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偽聖女の生贄で性奴隷にされた令嬢は転生して神の愛子となる  作者: 華咲 美月


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第二十二話 戦争の始まり

だんだん完結に近づいてきました。

なるべく間を開けずに投稿するつもりなので、もうしばらくお付き合いください。

 私とマリアス様の幸せな結婚生活が続いていました。

 魔王の娘ヴィシュと四天王もメイドと執事の仕事に慣れてきたようです。


「御神祖さまぁ~。お願いがありますぅ~」

 ある日、ヴィシュヌがおねだりしてきました。

「御神気を私めに注入してほしいのです。そうすると、私の中の邪念や悪念が浄化されてより一層人間界に馴染めるようになるのです」


「いいですよ。こっちに来なさい」

 私は近寄ってきたヴィシュヌに口づけました。


 口から神気を送り込んでいきます。

 炭酸水が弾けるみたいにヴィシュヌの身体から金色の粒子が立ち上っていきます。


 私が唇を離すとヴィシュヌは力が抜けてクタッとしゃがみ込みました。

 その後、我に返って三指を突いてひれ伏します。


「御神祖様のお陰で邪念や悪念が消えて眷属として相応しい姿になることができました。ありがとうございます」

 ヴィシュヌの背中から白い羽根が広がりました。

 頭の上には金色の光輪が浮かんでいます。

 まるで天使のような姿でした。


「他の四天王にはあなたの方から神気を分け与えておいてくださいね」

 私が悠然と微笑むとヴィシュヌは畏まって頷きました。


「はい。ありがたき幸せに存じまする~!」


 四天王たちは口づけでヴィシュヌから神気を分けてもらって、白い羽根を持った天使のような姿にシェイプチェンジしたのでした。


 完全に天使になってしまったわけではなくて、シェイプチェンジの魔法で魔族の姿と天使みたいな姿を切り替えられるようになったそうです。

 心の中の邪念や悪念が消えたので神の愛子の眷属として恥じなくて良いようになったそうです。


 私の身体から滲み出る神気によって勇者の館の周辺は聖域のようになっていました。

 精霊や妖精がどこからともなく集まって来るようになっていたのです。


 私は勇者の館の周りに悪い想念を弾く結界を張りました。

 神の愛子で亜神である私は魔法を使わずに念じるだけで結界を張ることもできるのです。


 一週間に一度は大教会の祈りの間で創造神ブリミアル様に祈りを捧げていました。

 大教会を中心にノルテア王国全体に神気が行き渡り魔物の被害が少なくなっていったのです。


 暗黒邪神教徒もノルテア王国では活動できなくなり隣国のガルド帝国に拠点を移したようです。

 いずれはガルド帝国に乗り込んで暗黒邪神教を根絶やしにしないといけないのでしょうけど、今は新婚生活が幸せだったので戦いに身を投じる気にならなかったのです。


 それが甘い考えだということは、後日明らかになったのですが……。


 ◇◇◇◇


 新婚生活が始まってから一年ほどが過ぎました。

 私は創造神ブリミアル様に感謝の祈りを捧げながら、幸せの絶頂にいたのです。

 それが壊されるような報告が届きました。


 王宮騎士団のブレイバー騎士団長が勇者の館を訪れて来ました。

 彼がもたらした情報は恐ろしいものでした。


 一年前にガルド帝国に聖女イブリースが異世界から召喚されて現れたというのです。

 聖女の奇跡を万民に与えてあっという間に人心掌握し、ルードルフ皇太子の婚約者になったというのです。


 私は恐ろしさで身体がガクガクと震えました。

 前世のランバード王国で起こったことと同じことがガルド帝国で起きているのです。


「ガルド帝国は元々国力がノルテア王国よりも上だったんだが、最近は軍事力を一層強化して我が国に戦争を仕掛けてきたんだ」

 ブレイバー騎士団長は眉間にシワを寄せて言いました。


「まだ正式な宣戦布告はされていないが、辺境の国境では駐屯兵が戦いに駆り出されている。本格的な軍事侵攻を仕掛けてくるのも時間の問題だろう」


「そ、そんな……」

 私は目の前が暗くなりました。

 聖女イブリースの正体は創造神ブリミアル様と敵対している邪神です。


 前世では魅了の魔法で心を操られて、性奴隷として数年間、性奉仕させられていた挙げ句にゴブリンに喰い殺されて処刑されたのです。

 恐ろしい記憶が蘇ってきました。


「大丈夫だよ、オクティさん……」

 マリアス様が私の肩を抱いて慰めてくれました。

「モーリタニアに生まれ変わったオクティさんは神の愛子なんだ。邪神なんかには負けるはずがないよ」


「……マリアス様……そうですね。創造神ブリミアル様から邪神イブリースと戦う使命を与えられているんですもの。断固として戦って邪神を倒さないと」

 私は震えが止まって勇気が湧いてきました。

 マリアス様との幸せな生活を守るためにも、邪神イブリースと戦って打ち破らないといけないのです。


 ◇◇◇◇


 事態が悪化したのは二週間後でした。

 ガルド帝国が宣戦布告してきてノルテア王国との国境にある西の平原に十万人規模の大群を布陣したのです。


 ノルテア王国も戦争の準備をしていたのですぐに軍団を派遣したのですが、兵員数が六万人とガルド帝国に負けているのです。


 ガルド帝国は豊かな農業地帯と豊富な鉱物資源を持っていて、軍事力に割く余裕が大きいのです。

 対してノルテア王国は食料の一部を輸入に頼っていて、ガルド帝国に比べれば軍事力に割り当てる予算が少なかったのです。


 両軍が西の平原で衝突しました。

 私は勇者パーティーといっしょに従軍することになりました。

 ノルテア王国にとっては国家の存亡をかけた戦いです。


 私は本陣で勇者パーティーとブレイバー騎士団長に守られて待機することになりました。

 ヴィシュヌと四天王も傍に控えています。

 ガルド帝国に邪神イブリースが味方しているのですから、神の愛子の私は切り札になるのです。


 通常戦力で戦いながら、ガルド帝国軍の出方に応じて勇者パーティーが出陣することになりました。

 私は邪神イブリースが何かを仕掛けてきたときに対応する係です。

 ヴィシュヌたちは状況に応じて自由に動ける遊軍という位置づけになりました。


 ノルテア王国軍は数の劣勢を魔法部隊を上手く使って補っていましたが、ガルド帝国が聖女親衛隊を投入してくると戦況が一変しました。

 聖女親衛隊には魔法防御の結界が張られていて攻撃魔法が効きにくかったのです。


「くそっ! ガルド帝国には優秀な結界魔法師がいるのか!」

 ブレイバー騎士団長が悔しがりました。

 ノルテア王国の魔法部隊は優秀です。

 その攻撃魔法を防ぐ結界魔法を張ることができるのはそれ以上に優秀な魔法師だけなのです。


「違います! あれは邪神イブリースの張った結界です!」

 私は聖女親衛隊が纏っている結界の魔力に覚えがありました。

 前世で聖女イブリースが持っていた神聖魔力です。


 実際は邪神であるイブリースが人間を欺くために邪神力を神聖魔力のように見せかけているのです。


「このままではまずいな……」

 ブレイバー騎士団長が呟きます。


「御神祖様、私達に出陣をお命じください!」

 魔王の娘ヴィシュヌと四天王が魔族の姿になって進み出てきました。

 ヴィシュヌは最初に会った頃のマイクロビキニみたいな魔族の衣装を着ています。

 四天王も執事の服を脱いで、魔族の鎧を着ています。


「聖女親衛隊など我ら五人で蹴散らしてご覧に入れます!」

 ヴィシュヌの言葉に四天王が決意を込めて頷きます。


「わかりました。出陣を許可します。存分に暴れてきなさい!」

 私が威厳を込めて命じるとヴィシュヌと四天王は返事をして飛び出していきました。


 混戦の中でヴィシュヌ達が聖女親衛隊と会敵します。

 ヴィシュヌが右手を天に突き上げると上空に黒い雷雲が集まってきて渦を巻き始めました。

 魔族だけが使える極大雷魔法ダークプラズマを放つつもりなのです。


 大地を揺るがして神の怒りのような極太の稲妻が聖女親衛隊に降り注ぎました。

 一瞬、魔法防御結界が反応して光りましたが、すぐに砕け散って聖女親衛隊にダメージを与えます。


 ヴィシュヌたちは私が神力を分け与えて眷属としての能力を強化したので、魔王を超えるような戦闘能力を持っているのです。


 聖女親衛隊が崩れたことでガルド帝国軍に有利になっていた戦況を回復させることができるようになってきました。


「まさか、魔王の娘と魔王軍の四天王に助けられるとはな……」

 マリアス様が自嘲気味にため息を付きました。


「ヴィシュヌたちは、今は私の眷属ですから」

 私が柔らかく微笑みます。


 戦況は予断を許しませんが、ノルテア王国軍はまだ勇者パーティーを温存しています。

 神の愛子である私も邪神イブリースに対応するために待機しているのです。


「このままヴィシュヌ達が暴れまわってガルド帝国軍を押し込めれば良いんだが……」

 マリアス様は希望を述べましたが、そう簡単にいかないことはその後明らかになりました。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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