暇と裏庭
「暇だわ、タニア」
豪奢なベッドに半身を投げ出しながらわたしはタニアに語りかける。タニアはベッドのそばで直立不動で立っていた。疲れないんかな? 何回座っていいと言っても絶対座らないし。わたし基本的にポンコツなタニアの方が好きなんだけどな。
「と言われましても」
「これなら公爵家の方がまだやる事があったわ、タニア」
「お嬢様、監禁生活と言いながら割と自由に生きてましたものね」
「ウヘヘ」
長年過ごしてきたせいか、監禁されながらもできるルーティン(畑仕事)とかあったし、ちょいちょいサエトリアンに変身して街に出てたしね。今思えば苦界ながらも楽しい我が家だったわ。
「その分、私が苦労したことをお忘れなく」
「ぐへへ」
釘刺されちった。
「とは言っても困りましたね。辺境伯様からご指示などありました?」
「いやー完全に自由で良いって言われたわ。ただ自由には責任が伴うとも言われたわ」
「ごもっともな言葉ですね」
そうなのよねー。実際、今迂闊な行動を取ればスパイ容疑で最悪死刑まで見えてる状態よね。辺境伯領はそういう所サバサバしているっていうしね。そこら辺は修羅の国感あるわよね。
「うーん。と言って、でもいつまでもこの部屋に閉じこもってるのも性に合わないのよね」
「ではどちらかに出かけますか?」
「そーねーさっき城の中に声あててみてマッピングしてみたんだけどねー裏庭がありそうな感じだったのよ」
「公爵家を思い出しますね」
ーーおじい。ああー思い出してちょっと泣きそう。おじい元気かな? 腰悪くしてないといいけど。ダメダメ、タニアに余計な心配かけるわ。おじいは元気! 今度手紙かこ。
「ね、行ってみない? その毛玉の散歩にもなるし」
そう言ってわたしはベッドから体を起こした。視線の先では床に毛玉が転がっている。旅の途中で拾ってきたタヌキである。タニアが離れたがらないから仕方ない部屋で飼うことになった。タヌキってそもそも人に懐くのか疑問もあったが、このタヌキはなんだか大丈夫だったらしく餌も問題なく食べるし、なんならトイレは人間用のトイレで用を足している。本当にタヌキかお前?
「お嬢様! 毛玉とはなんですか! この子はケダマーノ・ポン・ポンタリオンという立派な名前があるのです!」
「…もうそれケダマかポンタで良くない?」
「キュゥ」
寝たふりしたケダマも小さく同意しているが、憤慨しているタニアには届かない。
てかお前、文字通りの狸寝入りとはいい度胸だ。お前ほんとにタヌキか?
「わかった。わかったからタニア! 早くケダマーノを連れて散歩に行きましょうよ」
「ふふふ、そう言われてみればそうですね。さ、ケダマーノ、起きて私の肩に乗りなさい」
その声に狸寝入りをやめたケダマはすくっと起き上がりするすると器用にタニアの肩にマフラーのようにのっかった。タニアもタヌキも手慣れたものだ。相性良すぎない?
「……まっ、行きましょっか」




