それからのお話:Side現実世界
さて、3話目です、遺された皆様の後日譚です
それからは思い出したくもないが、警察に呼ばれての取り調べ、ただ私はその場に居なかったので戻って来てから何が有ったかの聴取が主だった事と、酒賀さんのご両親より何が有ったのかを教えて欲しい、との要望に応えて彼女の家に行き私が分かる限りの事を話した、全てを話し終えた時、彼女のお母さんはその瞳から涙を溢れさせつつ「何で何もしていない私たちの娘が……」と嘆き悲しみ、お父さんは机の上に乗せている拳を真っ赤になる程握り締め、それでも気丈に「十未さん、有難うございます、貴女が最後まで娘の為に人工呼吸をして救急車を、と言って頂いた事は、お店の方に伺って存じております、本当に有難う御座いました」と深々と頭を下げてお礼をして頂いた。
「いえ、私も先輩として彼女の側に居るべきだったかと今でも思っております、私が言うのも何かと思いますが、この度は誠にご愁傷さまでした」そう言って酒賀宅を後にした、そして彼にはほとんど八つ当たりかも知れないがこの件で大ゲンカした、実際に掛かってきた電話は寂しいから声が聞きたいだの、今度のデートはどうしようだの、平日の暇がある時に幾らでも話せる内容だったからだ、私は彼に出来るだけ平静な声で「何が有ってどうなって、人が一人死んだ」という事と「電話のせいばかりとは言わないが、少なくとも電話を長々としていたせいで後輩の事を見つけるのが遅れたという結果が有った」という事を話した、彼は彼で初めの内は「俺ンせいかよ!」と怒っていたのだが、話を進める内に私のプライベートな部分に入り込み過ぎている事を理解して反省してくれた、はぁ、また明日から仕事だけど……どうするんだろうな……
所変わってここは警察の取調室、取調室の机の上で何時までもシクシクメソメソと泣き続けている銚子の姿が有った、担当の取調官が何を言っても「だって俺そんな風になるなんて知らなかったんだもん」としか言わず、本当にこれで大人なのかと周囲を呆れさせていた。
「あのなぁ、君の周りで呑んでいた同僚の供述も一致しているんだよ?、アレルギーは甘えだとか俺がアレルギー直してやるよとか言って酒をジョッキに注いでた所とか、それでこんな事になるとは思わなかったってここで泣いてもさ、もう酒賀さんは帰ってこないんだよ?、さっきから君ずっと言い訳ばかりで何一つ反省していないじゃないか、いいか、何を言っても彼女はもう帰ってこないんだけどな?、その事については君一体どう思ってるの?」
「そんなの体がおかしいアイツが悪いんじゃないか、俺はただ…」この期に及んで未だグダグダと言い訳をしようとする男に取調官の我慢が限界に達した。
「いい加減にしろ!、さっきから見苦しいんだよ、何が有っても他人のせいかよ!お前が酒がダメな人に酒を飲ませて殺したんだろうが!何をグダグダ言っても彼女は返ってこないんだよ、いいか、分かるか?お前は 人 殺 し なんだよ!」胸倉をつかんで顔を近づけてそう叫ぶ取調官に相席をしていた別の取締官が慌てて止めに入る。
「ストップ!、赤嶋さん!、そこ迄です、言い過ぎですよ」
「あ…あぁ、済まない、私にも娘がいるんだ、お亡くなりなった未来の有る娘さんとついダブってしまって怒りが込み上げてしまった」
そして銚子にはいつ終わるとも知れない取調べが続いたが、併せて彼の勤務態度なども徹底的に調べ上げられ、かなりのハラスメント(犯罪レベル)が存在していることが確認された、これはこれ以上悪評をばらまかれたくない勤務先の会社側が彼をスケープゴートとする為に、率先して社内聴取を行い出た結果を包み隠さずに警察に提出をした事も由来する。
取り調べの中で取調官の心証を著しく害した彼に待っていたのは通常の強要罪(3年以下の懲役)の判決が出た後も、警察側にて新事実が発覚したとして遺棄等致死傷罪が追加され、その公判中にさらに追加として社内でのハラスメント行為を追加として上げられ、裁判官達の心証を最悪レベルにまで持って行ってしまうと言う『警察側の「包括一罪」(複数罪が有る場合に纏めて罪を計算して懲役を決める事です、通常は減刑されます)になんかさせないんだからね!』と言う必殺技が炸裂し、哀れな事に懲役が20年近く重なってしまった。
判決が終わった裁判所から好子の両親は出て来て、涙でぐしゃぐしゃになったハンカチを握りながら「あの子の墓前に報告してあげよう」と話しながら帰途についたのだが、その背中はとても小さく見えた。
作者は大酒呑みでして…その分際でこんな事を言うのは何なのですが
アルコールハラスメントだめ!!絶対
お酒は美味しく楽しく飲みたい人が呑むべきです。