第十二話 創造神ブリミアルのもとへ
このエピソードから主人公のオクタヴィアが異世界転生します。
この後は胸糞悪くなるような酷いことは起こらないはずです。
ハッピーエンドになる予定なので最後までお楽しみください。
気がついたら絶命寸前のときの激痛はなくなっていて、私の身体は円形闘技場の宙に浮いて自分の死体を見下ろしていました。
身体が半透明になっていて現実感がありません。
私の死体はゴブリンに食い散らされて、ほとんど骨ばかりになってしまい僅かな肉片がこびりついているだけでした。
私は自分が死んだことを実感して、今は霊体になって現世に留まっているだけだと気が付きました。
魂が肉体を離れると生前に考えていたことや感じていたことがどうでも良くなっていくのです。
それでも、マリアス様がどうなったのかは気になりました。
意識を向けると霊体の身体がマリアス様の方へ近づいていきました。
マリアス様は地面に両手を叩きつけて私の名前を叫びながら慟哭していました。
暫くしてかろうじて正気を取り戻した彼は私の亡骸を棺に入れてファルス王国へ移送し、丁重な葬儀を執り行ったのです。
私の亡骸はマリアス様の生家の墓地に埋葬されました。
霊体になった私はその後、フラフラと墓地の周辺の町や村を彷徨っていたのです。
ファルス王国は穏やかな気候で緑が多く道行く人々も幸せそうでした。
処刑されずにマリアス様とこの国に移住していれば、幸せに暮らしていく未来があったのかもしれません。
それを思うと言い知れない寂寞感に囚われましたが、死んで霊体になった私がそういう事を考えてはいけないのだと思いました。
しばらくはマリアス様の周りをふわふわと漂っていました。
私の姿は誰にも見えないし触れることも出来ないのです。
マリアス様は部屋に閉じこもって嘆き悲しんでいました。
どうにかして慰めてあげたいのですが、霊体の私にはどうすることも出来ませんでした。
『 オクタヴィア……もう良いでしょう。私のもとに昇って来なさい。天使を迎えに行かせます…… 』
頭の中に荘厳で神聖な雰囲気の美しい声が響きました。
私はその言葉には絶対に逆らえないものだと感じました。
霊体の私の周りにキラキラと光る粒子が舞い散って、空から二柱の天使が降りてきたのです。
天使は私の腕を取ってぐんぐんと上に昇っていきました。
雲を突き抜けて上昇していきます。
眩い光に満ち溢れた天上界に着きました。
白い荘厳な宮殿が見えます。
「創造神ブリミアル様がお待ちです。急ぎましょう」
天使が初めて口を開きました。
急かされるように二柱の天使に腕を掴まれて宙を滑って飛んでいきます。
宮殿の中に入ると天使が私の霊体に手をかざしました。
すると、私の見た目が純白のドレス姿に変わったのです。
まるで聖女か巫女姫のような清楚で神秘的なドレスでした。
宮殿の奥の至高の玉座では創造神ブリミアル様が優しい笑みで迎えてくれました。
玉座から降りてきて私を抱きしめてくれます。
「おぉ、オクタヴィアよ……。ランバード王国では辛い目にあったようですね」
「うぅ……うぅっ、ひっくっ……うわああぁぁぁ~~~!」
私は邪神イブリースに心を食べられて虚ろになっていたはずですが、この宮殿にいると失われた心が取り戻されていくようでした。
ランバード王国で味わった羞恥心や屈辱感や絶望感が蘇ってきて泣きじゃくってしまったのです。
「オクタヴィアにはお詫びしなけれななりません。あなたは元々はチキュウという星のニホンという国の皇女でした。特別に光輝く強い魂を持っていたので、私が邪神イブリースと戦わせるためにランバード王国に異世界転生させたのです」
私はびっくりしました。
初めて聞く話だったのです。
「邪神イブリースは創造神の私に敵対している古い神で、いくつもの世界を食い物にして滅ぼしてきたのです。ですから私は邪神イブリースを倒せる強い魂を持つ者を探していました。それがオクタヴィア、あなただったのです」
「でも、私は邪神イブリースには手も足も出ないで、性奴隷にされて心を食い物にされました」
私は泣き止んでブリミアル様の方を見ました。
「それはあなたが純情で純真な無垢な女性だったからです。邪神と戦うための準備ができていなかったのです。邪神イブリースに食い物にされて怒りや憎しみと言った黒い想念を身に宿した今のあなたなら、時間をかけて力を蓄えれば邪神イブリースを倒すことができるでしょう」
「でも、私はこんなに汚れてしまったのに……」
私は項垂れました。
性奴隷にされていた私は魂まで汚されていて、心のなかには自分を辱めたものに対する怒りや憎しみが湧き出して止まらなかったのです。
「ですから、あなたには新しく私が作った世界に『黒い宝珠』として転生してもらいます」
「黒い宝珠?」
「できたての世界にはカナンの楽園という聖域があって人類はそこで暮らしています。ですが、それだけでは人類が進歩しないのです。黒い宝珠から出る暗黒波動で魔物を誕生させて人類と戦わせます。戦いの中で人類が強くなり文明が進歩していくのです」
「私がその黒い宝珠となるのですか?」
私は首を傾げて疑問を口にしました。
「オクタヴィアの心のなかに湧いてくる黒い想念が暗黒波動を発生させるのです。あなたは黒い宝珠の中で封印された核となってもらいます。そのまま出来立ての世界で数万年の間、魔物を発生させ続ければあなたは浄化されて創造神の加護と祝福を受けた神の愛子として復活するでしょう」
「私はこの心の苦しみから開放されるのならそれでいいです……」
私は羞恥心と屈辱感と絶望感に苛まれ、怒りや憎しみにも囚われて自分が自分でなくなっていくようでした。
この苦しみから逃れられるのならブリミアル様の要望を聞き入れるしか無いと思ったのです。
「そうですか。ありがとうございます、オクタヴィアよ。あなたには創造神の加護と祝福を最大限に授けておきます。新しい世界を発展させる礎となってください」
創造神ブリミアル様が私に手をかざすと凄まじい神力が吹き出して来ました。
私の身体は全長三メートルはある大きな黒い宝珠に閉じ込められて宙に浮きます。
「あなたが行く新しい世界の名前は『モーリタニア』という星です。そこの最大の大陸にあるダンジョン最深部に送りますから暗黒波動を発生させ続けてください。魔物の数が増えてきたら魔王が誕生するでしょう。魔王は力の源である黒い宝珠を守ってくれるから心配はいりません。いくらでも時間を使って魂を浄化してください」
私は創造神ブリミアル様の言葉を聞きながら黒い宝珠の中で魂が眠りにつきました。
そして次元の壁を超えてモーリタニアという星に異世界転生したのです。
◇◇◇◇
それからどれだけ時間が流れたのかわかりません。
時々、黒い宝珠の中で意識が目覚める時がありました。
気がついたときにはダンジョンの最深部は大きく広がっていて火山地帯になっていました。
その奥に魔王城がそびえ立っていたのです。
黒い宝珠は魔王城の奥で魔王が守っていました。
人間の勇者やエルフの精霊使いやドワーフの戦士などが攻めてきましたが、魔王を倒せるものは現れませんでした。
私は心のなかで渦巻く怒りや憎しみに任せて強力な黒い波動を発生させて魔王に武器を与えました。
「魔王の剣ゲヴェスヴォルガー」
魔王は歓喜しているようでした。
「このような伝説の武器を授けて頂き感謝に耐えませぬ」
黒い宝珠に向かって頭を下げています。
私はまた眠りにつきました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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