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第1話 契約結婚ですわ

 今日は結婚初日の夜。新婚ホヤホヤです。世間で言うところの初夜。旦那様は私とどう過ごして下さるのかしら?


 そんな事を考えていましたら……


「セリア。この結婚はあくまで政治的な理由あっての事。俺は君を愛する事は無いと言っておく。」


 来た来た。これですわ。本当に言う殿方がいらっしゃるとは……。


 でも……そのセリフで私を傷つけたいなら、私が貴方を愛している事が前提ですわよね?


 そんなに凛々しいお顔で、なんておバカな事をおっしゃるのかしら。イリジウム王国中が仰天してしまいますわ。


 私の旦那様は、ほーんとに可愛い人。


「ケイス様は……私がお嫌いですか?」


 私の旦那様はケイス=ベリオーテ公爵。18歳。


 ベリオーテ公爵家は現在、魔道具事業に手を出し多額の借金を抱え込んでいるのですわ。


 ブッ飛び公爵令嬢と言われる私を嫁として引き取る代わりに、多額の援助をクルライゼ公爵家から受けて、なんとか破産を免れていますの。


 こうなる前に普通は撤退するのに、逆に感心してしまいますわよね?


 おっといけない。


 ここは上目遣いで、胸の谷間を強調っと。


「うっ……しかし、既に私には愛する人がいる。クルライゼ家との契約がなければ、俺はその人と幸せな結婚が出来たんだ!」


 契約相手の娘にこんな啖呵を切るなんて、余程愛していらっしゃるのかしらね?



 マリアージュ=ベリア伯爵令嬢を。



 あぁ。言っていませんでしたね。


 私、結婚相手の事くらいは隅々まで調べてありますのよ?


 それこそ家の財政状況から、従者のお給金、果ては想い人なんかも……。


「そのように言われましても、家同士の事ですし……。それに私、ケイス様がお相手だと聞いて、凄く嬉しかったんです……。」


 ここは泣き落としの場面かしらね。


 下を向いて、目薬をちょんちょんっと。


 ウルウルと目を涙ぐませる私に、どんな反応をお示しになるのかしら?


「っ! 騙されないぞ! セリア。君はブッ飛び公爵令嬢なんて言われている粗忽者だろ!」


 まあ、なんという事でしょう。


 ケイス様ったら、その噂を御存じだったようで。


「やはり世間ではそう呼ばれているのですね……。」


 悲しそうな表情は大得意。悪戯して怒られるのを回避する為、精一杯練習致しました。


「な、なんだと言うんだ……。何か言い訳でもあるのか?」


 ほーら。すぐにスキが出来ちゃう。実の親さえも騙してみせるこの表情。ケイス様には見抜けなかったようですわ。


「私……家ではお姉さまに邪険にされていましたの。毎日のように……」



「追いかけられ……」

 ※姉の下着を怪しい男に売り飛ばした。


「剣を持って襲い掛かられ……」

 ※姉の婚約者を実験台に魔法の試し撃ち。


「食事を捨てられ……」

 ※魔道具実験で姉の部屋を爆破。


「私物を奪われ……」

 ※元々は姉の物。


「あらぬ噂を世間に言いふらされました……。」

 ※全て嘘偽りのない事実。



「そして契約結婚とは言え、お慕いしていたケイス様には……あらぬ噂で誤解……ざれ……うぅっ。」


 良し良し。ケイス様ったら、明らかに私に同情してらっしゃるわ。


「せめて、二番目でも良いので……愛しては下さい……ませんか?」


 そーれ。涙ぐみ上目遣いとお胸押し付け攻撃ぃ。


「わ、わかった。そうだったのか……。君は今まで辛い思いをしていたんだな。」


「はい……。ケイス様は私が思った通り、お優しい方ですわ。」


 儚く寂しげな笑顔で……


「愛する方がいらっしゃるのに、私をこうして慰めて下さるんですもの。」


「っ!!」


 はい堕ちたー。


 自分で言うのもなんですが私、容姿と演技にはかなり自信がありましてよ?


 こんな甘やかされたボンボン、手玉に取るなんて造作もありませんわ。


「セリア。君は俺の妻だ。絶対に守ってみせるからな!」


 ほーんと調子良いんだから。数分前の御自身のセリフを聞かせてやりたいくらい可愛いですわ。


「ありがとうございます。」


 ちゃんとお礼を言って、体を押し付けて、ケイス様の胸に顔をグリグリしてっと。


「今日はもう寝ると良い。これからは君を……クルライゼ家からベリオーテ家がしっかり守ってやるからな。」


 逆ですわ。ぎゃーくぅ。私のお蔭で、クルライゼ家が潰れかけたベリオーテ家を守っているんですわよ? お忘れかしらね?


「じゃあ、もうお休み。」


 そう言ってケイス様はご退室なさったわ。


 それにしても、私の旦那様ったら結構鬼畜ですわよね。


 契約結婚のお蔭でベリオーテ家が助けられているというのに、援助したクルライゼ家の娘を愛さないって言うんですもの。


 既に愛する人がいる?


 その愛する人はベリオーテ家の借金を知って、既に見切りを付けていますよ?


 愛する人と結婚出来なかった?


 それは貴方の親が不甲斐ないせいですわ。文句なら無能な先代であらせられるお義父様にど・お・ぞ。


 一体どうしたらそんな態度をとれるのでしょう?


 ひょっとすると、無能が服を着て歩いているようなお義父様からは何も聞いていらっしゃらないのかしら。




 ま、今日から私が色々と手を付けベリオーテ家を立て直し、たーくさん楽しませてもらうとしましょうか。


 私って、ブッ飛び公爵令嬢なんて呼ばれていますが、大変優秀なんですの。


 しっかりベリオーテ家を盛り立てて見せますわ。


 勿論、旦那様でも楽しませて頂きますので、覚悟して下さいましね?



 だ・ん・な・さ・ま?


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