第十六話 ノルテア王国の王様と話をする
あまり引き伸ばしせずに、完結までサクサク進めるつもりでいるのですけど、読者が読みたいシーンは描かないといけないので、なんだか進行が遅くなっています。
大教会から王城までそれほど離れていませんでしたけど、貴族が乗るような華美な馬車が用意されていました。
私はマリアス様たちと一緒に馬車に乗って王城へ向かいました。
城門を越えて奥へと移動します。
城の入り口に騎士と侍女が迎えに出ていました。
案内されて二階の小会議室に移動します。
今回は謁見の間ではなく小会議室で国王陛下と王妃陛下と面会するそうです。
ノルテア王国の主な重臣たちも呼ばれているそうです。
私は不思議と緊張していませんでした。
神の愛子として黒い宝珠から救い出されてから、頭の中がほわほわと多幸感に包まれていて前世での嫌なことも思い出さなくなっていたのです。
ノルテア王国の王様に会うのも少し楽しみにしていました。
私達が小会議室に入室すると国王陛下と王妃陛下と大臣達がすでに着席して待っていました。
普通は身分の高いものが後から入室してくるものなので驚きました。
「神聖にして侵すべからざる神の愛子オクティ様、ワシがノルテア王国の国王のアブノーじゃ」
「私が王妃のクレメントルですわ」
国王陛下と王妃陛下が立ち上がってお辞儀をしました。
他の重臣たちも立ち上がって私に向かってお辞儀をします。
「創造神ブリミアル様の愛子で在られるなら、国王よりも上位の神聖な存在じゃ。皆のもの無礼を働くで無いぞ」
「御意!」
アブノー国王陛下の言葉で重臣たちや護衛の近衛騎士達が胸の前で腕を横にして誓いました。
私がびっくりしたのは国王陛下がアブノー子爵の転生した姿だったからです。
創造神ブリミアル様は私に親しい魂をモーリタニアに転生させたと言っていましたけど、アブノー子爵の魂も送り込んできていたのです。
前世でのアブノー子爵との思い出が少し蘇って微妙な気分になりました。
アブノー子爵には変態的なことばかりされていたからです。
でも、それはアブノー子爵が私に惚れ込んでいたからでした。
ブリミアル様から見ればこのモーリタニアに送り込んでも良いような、私に親しい魂に思えたのでしょう。
それにしても、子爵から国王に格上げされたのですからすごい出世です。
「神の愛子オクティ様、ワシの顔に何か付いておるかな?」
私がアブノー国王の顔をじーっと凝視していたので怪訝な顔をされました。
「いえ、失礼しました。国王陛下が前世で私の知っている人に似ていたのでつい見つめてしまいました」
「なんと! 神の愛子オクティ様には前世の記憶がお有りになるのか!」
「はい。でも、邪神イブリースに辱められて嬲りものにされ、最期には食われて死んでしまった記憶です。あまり思い出したくありませんわ」
私が眉をハの字にして語ると一同が動揺してどよめきました。
「邪神イブリースというのは創造神ブリミアル様の敵なのですな?」
アブノー国王は重々しい声で言いました。
「そうです。創造神ブリミアル様と敵対している古い神だと仰っていました」
「神の愛子で在らせられるオクティ様が、このモーリタニアに遣わされた理由がわかったのじゃ。邪神イブリースを倒すためですな?」
アブノー国王の眼光が鋭くなりました。
「そうです。私の目的は邪神イブリースを倒すことです」
色々と話しが省略されているのですが、アブノー国王は正しい結論に到達していました。
国王陛下だけあって頭の回転が速いのでしょう。
「私は邪神イブリースと戦うために力を蓄えなければなりません。そのためにモーリタニアに転生してきたのです」
私が決意を込めて言うと皆が頷きました。
「歴代の魔王は邪神イブリースの手下の可能性があるな」
アベル様が口を開きました。
「オクティを黒い宝珠に封じ込めて神聖力を搾り取っていたんだ。まず間違いなく邪神とつながりがあるだろう」
マリアス様も腕を組んで難しい顔をしています。
「やっぱり逃がした魔王軍の四天王と魔王の娘ヴィシュヌを見つけ出して倒さないといけないわ」
マリアンヌ様がアブノー国王の方を見ました。
「勇者パーティーのメンバーがそういうのなら間違いないじゃろう。ノルテア王国の全力を上げて魔王軍の残党である四天王と魔王の娘ヴィシュヌを討伐するのじゃ」
アブノー国王の命令に勇者たちだけでなく重臣たちも頷きました。
「じゃが、その前に神の愛子で在らせられるオクティ様にはステータスの鑑定を受けてほしいのじゃ」
「こちらに用意した鑑定の水晶に手を触れていただくことでステータスが見えるようになりまする」
重臣の一人が台の上に乗った直径三十センチほどの水晶を運んできました。
「鑑定を受けるのは良いのですけど、その前にお願いがあるんです」
私は胸の前で手を組んでお願いしてみました。
「神の愛子だからといって恭しく扱わないでほしいんです。普通の市井の女の子のように扱ってほしいのです。呼び方もオクティと呼び捨てにしてもらって構いません」
「神の愛子様を呼び捨てにするなど……。とは言えオクティ様のご意思で市井の女の子のように扱ってもらいたいと言うなら叶えないわけにはいかぬのじゃ」
アブノー国王はしばらく難しい顔をして唸っていましたが言いました。
「それでは王侯貴族はオクティ殿と呼ばせてもらおう。それ以外のものはオクティさんとでも呼べばよいじゃろう。住居も城下町に用意するのじゃ」
「オクティさんの住むところですが、俺達の住んでいる勇者の館でいいでしょう?」
「そうね、オクティさんには護衛が必要だもの。私達、勇者パーティーといっしょに暮らしたほうが良いわ」
「ううむ、そうじゃな。その方が良いか……」
マリアス様とマリアンヌ様の提案を受けて私は勇者の館で暮らすことになりました。
「それでは、オクティ殿、この水晶に手を触れてください」
重臣に促されて水晶に手を置いてみました。
光る魔法陣が展開されて空中に文字が浮かび上がります。
名前 オクティ
種族 亜神
加護 創造神の加護∞
祝福 創造神の祝福∞
称号 神の愛子
特徴 不老不死、物理攻撃無効、魔法攻撃無効
スキル 全魔法∞、剣技∞、格闘術∞
小会議室の全員がどよめきました。
「∞というのは初めて見たのじゃ」
アブノー国王が重臣に説明を求めています。
「∞というのは古代語で『無限大』という意味であったはずです」
「なんじゃと! ううむ、さすがは神の愛子様じゃ……」
アブノー国王たちが唸っています。
「勇者パーティーの俺達より強いんじゃないのか」
「比べ物にならないわよ……」
「種族が亜神で不老不死だぞ。人間族の俺達とは本質的に違うんだよ……」
アベル様が目を見開いて驚いています。
「私は邪神イブリースと戦うのがブリミアル様から与えられた使命ですから人間を超越していますけど、普通の女の子の様に暮らしていきたいんです」
私はちょっと寂しくなりました。
自分が人間ではなくなって超越した存在になっていたからです。
少し仲良くなったマリアス様たちと普通に交流できなくなったりしたら寂しいのです。
「あぁ、わかっている。オクティさんが俺達と変わらない人間らしい精神をしているってことは」
マリアス様が私に微笑みかけてくださいました。
「俺達も普通の女の子のように扱ったほうが楽だから、そうさせて貰うつもりさ」
「私のことを実のお姉さんのように思ってもいいのよ」
アベル様とマリアンヌ様も優しく背中に触れてくださいました。
「うむ、それで良いのじゃ。ワシら王侯貴族もオクティ殿がストレスを感じることなく人間の女の子のように幸せに暮らしていけるように最善を尽くすつもりじゃ」
アブノー国王陛下とクレメントル王妃陛下が顔を見合わせて頷きました。
その後は、色々と私の生活のことなどを打ち合わせして、小会議室での会談はお開きになりました。
私はマリアス様たちと一緒に勇者の館に移動しました。
勇者の館は城下町の高級住宅街にありました。
貴族の屋敷に匹敵するような大豪邸です。
執事やメイドなどの使用人も大勢雇っている様でした。
アブノー国王が私が勇者の館で暮らすことに賛成したのは、ここが普通の貴族の屋敷と同様の規模で、それでいて安全性も高いからだということがわかりました。
救国の英雄である勇者に喧嘩を売るような盗賊団などは王都にはいなかったのです。
「オクティさんの部屋は三階の一番いい部屋にしますからね。調度品や服や小物類などもオクティさんの好みに合わせて購入しますからね」
マリアンヌ様に笑顔で案内されました。
「メイドを二名つけておきますから何でも用事を言いつけてくださいね」
部屋の中に若い可愛いメイドが入ってきました。
「ララです」
「リリィと申します」
ペコリとお辞儀をするので私も挨拶をしました。
「オクティといいます。お世話になるからよろしくね」
私はララとリリィとはお友達になりたいと思いました。
女の子同士のガールズトークなどを楽しみたいと考えたのです。
前世では公爵令嬢だったので市井の女の子のような気楽な会話はしたことがなかったのです。
「お着替えをしてから、お風呂とお食事の準備をしますので寛いでお待ち下さい」
ララがソファーを勧めてきます。
着替えの準備ができるまで待つことにしました。
「それじゃぁ、ゆっくり寛いでいてね」
マリアンヌ様が笑顔で手を降って部屋から出ていきました。
リリィが室内着のゆったりとした着心地の良いワンピースを持ってきたので着替えさせてもらいました。
その後はお風呂に入れてもらってから、夕食を二階の食堂でマリアス様たちと一緒に摂りました。
今後のことなど色々話をしてリラックスできました。
三階の部屋に戻ったら寝る準備ができていたので、夜ふかしせずにすぐに寝ることにしました。
なんだか色々ありましたけど、今は幸せな気分で眠りに落ちました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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