99.「80歳」
99話です。
完結まであと1話。
本日完結まで投稿します。
よろしくお願いします。
絵里が亡くなってから、5年が経過した。俺は80歳になっていた。
なにもやる気が無くて、無気力なのに。腹だけは減るんだ。眠くなるんだ。
眠る時このまま、絵里の元へ行きたい。何度そう思っただろうか…。
そのたびに、孫やひ孫。息子や娘たちが、旅行やパーティを企画して、俺の命を繋ぎとめてくる。
息子や娘。孫やひ孫の無邪気な顔、声が、俺と絵里が作り上げた幸せの証明なんだから。
そんな、大切な宝物たちに、大切にされて…。幸せなんだって思う。
「お父さん。今度の80歳のお祝い「傘寿」旅行で行きたい所は無い?みんなで行くんだから、お父さんが決めて。」「佐賀県に行きたい。絵里との思い出の、ご神木を見に行きたい。」「またぁ~?お母さんと、しょっちゅう行ってたのに…。また行きたいの?」
「お父さんとお母さんが、はるか昔に出会った場所なんだ。あそこに行くと懐かしい感じがしてな。」
俺は、娘と孫に絵里から聞いた昔話を始めた。
きっとボケが始まったと思ったかもしれない。
「そんな、ロマンチックな話があったんだね。私とお兄ちゃんの名前は、その話から付けたのね。初耳だったわ。お母さんに聞いても、「可愛いし、カッコいいでしょ?」しか言わなかったし…。ねぇ?弟は、なんでジブなの?」
「お父さんが、昔、困ったときに助けてもらった人の名前で、お父さんの尊敬できる一番の協力者だった人からとったんだ。」
「そのジブって人は?」「今は、どうなったかわからない。遠い遠い世界で生きてくれている事を願ってるんだ。」
そんな話を思い出したのはいつ以来だろうか?ヤマトの世界の事は、絵里ともあまり話さなかったなぁ…。
~ご神木~
「絵里。今年もここに来たよ。今年は、ひ孫が一人増えたんだよ。絵里に似て、美人になればいいなぁ。」
「ひいじいちゃん!長いって!!」「じいちゃん。温泉に入るんだろ?」
「絵里。また来るよ。」絵里との思い出も大切だが、今の思い出を作るのも大切だ。
ご神木の枝がユラユラして、まるでバイバイと言っているみたいだった。
その後は温泉に浸かり、食事中は黄色い編み笠をかぶらせてもらったりした。
俺と絵里の子供たちは、みんな立派に成長してくれたもんだと思う。
一人で残された俺の事を、本当に親身になって世話をしてくれるのだから。婿殿やお嫁さんたちも、お父さん、お父さんと慕ってくれて何一つ文句のつけようがないんだ。
~旅行から帰った 3日後~
白い服を着た、おっさんが目の前に現れた。
「やあ!武雄君。久しぶりだね!」「リクサーさん。やっと迎えに来てくれたんだな。」
「君とエリクの物語はこれで終わりだ。どうだい?幸せだったかい?」
「ああ。本当に幸せだったよ。ありがとう。」
「それは、本当に良かった。エリクを迎えに行った時も、思い残すことは君を置いていく事だけだって言ってたしのぅ。「1800年も待たされたんだから、あと何年か知らないけど1人で耐えなさい(笑)」ってさ。」
「エリクが人間になってからは、君たちと会う事は無かったが、ず~と見ておった。長男のタケルが生まれて、あたふたするエリクは可愛かったのう。長女のイヨが悪ガキに泣かされて帰って来た時の、エリクのオーラと言ったらドラゴンを倒しに行くときみたいじゃった。次男のジブはガキ大将で、よく友達の家に謝罪に行っておったのぅ。そんなときのエリクは決まって、「相手が3人、ジブは1人。悪いのは向こうよ。でも、怪我をさせたのはジブなんだから謝らないとダメ。でも、お母さんは怒ってないわよ。その力を弱い人の為に使える人になりなさい。」っていうんじゃ。初めての...。」
「もういい!!全部絵里の事じゃねぇか!俺のエピソードは無しかよ!まったく。」
「エリクの事が大好きじゃからな。でも武雄君。君たちの結婚式の日のエリクの笑顔が一番じゃった。くやしいが、君の隣にいる時のエリクは輝いていたよ。」
「当然だろ!!自慢の嫁だぞ!まぁ、その、なんだ。ありがとう神様。絵里も俺も本当に世話になった。そろそろ、あっちで絵里が待ちくたびれてると思うから、行ってくるわ!!」
「そうだった。君にこれを渡しておく。もし、目が覚めたら飲みなさい。」
「…。目が覚めるのか?」
「もし。じゃよ。」リクサーはにっこり笑った。
新作始めました。
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人類で1番最初にダンジョンに入った男 人類初特典の嵐で無双する。人類は敵?味方?そんなの関係なく楽しく生きていこうよ!
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