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偽聖女の生贄で性奴隷にされた令嬢は転生して神の愛子となる  作者: 華咲 美月


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第十三話 黒い宝珠からの開放

今回のエピソードから主人公のオクタヴィアの逆襲が始まって行く予定です。


 それからモーリタニアでは長い年月が流れました。

 黒い宝珠の中の私は怨みの籠もった暗黒波動を放射し続けていました。

 それを受けて魔王の部下に四天王と呼ばれる幹部が生まれました。


 炎魔将軍アグニッパ、水魔将軍ウルブス、風魔将軍ゼビラ、土魔将軍クウェガル。

 人類に味方している四大精霊は魔王軍の強敵でしたが、魔王の部下の四天王が誕生したことで互角以上に戦えるようになったのです。

 始祖魔王から数えて七代目の魔王ヴォルケーノは大喜びで、黒い宝珠に拝跪し感謝の意を表しました。


 私は再び長い眠りにつきました。

 この頃には私の魂はかなり浄化されて怨みの念が薄れてきていたのです。

 魔王軍は強大化しましたが、力の源である黒い宝珠は徐々に力を失っていたのです。


 そして私の魂が完全に浄化されてランバード王国で受けた虐待を忘れていったころに、脳内に創造神ブリミアル様の声が響きました。


『 オクタヴィア、よく頑張りましたね……。そろそろ暗黒波動を放出する役割は終わりです。あなたと強い絆で繋がっている魂をモーリタニアに送っておきました。もうすぐ魔王が倒されて黒い宝珠から開放されますよ…… 』


(私と親しい魂と再び会えるのですか?)

 私は微睡みの中で心が震えました。

 黒い宝珠の中で何万年も孤独だったのです。


『 会えばわかります。けれども、彼らにはランバード王国時代の記憶は無いのです……。あなたも、性奴隷にされていた頃の記憶は忘れていてもらったほうが良いでしょう? 』


(それは、もちろんです……。私もやっとランバード王国で性奴隷にされていたことを忘れかけていたんです)


『 それなら良いですね。記憶をなくした状態で懐かしい魂に再会してご覧なさい。きっと幸せになれるでしょう…… 』


 ◇◇◇◇


 人間の勇者たちは三人組のパーティーで魔王城を襲撃しました。

 今代の魔王は魔王剣ゲヴェスヴォルガーの力を全開放して戦ったのですが、あっけなく敗れてしまいました。


「やったぞ! 魔王ヴァリアスを倒したぞ!」

「油断するな! 魔族の力の源である黒い宝珠を破壊するんだ!」


 人間の勇者たちは魔王城の最深部にある黒い宝珠を見つけると聖剣を叩きつけて破壊し始めました。

 硬い宝珠の魔甲石が削られていきます。


「待て、黒い宝珠の中に人がいるぞ!」

「傷つけないように慎重にやれ!」


 黒い宝珠は外郭が完全に壊されて私の身体は丁重に引っ張り出されました。

 前世と同じ腰まである白銀の髪がサラサラと流れます。

 肌は抜けるように白くて、瞳は烟るような煌めきを帯びた翡翠色でした。


 私の姿を見た勇者パーティーの女性が慌ててバサリとマントをかけてくれました。

 私は美しいプロポーションを晒した一糸まとわぬ姿だったのです。


「なんて美しい女性なんだ……。本当に人間なのか?」

「マリアス、失礼なことを言うな。この女性が放っている凄まじい神気がわからないのか?」

「アベルの言う通りですわ。大聖女の私ですらこれほどの神気に触れたことはありません」

 勇者パーティーのメンバーが私を抱きかかえてなにか言い争っています。


(マリアス……アベル……!?)

 私は記憶にある名前を聞いてまどろんでいた意識が覚醒してきました。


「僕は勇者マリアスと言うんだ。あなたの名前を教えてもらえるかい。どうして黒い宝珠の中に閉じ込められていたのかも」


「……わ、私は、オクティ……」

 私はかすれる声でそれだけを言いました。

 まだ覚醒したばかりでうまく喋れなかったのです。


「そうか、オクティという名前なんだね。俺は聖騎士のアベルだ」

「私は大聖女のマリアンヌよ。勇者マリアスと協力して魔王を倒す旅をしていたの。それもやっと成就したけれどね」


 私の目からポロポロと涙が溢れてきました。

 勇者たちは前世のランバード王国で親しかった人達の転生した姿だったのです。


「おいっ! 泣かせてしまったじゃないか! お前の顔が怖いんだろう!」

 アベル様がマリアス様を小突きました。

「俺のせいにするな! 済まない泣き止んでくれ……。君に危害を加えるつもりは一切ないから。ただ俺達も国王に事情を説明しないといけないから、君が黒い宝珠の中に閉じ込められていたわけは知りたいんだ。」


「わ、私は暗黒波動を放出するために、黒い宝珠の中に封じられていました……」

 私は創造神様のことは伏せてそれ以外は正直に話しました。


「やっぱりそういうことか! オクティ嬢は神気を纏った神の愛子で魔王に捕まって黒い宝珠に封じられていたんだろう。魔王はオクティの力を吸い取って暗黒波動を放出させていたんだ!」

 アベル様の言葉で全員が頷きました。


「人類が何度魔王を倒しても復活してきたのは、神の愛子を捕まえて黒い宝珠の中で力を搾り取っていたからなのか。なんで酷いことをするんだ!」

 マリアス様は拳を握りしめて怒っているようでした。


「今はとりあえずそれだけわかればいいでしょう。拠点にまで戻ってオクティさんに私の替えの服を着せてあげるわ」

 マリアンヌ様が私を支えて立ち上がらせてくれました。


「マリアンヌの服だとオクティ嬢には胸と腰がきつそうだな……」

「何ですって!!」

 余計なことを呟いたマリアス様が大聖女に腹を殴られていました。


「待て、オクティ嬢を歩かせるのは辛そうだ。俺が背負っていこう」

 マリアス様が私に背中を向けてしゃがみます。


「ちょっと、オクティさんが美人だからってセクハラするんじゃないわよ!」

「俺は純粋な善意で言っているんだ!」


 私はフラフラと歩いてマリアス様の背中に抱きつきました。

 前世では背負ってもらったことはないのです。

 転生して生まれ変わっても懐かしい感じがしました。


「オクティさん、それでいいの?」

 マリアンヌ様が戸惑ったように尋ねてきましたが、私は安心した様子で微笑みました。

「オクティ嬢がマリアスの背中が良いというのなら仕方ないか」

 アベル様が手のひらを上に向けて肩をすくめました。


 それから私は魔王のダンジョンを抜けて地上の拠点に戻るまでマリアス様に背負われていました。

 なんだか懐かしい人達の魂に再会できた喜びで、うっとりとした気分になりうつらうつらと眠ってしまったのです。


 ◇◇◇◇


 私が目を覚ましたら地上の森の中にある小屋で、下着と服を着せられてベッドで寝かされていました。

 服はシンプルな木綿素材のベージュのワンピースでした。


「あら、目が覚めたのね。悔しいわ、本当に私の服だと胸と腰がキツキツなんだもの」

 囲炉裏で鍋をグツグツ煮込んでいたマリアンヌ様が振り返って言いました。


 小屋の扉が開いてマリアス様とアベル様が入ってきました。


「使い魔の鷹を飛ばしたから、グランドル砦から馬車で迎えが来るだろう」

 マリアス様が私に微笑みかけてから囲炉裏の傍の椅子にドカッと腰掛けます。


「俺はイノシシを狩ってきたぞ。迎えが来るまでに一週間はかかるだろうからな」

 アベル様は血抜きして解体したイノシシの肉を革袋に包んで持ち帰っていました。


「それにしても不思議なんだ。この小屋の周りには魔物がいないんだ。シカやイノシシやウサギみたいな動物はいるんだけどな」

「それはおそらくオクティさんの放っている神気で魔物が逃げ出しているのね」

 マリアンヌ様が小首をかしげて言いました。


「魔王はオクティ嬢の魔物を祓う神気を逆に魔物を生み出す力として利用していたのか。許せんな!」

 マリアス様は鍋を木匙でグルグルかき回して器によそって食べ始めました。


「だが、グランドル砦から騎士団が到着するまでは、ここでオクティ嬢を厳重に守らないといけない」

 アベル様が険しい表情をしました。

「魔王ヴァリアスは倒したけど、魔王軍の幹部の四天王が魔王の娘のヴィシュヌを匿って逃げているのよ。反撃してきてオクティさんを奪われたら大変だわ」

 マリアンヌ様が私にも雑炊をよそってくれました。


「魔王軍の残党はオクティ嬢を捕まえて、もう一度黒い宝珠に閉じ込めて利用しようと考えているだろう。そんなことはさせるわけには行かない」

「オクティさんは勇者パーティーの私達が全力で守るからね」


「魔王ヴァリアスと戦っているときには、四天王はすでに魔王の娘ヴィシュヌを逃がすために姿を消していたんだ」

 アベル様が悔しそうに唇を歪めました。


「魔王軍も死物狂いだから何を仕掛けてくるかわからない」

「ええ、そうね。安全な町に戻るまでは厳重に警戒しないといけないわ」


 黒い宝珠から開放された私ですが、色々と面倒なことに巻き込まれるのは避けられないようでした。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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