XXXIX.帰還と第二皇女からの招待状について
キードゥル93年8月
「おかえりなさいませ、お兄様、お姉様!」
そう言って笑ったのはリュードゥライナ。
出迎えてくれたのは、アイリスとリュードゥライナだったようだ。レトルートは仕事があるのだろう。
……久しぶりに会ったなぁ。
クリスティーネの口角はずいずい上がっていった。
「只今戻りました、リュードゥライナ」
「はいっ、お帰りを楽しみにしていました!」
リュードゥライナはとびきりの笑顔を向ける。
……可愛いっ。
無論、クリスティーネはこの笑顔にやられてしまったのだが。
「おかえりなさい、ミカエル」
「はい、只今戻りました、アイリス母上」
ミカエルとアイリスは見つめ合って微笑んだ。傍から見れば、美男美女の母子である。
「クリスティーネも、おかえり」
「只今戻りました、お母様」
声をかけてくれたアイリスにクリスティーネも微笑む。
「中に入りましょうか」
アイリスの声かけで、クリスティーネたちは城の中に入った。
「えっ?これは……」
クリスティーネは目を瞬かせた。
城の中が美しく装飾されていたのだ。掃除は常時行き届いているが、今日は普段よりピカピカに見える。
「お母様、これはどうかなさったのですか?」
「あら、忘れたの?夏季休みには、レーニアティータ皇国よりお客様がいらっしゃると報告してくれたのは、クリスティーネとミカエルでしょう?それで、装飾を増やしたのよ」
「な、なるほど……」
クリスティーネとミカエルは納得する。
……確か、一週間後。アダルベルト・インディバナ様とスウェート・インディバナ様がいらっしゃるのよね。
「そういえば、リュードゥライナ、魔法はどれくらい進みまして?表は役に立ったかしら」
「はいっ、わざわざ表を作っていただいてありがとう存じます、お姉様。……ただ、進行度は、あんまりでして……。まだ魔石から魔力を抜く段階なのです」
リュードゥライナは「うぅ……」と項垂れる。
「大丈夫よ。リュードゥライナは自ら魔法を頑張ろうと努力していますもの」
「はい……ありがとう存じます。エリザベッタにも似たことを言われましたわ」
リュードゥライナは後ろを振り向いて「ねぇ?」とエリザベッタに同意を求める。
「前を向き、クリスティーネ様とお話していてくださいませ、リュードゥライナ様」
「はぁい」
口を尖らせてそう言い、リュードゥライナはクリスティーネに青紫の瞳を向ける。
「リュードゥライナ、できそうな日はわたくしも訓練に参加しますね」
「まぁ!お姉様とご一緒できるだなんて嬉しいです。頑張れそうですわ」
リュードゥライナはパッと顔を輝かせる。
「そういえば、クリスティーネ」
後ろを歩いていたミカエルがクリスティーネに声をかける。
「レスツィメーアについてなんだけど、第一審査の座学から、通過者をリストアップしたんだ。夕食の時に持ってくるから見ておくれ。アイリス母上も」
「分かったわ」
……わぁ、そんなことまでしてくれたんだ。
「お兄様、ありがとう存じます」
「いいんだよ」
そう言ってミカエルはニカッと笑った。
◇◆◇
『〈料理の神〉ルーゴデオに感謝を』
そう皆で言い、夕食が始まった。
しばらく食べ進めると、ミカエルは文官――ヘンリックから木札をもらい、それをレトルートに渡す。
「父上、レスツィメーアの通過者です」
「あぁ、ありがとう」
レトルートは木札を受け取ると、目を通した。
「領地内に関してはこれでいいだろう。陛下からも了承のお返事をいただいたからな。それと、他領に関してなのだが」
「決まったのですか、父上?」
「あぁ。他領は各学年、各コースの最優秀者候補のみとなった」
……ふぇっ!?
「……レトルート様、レスツィメーアはそこまで危険視されているのですか?」
「そのようだな。未知のものに対する恐怖もあるのだろうが……まぁ、分からんでもないだろう」
「どういうことですか?お姉様の開発したレスツィメーアが広まった方が、国力も上がるでしょう?どうして広げるのを制限するのですか?」
リュードゥライナは首を傾げた。それにミカエルが答える。
「新しい魔法は危険性も確認できていないし、研究も進んでいないだろう?レッフィルシュット皇国は今のところ反乱分子が多い訳ではないけれど、それで反乱でもされれば、対処が難しくなるからね。どれくらい攻撃力が高いのか、応用魔法として機能するのか、防御魔法でどのくらいの魔力を使えば最小限で防ぐことができるのか……きちんと皇族や側近たちは把握しておかないといけないからね」
「な、なるほど……!勉強になりますっ」
リュードゥライナはコクコクと頷く。
「そういえば、クリスティーネ。皇族からの招待状が来ていたと聞いたのだけれど?」
「あっ!私もレンリトルやサミュエルから聞いたよ」
「あぁ……どのような対応をするべきなのでしょうか?多分、レスツィメーアに関しては絶対に披露することになってしまうと思います」
アイリスは「うぅん……」と眉を寄せて考える。他の者もそれぞれ険しく困った顔をした。
「衣装の指定があったわけでも、レスツィメーアをご覧になりたい、とおっしゃったわけでもないのよね?それとなく、聞けないかしら?」
「……わたくし、中央部には、まだ伝手がなくて……。三人はありますか?」
クリスティーネは無礼だと分かっているが、後ろを振り向き側近たちに目を向けた。今、付いてくれているのは護衛練習をしているラナ、ラナを見守っているイディエッテ、給仕のユティーナだ。
「ざ、残念ながら……」
「……」
ユティーナとイディエッテは首を横に振った。クリスティーネはラナに視線を向ける。
「皇族の側近ではないのですけれど、従妹のレッフィンテ家に友人がいます。アナスタシア・レッフィンテ様ですわ」
「あの、双子で有名なアナスタシア・レッフィンテ嬢か……」
ミカエルはそう呟く。
実を言うと、クリスティーネにも、その名は見覚えがあった。
……試験の総合で、ファミリア様と同じ点数だったのよね……。確か、オルタンシア・レッフィンテ様という双子の方も、ちょうど500点でレイ・ミーティリジア様を抜かしていたわ。
「では、そのアナスタシア・レッフィンテ様に聞いてくださる、ラナ?」
「我が主の仰せのままに」
ラナは美しいカーテシーをしてそう言った。
「では、その件に関しては、アナスタシア・レッフィンテ嬢からの連絡が来たら報告をお願いね、クリスティーネ」
「分かりました」
そうして、夕食は終了した。
お願いまでたどり着けませんでした……次こそはっ!
(フラグじゃないよ??




