」

「分かりました。では、ファミリア、クリスティーネ嬢と共に行ってきなさい」

「かしこまりました、お父様。よろしくお願いします、クリスティーネ様」


 ファミリアはクリスティーネに微笑み、クリスティーネもふわりと笑顔を返しておいた。



 ◇◆◇



「クリスティーネ様」


 朝、起きた。リーゼロッテかフィリアーネだろう、と思っていたら、違った。

 もっと小さい。金髪で、蝶のような羽の生えた――


「み、あ……?」

「はい、ミアです。おはよう存じます、ご主人様」


 ミアは眉を下げて微笑む。クリスティーネは寝ぼけつつ、「お、はよう、ぞんじます……ミア」と返事を返した。


 まだ側近たちが起こしに来る時間よりは一刻ほど早い。しばらくして、クリスティーネの意識がはっきりし出した。


「倒れたとお聞きしましたが、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。心配をかけてごめんなさい」

「全くです」


 ミアはうんうんと頷く。


「今日は何かご予定が?」

「そうね……ファミリア様とマデレイネさんと亡くなった武官たちへのお祈りに行こうと思っているの」

「そうですか……。わたくしも、ついて行っていいですか?」

「え? まぁ、いいですけれど……」



 ということで、ミアはクリスティーネの肩の上に乗って同行していた。

 他人には見えないし、ほぼ重さはないので、特に問題はない。


「おはよう存じます、ファミリア様……マデレイネさん」

「クリスティーネ様、おはよう存じます」

「おはよう存じます。クリスティーネ様、この度は同行を許してくださり、ありがとう存じます」


 マデレイネの言葉に、「大丈夫ですよ」とクリスティーネは微笑む。マデレイネは、先日の戦いで一緒に戦った第八師団の治癒士だ。


 今回はファミリアの側近としてではなく、一人の貴族として同行している。


「クリスティーネ様、先の戦いでは、本当にありがとう存じました。お礼を何度言っても足りない程です」

「そんな! マデレイネさんもご無事で何よりです」

「数週間眠っていらっしゃったとお聞きしましたが、体調は大丈夫なのですか?」

「大丈夫です。心配をおかけしました」



 そうして、目的地につく。そこは、墓場だ。今まで亡くなった、いろいろなメリアティードの貴族の墓がある。


「そういえば、メリアティードでの伝統的なお祈りはあるのでしょうか? あるのなら、合わせたいと思うのですけれど……」

「うーん、精々好きなお酒や食べ物、お花を供えるくらいだと思います。あと、魔力を使って祈る、くらいでしょうか。供えるためのお花は持参いたしましたし……」

「強いて言えば、〈海の女神〉に祈ることでしょうか」

「何故〈海の女神〉なのですか?」


 マデレイネによると、メリアティードでは南東に海があることもあって、〈海の女神〉への信仰が高いのだとか。暑い気候であることも関係しているそうだ。


「あ、そっか。他の領地ではしないのですね」

「では、わたくしとファミリア様で先に詠唱をしてから、クリスティーネ様に復唱していただきましょうか」

「そうですね」


 マデレイネの言葉に、クリスティーネは頷く。

 亡くなった三人の武官の墓まで歩いた。魔法で加工された石にはそれぞれの名が刻まれている。実はあと一人亡くなっているのだが、その武官は自身の屋敷に墓があるらしい。城に墓を建てるか、屋敷に建てるのかは選択制なのだ。


 ファミリアが、事前に摘んできたという花を供えて、クリスティーネたちはしゃがんだ。

 ミアもクリスティーネの肩から降りて、空中でも祈る姿勢を取った。マデレイネは杖を出す。


『〈海の女神〉シェルエナよ――』

「〈海の女神〉シェルエナよ――」


 目を閉じて、祈り続ける。マデレイネとミアは魔力も捧げている。

 クリスティーネとファミリアは魔力奉納ができない分、精一杯祈った。



(どうか、どうか。来世でも幸せに生きられますように……!)

受験が終わったので、これからはじゃんじゃん書いていきます!

お楽しみに!!


68ptもありがとう存じます!これからも頑張るので、ブクマ、★の評価もよろしくお願いします!!

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