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XI.専属精霊

キードゥル88年4月


クリスティーネは本を閉じ、スッと本から顔を上げた。バルコニーのドアが開いている。


(……空中に魔力の気配)


何やら小さなものが高速で動いている。魔獣だろうか?かなり大きな魔力の反応だ。


警戒していると、いつの間にか本の上に立っていた。否――浮いている、というのが正しい。


「ごきげんよう、クリスティーネ様。いえ、今はこんばんは、言うのが正しいでしょうか」


肩くらいの長さに切っている金髪に月のような金の瞳。蝶のような羽――。


「えっと……ミア様?」

「覚えていてくださったのですね。嬉しいです」


昨日、庭であった精霊――ミアだ。


「今日は何の用?」

「言ったでしょう?また明日の夜に、と」


(……確かに、そうだったね)



『また明日の夜にでもお伺いいたします』



確かにそんなことを言っていた。


「……わたくしに会って、何をするのですか?」

「クリスティーネ様をわたくしの主にするためです」


クリスティーネが不思議そうな顔をすると、ミアはニコリと微笑んで「精霊について一から、教えて差し上げます」と言う。クリスティーネは「……お願いいたします」と言って頭を下げた。


(わたくし、分からないことだらけね)


「まず、精霊という種族は幼精霊と精霊に分かれます。幼精霊はその名の通り、成長途中の精霊です」

「……昨日、貴女のところに連れていってくれた子たち?」

「はい、ああいう、丸い光がまだ幼精霊と呼ばれる精霊になります――」



◇◆◇



精霊にはいくつかの進化があります。まず、生まれたばかりの精霊。この状態では何もできないです。唯一できることといえば、空中を漂うくらいでしょうか。人間の精霊使いの素質がある方々にも見えません。

そして、次の段階。話せるようになります。人間にも見えるようになりますし、人間との意思疎通が可能です。

それから、幼精霊から精霊になります。わたくしのような、人間の姿に羽のはえた姿をしています。ここから、人間との専属契約ができるようになりますよ。

最終進化です。ですが、まだ少し段階があるんですよね。まず、人間に化けられるようになります。最初は五歳頃の子供でしょうか。

……ほら。

そこから、十五歳、二十歳くらいにはなれますね。そうして、最終段階では好きな年齢に化けられるようになります。赤子や老人は難しいでしょうが、利益もありませんけれどね。



◇◆◇



「分かりましたか?」


五歳頃の姿になっているミアはそう言って微笑む。今のミアは胸の上あたりまで髪が伸び、羽も消えている。同年代の子供にも見えるようだ。


「はい、ありがとう存じます」

「では、わたくしのお話に入りますね。こちらが本題です」

「え、えぇ。主っていうことの話ですよね」

「はい。先程、説明しました、専属契約のことです。人間と精霊の契約。精霊が人間を守るために結ぶ、言わば主の盟約のようなものです。絶対に結ばなければならない、というわけではないんですが、わたくしは少ーし周りが面倒でして」


ミアが目を伏せ、言い放つ。相当嫌だったのだろうか。


「それならば、わたくしでなくてもいいのでは――」

「……!勘違いしないでください。わたくしは仕方なく貴女と契約を結ぼうっていうんじゃないです。貴女のことはずっと前から気にかけてました」

「前から?」

「はい。それこそ、アイシェ様だった頃から。ただ、アイシェ様が精霊使いではなかったので、気にかけることしかできませんでしたが」


ミアの目は真剣だった。嘘ではない。

アイシェを気にかけてくださったという事実だけでも、クリスティーネにとっては嬉しい。


「ありがとう存じます、ミア様」

「ミアと呼んでください。貴女はわたくしの主なのですから」

「えぇ、ミア」


クリスティーネはミアの少し冷たい手を握って、微笑んだ。


(信用出来る、というのはとてつもないわたくしの味方だ)


「それで、クリスティーネ様。わたくしと契約を結んでくださいますか?」


ミアは手を差し出し、まるで物語のプロポーズのように跪く。

クリスティーネほ笑って頷いた。


「はい」

「それじゃ」


ミアが両手を大きく広げ、金の瞳を隠す。


「精霊界を創る〈精霊の女神〉フェステリーアよ。光を司る六大精霊が一人、ミアの名に応え、契約石に精霊界と人間界の境目を越える許可を与えよ」


ミアの手が金に淡く光る。

光が消えたそのとき、ゴトッと重いものが床に落ちた音がする。


「わっ」


大きな魔石だった。不透明な白の魔石。顔くらいの大きさがあるのではないだろうか。


「大丈夫ですか、クリスティーネ様?」

「えぇ、大丈夫。ところで、それは?」


ミアがもう片方の手に持っていた魔石をベッドの上に置いて、しゃがむ。もう一つの魔石は指の第一関節くらいしかない大きさの魔石だった。


「うんしょっ」


ミアが先程落ちた魔石をベッドの上に置く。人間の顔くらいの大きさのある魔石だ。


「この魔石は?」

「これは契約石です。精霊界にしか咲かない花から取れます。この二つの契約石は対になっていて、大きい石を持つ方が主になれるんです」

「これを使って契約を行う、のね?」

「その通りです」


ミアが淡く光り、元の小さい姿に戻って羽も生えた。

どうやら、こちらの姿ではないと、精霊契約ができないらしい。


「これに魔力を込めていてください」


魔力を込めていくと、ミアが何かを唱え始める。そうしていると、ミアの装飾品と契約石がキラキラと光りだした。段々大きな光になっていく。

クリスティーネが魔力を注いでいる契約石がだんだん小さくなり始めた。反対にミアの契約石は大きくなっていく。


「――クリスティーネ・ヒサミトラール」


契約石に魔力を込め終わると、ミアがフゥ、と息を吐く。

二つの契約石は同じくらいの大きさになり、金色とオパールのような色が混ざっている。幻想的な色だ。


「これで、契約は完了です。契約は石を割ったりしない限り壊れないので、今更契約を破棄するのは駄目ですよ」


ミアは悪戯っ子のように笑った。

大きい契約石を精霊が、小さい魔石を人間が持つと精霊が人間の主になります。でも、ほとんど前例はないですし、精霊界においての規則を破ることになりますが。


あ、次回エピローグだと思います、多分。零章は終わりです。

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