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4枚目

「うわあー!お祭りだー!!」


「ふふ、虎太郎はしゃぎすぎて転けないようにね」



目の前に広がる赤い提灯、響く太鼓の音。

美味しそうな匂いを漂わせる出店。


ついに祭り当日だ。

いくら田舎町でもやはり賑わうんだな。



「俺綿あめ食べた〜い」


「はあ…圭吾くん勝手に行かないで」


「写真映えするね!あ、ここも撮りたい!」



今日も相変わらず自由人な圭吾くん、お世話係の海斗くん。

一眼レフカメラを構えてあちこち撮りまくる三郎くん。


そういえば、少しでも仲良くなるためにと名前呼びをする事がルールになった。

正直、ネタが見つかれば帰ろうと思ってたから罪悪感がすごい。



「ほんっとに纏まりないよね」


「そう言う燕も大概わがままだろ…」


「はあ?玲也には言われたくないんだけど」


「はいはい喧嘩しなーい」



後ろの方で燕くんと玲也くんが喧嘩していたのを遥が止めに行く。

どっちもどっちな気がするけど。


まあ自由時間になるまでは大人しくして欲しい。

常識人(俺が勝手に決めた)なはずの三郎くんですら暴走中なんだから。



「ねーえー早く自由行動にしない?」


「まあ各々したい事もあるか…そのかわりちゃんと連絡したら神社前に集合してね」


「やったー!!三郎行こうぜ!」


「虎太郎くん待って、これだけ撮らせて」



いつもは積極的に動かない圭吾くんがこんなにそわそわしてるの面白いな。

甘い物が好きなのか?


遥の一声を合図に虎太郎くんが走っていこうとする。

三郎くんと二人で大丈夫なのだろうか。



「ほら、海斗行こーよ〜?」


「食べすぎないようにね…」


「タコ食べたいー」


「ちょっと!裕貴勝手にどっか行かないでくれる!?」



ぐいぐいと海斗くんの腕を引き綿あめ屋へと向かう圭吾くん。

アスリートの海斗くん引っ張れるってどれだけ力あるんだよ。


ふらふらとたこ焼き屋に足を向ける裕貴くんの面倒を見るのは燕くんらしい。

ここの二人は案外仲がいいみたいだ。



「俺一人がいい」


「…みんな行動が早いね〜…」


「まあ楽しみにしてたんだろうね…」


「あはは!そうだね、ねえ薫、良かったら一緒に見て回らない?」



玲也くんはそそくさと上の方へ向かってしまった。

相変わらず人付き合いはかなり悪い。


取り残された俺と遥。

別に取材の邪魔にならなければ一緒でも問題は無いだろう。



「うん、俺取材して回るからそれでも良ければ」


「もちろん、俺も小説のネタ考えようかな!」


「じゃあ行こっか」



石段をゆっくりと登っていく。

下駄の音がリズムを刻んで夜に消えた。


せっかくならみんな浴衣で、ということになり俺は圭吾くんのお下がりを頂いた。

みんなは地元の人に頂いたり、実家から取り寄せたりしたそうだ。


浴衣なんて子供の時以来で、大人になって着る機会などないと思っていたから少し恥ずかしい。



「あ、焼きそば美味しそうだね」


「食べる?」


「食べようかな!薫はどうする?」


「じゃあ俺も食べようっと」



2人で焼きそば屋台に寄り道する。

屋台の焼きそばって独特の美味しさがあるよな。


屋台のおじさんから焼きそばを受け取り、座って食べれる場所を探す。

あ、虎太郎くん達はしゃいでるなあ。



「よっこらしょ〜…あ、虎太郎と三郎は元気だねえ」


「なんか遥おじいちゃんっぽい」


「なんだと〜!俺はまだまだ元気なおにいさんだぞ!」



あはは、ごめんごめん、と笑いながら謝っておいて焼きそばに手をつける。

でも本当におじいちゃんって感じだった。


紅しょうがを少し多く散らされた焼きそばは湯気を昇らせる。

熱くて口内が火傷しそうだ。



「うっまーい!」


「美味しいね〜」


「これはおっちゃんに後で感想伝えたいな」



めちゃくちゃ美味しい。

普段食べてるカップ焼きそばとは比べ物にならない。


人の手が加わるとここまで違うのか。

いや、お祭りの雰囲気もあるな。



「帰りに声かけよっか」


「あ、薫は取材したいんだったよな、具体的にどこが見たいとかある?」


「とりあえず神社の人に話を聞くのと枯れない桜が気になるかな…」



そう、枯れない桜。

きっと神社の人は何か知ってるはず。


カメラを持ってこようと思ったがなぜか充電できず、電源をつけれなかったので諦めた。

かわりにスマホで撮るつもりだ。



「枯れない桜はやっぱり気になるよな、年中花見できるとかロマンに溢れてる!」


「あはは、でもお祭りの日しか入れないから年中はできないよ」


「あ…そうか〜…」



年中花見ができる!だなんてなればそれこそネタになるけど。

普段は岩に塞がれているし。


六年に一度の夏の桜!とでも銘打っておけばいいだろ。

夏の桜だけでそこそこ釣れるはずだ。



「桜はみんなで見に行こうか、神社に着いたらみんなに連絡しよう」


「そうだね、せっかくだし」


「三郎達はあのペースで間に合うかな」



かなり三郎くんは写真を撮るために立ち止まっていた。

虎太郎くんはその間に食べ物を頬張っているみたいだ。


正直あの二人より圭吾くん達の方が俺は心配だけど。

海斗くん大丈夫かな。



「さて、俺らも動きだそうか」


「あー、焼きそば美味しかった」


「本当にね!」






「着いたー!」


「やっぱり寄り道しててもこの石段長いね〜」


「なれない下駄だから余計ね」



道中、ラムネを飲んだりりんご飴を買ったり。

屋台の人と話し込んでしまったりで時間がかかった。


シンプルにここの石段が長いのもあるけど。

いや、長すぎるのが大半だけど。



「さて、先にみんなに連絡しちゃおっか」


「まだみんな下にいるかな」


「さあね〜、とりあえずグループに送っておいたよ」



遥が言った通り、スマホを見ればシェアハウスのグループメッセージに連絡が来ていた。

集合〜!というなんともシンプルなメッセージだ。


海斗くんの了解!というスタンプ、裕貴くんの変なスタンプ、玲也くんの了解。という返事がきていた。



「あれ、三郎くん達見てないのかな?」


「も〜ちゃんと見ろって言ったのに」


「あ、ちょっと待って虎太郎くんから電話だ」



三郎くん達からだけ返事が来ず、不思議に思っていたところに電話がかかってきた。

電話主は虎太郎くん。


何かトラブルでもあったのだろうか?

グループメッセージで送っても良かったのに。



「もしもし、虎太郎くん…」


「もしもし!?どうしよう!三郎が…!」


「何、三郎くんがどうしたの?」



電話口からは焦る虎太郎くんの声が食い気味で返ってきた。

どうやら本当に何かあったらしい。


しかも三郎くん関連のようだ。

熱中症にでもなったか?



「もしもしー?虎太郎、どうしたのさ」


「遥くん…!三郎が行方不明になっちゃった…!」









8月19日 (木) 前章 生野薫

追記 始まりはここだ、見直しても今のところおかしな点はない。なぜ、この事件が起きた?

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